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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
一章 疾風! 西上作戦開始!
20/398

20奇妙箱(現代、左近のターン)チェック済み

「おい、ワシに急使とはなんじゃ! 」


 パソコンに流れた左近へのメッセージ。しかし、左近はパソコンの使い方がわからない。すぐさま、カケルの妹、清香へ使い方を尋ねた。



 パソコンへ向かう風呂あがりの清香は、髪をバスタオルであら拭きしただけでドライヤーはまだだ。


「あれ、お兄ちゃんゲームを自動プレーしたままだよ?」


「ゲーム? 自動プレー? ワシには言葉の意味がよく分からんが、どういう意味じゃ? 」


「え~っとね。戦国シミュレーションゲームの関ヶ原をプレーしていて、え~っと、プレーキャラクターは武田家、山県正景配下の嶋左近? で、その嶋左近が今、AIの自動操作でイベント三方ヶ原の戦いへ突入しているところかな? 」


 左近は、清香のゲームやら、シミュレーションやらAIの横文字はさっぱりわからなかったが、自分が生きた戦国時代の徳川家康と武田信玄の三方ヶ原の戦いはよく知っている。いや、左近の初陣の戦いは今も記憶に鮮やかだ。


「あ、メールボックスに伝令が来てるわね。開けていい? 」


「おお、それじゃ教えてくだされ」


 "左近よ、これから向かう北三河の国人領主の

 田峰城主 菅沼定忠

 作手城主 奥平定能

 長篠城主 菅沼正貞


 山家三方衆(やまがさんぽうしゅう)の元へ赴き調略せよ!"



「わたしには何のことかさっぱり分からないけど嶋左近はイベントへ突入してるわね」


 左近は、腕を組み難しい顔をして頭をひねった。山家三方衆を左近はよく覚えている。それは左近の初陣だからというだけでなく、血で血を洗う人の生き死にを体験したからだ。


 山家三方衆は左近の初陣の相手にしてはなかなかに手強い相手であった。まず、菅沼定忠、彼の者は武勇にならした男で鬼の金棒を振り回す豪の者であった。


 左近は、この男と初めて武将の華、一騎討ちを体験した。


 次に、奥平貞能、彼の者は頭が切れる。左近はこの男と知恵比べをすることとなる。


 最後の菅沼定貞、彼の者は海千山千の戦国武将にあってまったくもって張り合いのない男であった。しかし、この男には左近の主君で兵法の師、人生の師である山県正景を後に心に秘めた侍の意地で討ち取るのだ。


 それは、関ヶ原で61歳まで人生をまっとうし現代へ転生した高校生の時生カケルと入れ変わった嶋左近だから分かることで、山県正景の配下だった頃の若造の左近はまだ知るよしもない。



「それにしても……」


 左近はそこまで言葉にして言い淀んだ。


 清香は、知りきれトンボの言葉が気持ち悪くて聞き返した。


「お兄ちゃん、それに……なんなの? 」


 左近は、腕を組み眉間にシワをよせ難しい顔をして、


「清香殿、お主、髪からスゴく甘くて良い香りがするのじゃがなぜじゃ? 」


「ハッ?! 鈍感なお兄ちゃんでも分かる? わたしシャンプー変えたのよウフフ」


「シャンプーとな、して、それはなんじゃ? 」


「いや、いくらお兄ちゃんが心を病んだからって記憶喪失じゃないんだからシャンプーぐらいわかるでしょ? 」


 左近は、清香の眼を真っ直ぐ見つめて、礼儀正しく居ずまいを正して深々と頭を下げた。


「清香殿、シャンプーがわからぬどうかこのワシに教えてくだされ」


「ホントに! ホントにシャンプーが分からないの?! 」


 左近は、顔をあげて清香を見つめて白い歯を見せた。


「誠にござる」


「しかたないな~、シャンプーはね。頭を洗う石鹸よ」


 左近は首をひねって考えた。


「あっ! 石鹸とはバテレンが日ノ本へ持ち込んだ舶来のシャボンにごさるな……」


 左近は、また、考えた。


「しかし、清香殿。シャボンといえば我が主、石田治部殿が博多の豪商、神屋宗湛(かみやそうたん)殿から贈られるような高価な品物。もしや、時生(ときお)家は現代の大名家にござるか? 」


「ござる。……ござるな」


 左近は、清香の冗談ともバカバカしくてふざけてるともしれぬ推察への返事を真に受けて、


「左様に、ござろう。母上の清美殿が作る料理1つとってもそうじゃ。カレーライス、ハンバーグ、豚肉のキムチ炒め、ワシが公卿の屋敷へ行った時にも味わったことのない一品であった。そうでなければ話の辻褄(つじつま)が合わぬわ。清香殿、今の話を聞いて合点がいった。して、御当家は何万石の大名家に御座るな? 」


 清香は、冗談めかして、


「……そうね……百万石だったかしら? 」


「おおっ!」左近は、喝采して、


「百万石に御座るか、そうであったか、五大老の加賀百万石の前田大納言利家殿に匹敵する御当家にあったか、納得、納得」


 清香は、真面目な顔して、


「んなわけあるか! お兄ちゃんどうしちゃったの? 家はごく普通の中流家庭の中の中! 普通の普通! 庶民中の庶民よ」


 左近は、眼を剥いて、


「なんと、時生家が庶民じゃと! まったく現代と言う、ものは恐ろしく進んだ時代じゃのう」


 そう言った左近をなかば呆れたように清香は、腕時計を確認して、


「まったく、呆れるわお兄ちゃんたら、こんなにバカバカしい話をお兄ちゃんと話したの子供の時以来。楽しいけど、一から十まで話をしてたらわたし宿題も出来ないわ。今日はここまでね、つづきはまた時間がある時に話しましょう」


 と、清香は、さっさと出て行った。


 左近の眼の前には、奇妙箱、自動プレーするパソコンの画面が光っている。




 つづく

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