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178甲賀忍びの追撃!田ノ助爺さんって何者なの?(カケルのターン)

 竹中半兵衛からカケルの国造りの師匠につけられた御年八十歳になる百姓の田ノ助爺さんが、田圃からあぜ道へ一歩踏み出すと、木立の影にきらりと光る閃光を感じたカケルの嶋左近の肉体が反射的に、田ノ助爺さんを条件反射的に田圃へ押し飛ばした。


 サクリッ!


 田ノ助爺さんが踏み出そうとした足元には、カケルの不安通り、甲賀忍びの鋭利な苦無が突き立っていた。


 木陰からヌッと山吹色の忍び装束をまとった甲賀忍び、鵜飼うかい孫六・孫七の双子の兄弟が顔を見せる。この兄弟は、岐阜を逃れて以来ずっとしつこく山県昌景、嶋左近ことカケルの足跡を追い、その命を奪わんと付きまとっている。


 しかも、この甲賀忍びの兄弟は、手段を選ばない。本人たちも、非情の忍びを自認し、平気で、女子供老人、連れの弱者、弱いところ、弱いところを突いて卑怯な手段ばかりを繰り出してくる。


「ホホホ、オホホ、運のいい爺さんだ……」


 カケルが一早く気づいて田ノ助爺さん救ったが、おそらく鵜飼兄弟の狙いは、田ノ助爺さんの足の自由を奪い、カケルの足手まといにさせ、機動力を奪おうという戦略だ。


「鵜飼孫六さん、孫七さん、ズル過ぎる。いや、姑息すぎるよ。もっと、誇り高く正々堂々向かって来るって出来ないの?」


「ホホホホホ~、オホホホホ~、嶋左近、お主は甘ちゃんも甘ちゃんじぇじぇじぇじぇ~だ。忍びは卑劣で当たり前でんがな。そんなことも、山県昌景は教えなかったのか?」


「いいや、山県のオジサンも、武田忍の透波者すっぱものの鳶加藤のオジサンも一言も戦、戦場において、卑怯なことをやっていいなんて言ってない。むしろ、味方を仲間をどんな時も見捨てない心の強い人だ」


「ホホホ、オホホ、そんな甘ちゃんばかりを側近にしておるから総大将の武田信玄もジワジワと命を奪う毒を身内に盛られて野望の中場で命を落とすのだわ」


「お屋形様が、身内に毒を盛られた?!」


「おっと、口が滑った。今のは聞かなかったことにしておくれ、いや、最も、嶋左近、お主の口はワシら兄弟がここで封じてしまうからな、一生、誰の耳にも入るまい」


 鵜飼兄弟はそういうとサッと手を上げ合図を送ると、木陰から弓を構えた甲賀忍軍が姿を現した。


ひいふうみいよー……」


 田ノ助爺さんは、老眼で遠目はきくのか、森から姿を現し遠巻きに弓を繰り出して来た甲賀忍軍を数え始めた。


「左近殿、守るもののない裸同然のこの開けた田圃の真ん中じゃ、弓の一斉射撃でオラたちゃハリネズミですじゃ。とりあえず、甲賀忍びとは反対の森へ逃げませんとな」


 田ノ助爺さんは、そういうとヒョイっとくわを担いで一目散に駆け出した。


「おおっ、ちょっと、待ってよ~」


 カケルも田ノ助爺さんにつづく。


 それを見た鵜飼兄弟は、「者ども逃がすな、矢をつがえて放つのじゃ!」と追撃の合図を送った。


 ヒュン、ヒュン、ヒュン!


 甲賀忍びによって放たれた矢は、田ノ助爺さんとカケルの踏み切る足元寸前のところにブスリ、ブスリと突き刺さる。

(それにしても、先に走った田ノ助爺さん、ヨボヨボだと思っていたが、カケルの足でも追いつけない。むしろ、カケルの方が息があがりそうだ)


 ドサリ! ゴロン!!


 ブスリ! ブスリ! ブスリ!


 カケルと田ノ助爺さんは、木陰へ身を隠した。隠れた木には、甲賀忍びの矢が何本も刺さっている。


「おらぁ、生来の戦好きだでよ、久しぶりに、敵に追われて若い頃のように血肉が踊るでよお」


(なんて、爺さんだ、よく見れば、顔のシワや、髪の色こそ真っ白だが、垣間見える身体は、無駄な肉がまったくなく隆々としている……)


「田ノ助爺さんは、ホントに爺さんなの?」


 カケルは、百面相ひゃくめんそうの鳶加藤の例もある。戦国を生きる人々は、見た目だけ実態を判断してはいけないと学んでいる。ここまでの田ノ助爺さんの判断と、回避行動はたいしたものだ。きっと、竹中家でもかなりの武勇でならしたものと思われる。



 田ノ助爺さんは、嬉しそうに、二ッと抜けた歯で見せて笑って見せた。

(うはっ、たしかに爺さんだ)


 カケルは、芸人のコントのような歯抜けを見せられ思わず噴き出した。


「おやおや、左近殿も死地にあって笑えるとはたいした肝っ玉の侍だのう」


 ポロッ!


 田ノ助爺さんが、カケルと一緒に歯抜けの顔で笑ったら、唯一の武器の鍬の柄がポロっと落っこちた。


「あれま、これは、万事休すだがね」


 死地にあっても、拍子抜けするような現象には、カケルも笑った。だから、閃いた。

(ここは、森だ。太い木刀のような枝木を拾って武器にすればなんとかなる……)



 ジワリジワリ、甲賀忍びは弓から忍び刀に武器を持ちかえて、包囲の輪を縮めてきた。


 カケルは、三本先の木立の足元に、木刀の代わりになりそうな棍棒こんぼうを見つけた。


「田ノ助爺さん、スグに戻って来るから、ここに、隠れていてね」


 カケルは、身体能力に優れる嶋左近の身体で、原野を駆ける虎のような跳躍で木立と木立を飛び跳ねて、棍棒を掴んだ。


 しかし、


「爺さん、しぶとい人生もここで終わりにしてやるよ」


 すでに、甲賀忍びの一人が、田ノ助爺さんに忍び刀を突きつけようとしている。


 グサリッ!


「田ノ助爺さん!!」






 つづく




どうも、こんばんは星川です。

田ノ助爺さんとカケルを追っかける甲賀忍び鵜飼兄弟しつこいですね、今回、ペロッと、武田信玄の死の秘密も洩らしちゃいますね。

この小説も連載が長くなって、三方ヶ原にて武田信玄が死んだのは、去年の四月だったようです。

信玄に、「瀬田に武田の旗を立てよ」と遺言された山県昌景と、嶋左近こと現代の高校生カケル。カケルは昌景から戦のイロハを学び武士として一角の武将となりました。

昌景とのこの度で、織田領内を巡って、なにを学ぶのか、作者自身も去年の段階で、シンギュラリティのストック原稿をかなり作り、公募原稿に集中していて、毎週土曜日の晩に、読み返して、読者目線で楽しんでます。


それでは、皆さま、ブックマーク、評価☆、感想などいただけましたら、小躍りして喜びます。引き続き応援よろしくおねがいします。


それでは、おはよう、こんにちは、こんばんは、スグ読んでくださった方々のために、おやすみなさい。

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