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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
一章 疾風! 西上作戦開始!
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18カケルの進路と、奇妙箱(現代、左近のターン)チェック済み

 現代の高校生3年生、時生(ときお)カケルと入れ替わった戦国武将、嶋左近が、カケルの幼なじみ月代との帰り道、卒業後の進路の話しになると、このままだとカケルに成り代わって左近が進路を考えることになると分かった。


 左近は、高校で月代と進路が別れてしまうかもしれない。しかし、左近は、月代のぼんやりとした不安もおいてけぼりに、スーパーダッシュ×100で帰宅した。



 香ばしい香りあがるキッチン。カケルの母、清美が、フライパンにゴマ油をしいて豚肉のスライスを炒めている。塩コショウを振って下味をつけ、キムチをぞんぶんにプラスチックの容器からバッサリとこぼして混ぜあわせ、しばらく炒める。そこへ焼肉のたれを隠し味。最後にフライパンの縁へグルッと醤油を回し入れ香りが立ち上がれば豚肉のキムチ炒めの完成である。


 ガチャ! 玄関が開いた。


「母上! 母上! 至急(さきゅう)に母上にお尋ね申したき義がござる。母上!」


 キッチンへ飛び込んで来た左近は、申し上げたき義も一瞬で忘れるぐらい醤油で香ばしく仕上げられた大好物の豚肉のキムチ炒めに心奪われた。


 ゴクリッ!





「いただき申す! 」


 左近は、どんぶりに山盛りのご飯をもらうと一心不乱に食べ出した。その様は、箸でタレがしたたる肉を口へ運ぶのではなく、己れ自ら肉へ口をもっていく。したたるキムチに絡んだ甘辛タレはしっかりどんぶりで受け止めムダがない。


「ごちそうさまにござる」


 左近は、イスにしっかりもたれかかって妊婦のように膨れた腹をさすった。目頭が垂れ下がり、口元はほころび、満足この上ない表情だ。こんなに満足を体全体で表現する気持ちの良い(おとこ)も二人と居ないだろう。


 炊飯器の五合飯はすっかり、すっからかんだ。きっと、このあと学校のクラブを終えて帰ってくる妹の清香は血相変えて怒るだろう。しかし、この左近、母、清美にとっては姿容そのままの息子カケルが、精神を病んで侍言葉で話すへんてこりんな性格になったものの、食べるだけなら食欲旺盛、健康優良児。食べる姿がこれでもか! と心地よく微笑ましい快男児に生まれ変わり頼もしい。母、清美にとっても炊飯器を空にする息子に満足なのだ。


 しかし、食事を終えて、凍らせたカットすいかを食後のデザートに味わう左近に、清美はテーブルの向かいへ座って、まるで、日本海軍連合艦隊司令長官、山本五十六元帥みたいに、顔の前で手を組み、落ち着いた静かな声で、


「カケル、申し上げたき義ってなに? 」


 左近は、スイカフローズンが美味しくて、きっぱりと二つ返事で、


「忘れ申した! 」


 そう言って豪快に笑った。さすが、姿容は平凡な高校生、時生カケルであっても、戦国一の快男児、嶋左近である気持ちいい。。。と、作者は思うのだが、母は強し真面目に聞き返した。


「カケル、もしかしたら高校卒業後の進路の相談じゃないかしら? 」


 左近は、ハタと気づいて、前のめりに居ずまいをただし、


「母上、ワシの進路はどうなって居るのでござろう」


 と、真面目な顔して尋ねた。


 母、清美はさらに連合艦隊司令長官、山本五十六元帥が西日の差し込む会議室で、サングラスに光りが少し反射するような真面目な顔で、


「あなたの進路よ。ワタシは知り申さぬわ」


 とキッパリ答えた。


 左近は、まるで畳に差し向かい武士同士が談判でもするように身を乗り出して。


「誠にござるか? 」


 清美は、負けじと身を乗り出して、


「誠よ。自分のことは自分で考えなさい。相談には乗るわ」


 左近は、ズズイと膝を乗りだして、清美の手を取って、


「かたじけない母上! 」


 清美は、左近に握られた手をほどいて、


「でもお金は出せないわ」


 と、笑顔。


 左近は、もう一度、しかと清美の手を強く、強く掴んで、


「いかほどならば? 」


 清美は、強く、強く、握られた左近の手をほどいて、


「必死で勉強することね」


 と微笑む。


 左近、再び、清美の手を強く強く、


「もう一声! 」


 清美は、左近の強く強く掴んだ手をほどいて、静かに首を振り、


「このミッションの失敗は許されないわ。あなたに与えられたチャンスは一度きり、悔いなくやりなさい」


 と、言って左近との話を早々に済ませて立ち上がった。





 ――カケルの部屋。


 食事を終えた左近は、部屋へ戻ってどかっとベッドへ横になった。


 カケルの制服を眺めながら、


「カケル殿、お主はいったい将来をどうしたいのじゃ? どうにかカケル殿と連絡を取る術はないものか……」


 と呟いた。


 静かに電源が入ったままのパソコンの冷却ファンの音が響いている。


 ピロリン!


 ぼんやりパソコンの画面を眺めていた左近の目に、


「嶋左近殿に急使にござる! 」


 と文字が流れた。


「!? 」


 左近はしっかりそのメールの文字を再確認しようと飛び起きて、画面を叩いたり、


「おい、ワシに急使とはなんじゃ! 」


 とパソコンに向かい話しかけるのだが返事はなかった。


「どうなっておるのじゃこの箱は?! ワシには仕組みが一向にわからぬ。そうじゃ! カケル殿の妹、清香殿へ聞いてみよう! 」


 左近は飛び出した。隣の清香の部屋の扉をガバッと開けた。


「清香殿! 奇妙箱について教えて下され!! 」


「キャ! お兄ちゃんイキナリ入ってこないで!! 」


 左近は着替えをする清香に、夕御飯の恨み共々、散々に叱られた。





 つづく










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