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192羽柴屋敷に巣くう怪僧 憧鑑(カケルのターン)

 秀吉の屋敷に厄介になることになった山県昌景とお虎の親子は、枕を並べて、寧々からお虎の聞いた話を話し始めた。


「そうか、羽柴秀吉という男は、子が出来ぬのか。そこをミナミとか申す竹生島の巫女だかに、逆手に取られ

 家中に入り込まれたというわけか」


 さすが昌景聡明である。寧々からお虎が半日かかって聞いた話を端的にまとめた。


「はい、父上。寧々様は、ミナミの子を秀吉の跡継ぎとして育てるのは、構わないとおっしゃっています。しかし、母であるミナミが引き入れた遠縁の僧、憧鑑どうかんが気に入らないと……」


「憧鑑とはどんな男なのだ?」


「すべてを聞いたわけではないので詳しくはわかりません。ミナミと憧鑑はどうやら男と女の仲ではないかと……」


「子の出来ない領主の御手付きになった女が、子を身ごもって現れ、その女が引き込んだ男が女の色であったって寸法か」


「寧々殿には、一宿一飯の恩義もあることだし、明日、機会があれば寧々様にワシも話を聞いて見るか」




 琵琶湖に朝日が昇った。


 格の高い紫の法衣を纏った憧鑑が、弟子を引き連れ、大声で経文を唱えて、秀吉の屋敷を練り歩く。憧鑑と弟子の後ろには、昨日、羽柴屋敷にやって来た虚ろな目をしたおカネとお菊も続いている。


「朝から何事です!」


 憧鑑の棒尺無尽の態度に、寧々が立ち塞がった。


「これはこれは寧々様。お早いお出でで」


「憧鑑、客人もいるのです。こんな朝から、弟子を引き連れて、大声で経文を唱えて練り歩くとはどんな了見です!」


 寧々は、キッパリと言いきった。


「私には、長浜の城に不吉な影が見えます。将来、秀吉殿の跡継ぐ石松丸様の城に災いが合ってはならじと拙僧が、ミナミ様の許可を得て、災いの影を払っておるところでございます」


「なんですって、ミナミが許可を与えた?」


「さよう、御嫡男石松丸君の御母堂様に当たられるミナミ様の許可は得てございます。寧々殿は、我らのすることに邪魔立てはお控え下され」


 あきらかな挑戦だ。憧鑑は、秀吉の認めた石松丸を良いことに、この屋敷の勝手を得た。


「私は、尾張時代からの大殿の認めた正妻です。いくらあの人の子を産んだミナミの遠縁とはもうせ、憧鑑、勝手は許しません!」


 さすが、糟糠の妻寧々だ。秀吉の主信長を口に出した。これなら、憧鑑も勝手は通らない。


「寧々殿、間違いなく、不吉な影は長浜をおおっております。早く、手を打たないとどんな災いが襲い掛かるか知りませぬぞ」


 そう言って、憧鑑は、引き下がった。



 部屋から顔を出した山県昌景と、お虎を見つけた寧々は、近づいてきて頭を下げた。


「せっかく、お客様として泊まっていただいてるのに、騒々しい起こし方をしちゃったわね。これが、私の本当の不満の原因」


 山県昌景が、眉間にシワを寄せて、引き下がって行く憧鑑を見送りながら、


「あやつらこそ、この長浜の悪鼠あくねずみ。はやく、駆除致さねば、子分を増やして手に負えなくなりかねませぬな」


「政吉さん、そうなんです。私も分ってはいるんですが、ミナミには家の人の子供という切り札があるんです。家の人は、何がなんでも跡継ぎが欲しいんです。憧鑑の横暴はわかっているんですが、家中のことは私に任せると戦に出かけてしまうんです。こんな時に、竹中半兵衛様がいらっしゃれば、良い手立てを考えられて、憧鑑のような男をのさばらせては置かないはずですが……」


 寧々の苦悩を聞いた昌景は、眉間のシワを解いて、寧々に笑みを見せ、


「寧々様、私とお虎は、一宿一飯の恩義があります。どれだけお力になれるかは分かりませんが、この政吉とお虎、後から私を訪ねてくる左近と大膳に協力させてはくれませんか?」


「政吉さん、それは助かります。私も、良い相談相手がなく、難渋していたところです。それこそ、天の助け是非よろしくお願いします」


 昌景は、秀吉屋敷に巣くう悪鼠退治を買って出た。



 昼過ぎになると、秀吉の屋敷に、カケルと菅沼大膳の大男二人が訪ね来た。


 山県昌景は、二人を見つけると、手招きをして、額をつき合わせた。


「着いてそうそうだが、左近、大膳、お主たちに頼みたいことがある」


(また来たか!)


 大膳はスグに悟った。


 アホのカケルは、また、不用意に、


「頼みってなんですか山県のオジサン?」


「よいか、二人とも、今夜夜通し、この城に居る憧鑑と申す僧を見張るのだ」


「見張るって、またなんでですか?」


「憧鑑は化け物なのだ」


 昌景は本気とも冗談ともとれぬ顔で、ヌッっと、カケルに顔を近づけた。


「OK! 山県のオジサン。次のミッションは羽柴屋敷の化け物退治だね」


「ああ、そうだ。もうじき、昼めしだが、お前たち二人は、このまま、見張りに着け!」


「ええ、昼めしはどうなるのでござる昌景殿?」


 大膳が慌てて聞き返した。


「今は、無しだ」


「そんな殺生な話はござらんでしょう」


 大膳は腹を空かせて泣きそうだ。


 昌景は、顎髭を手繰って、


「昼は食わせてやろう。だが、見張りを交代で務めてからだ。で、どちらが先に見張りにつく?」


 昌景が尋ねた。


「それならば、優秀で活躍目覚ましい左近殿がよろしかろう」


 大膳の明らかなおべっかだ」


「えへへ、そうかなぁ」


 カケルは真に受けている。


「決まったな。左近、昼めしは、後で、お虎にでも握り飯でも届けてやるゆへ、先に、憧鑑を見張っておれ。いいか、憧鑑がどこへ行くにも身を隠して、しっかりと、後をつけるのだよいな」


「OK!」


 ぐ~ぅ!


 カケルの腹が鳴った。


「ちょっと、食べてから行ってもいいですか?」


「ならぬ、今すぐ行け!!」


「NO-----! そんな、殺生な!!」




 つづく










こんばんは、星川です。

いつの時代も、人の弱みに付け込んで、心の弱さに忍び込む悪漢はつきものです。

心を救済するはずの宗教が、暴利な銭をとり、信教を強要し、雁字搦めで抜け出せなくしてしまう。悲しい限りです。

私の小さな宗教観ですが、宗教ってやつは、銭を取らずとも、相手を救うもんだと思います。そうしておいて、教義を強要しない。すべては、相手の自主的な参加を待つ。

そうしておいて、その人の価値観が変われば、脱会は、もちろん、更なる信仰の道がある。それが、真の宗教だと思います。

まあ、私の勝手な価値観ですが、、、宗教と、政治の話はターブーに等しい話題ですね。すいません。


それでは、皆様、ありがとうございました。

ブックマーク、ポイント、感想よろしくお願い致します。皆様の応援が、作者の力になっております。先週なんて、本作始まって以来のベスト3を塗り替えるPVでした。ホントに、勇気づけられています。

ほんとうに、感謝しかありません。マジ、ごっつ、嬉しいです。


それでは、来週も頑張ります。頑張りましょう。

では、また、来週に。

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