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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
一章 疾風! 西上作戦開始!
13/398

13初体験! とファーストキス(戦国カケルのターン)チェック済み

「左近殿、今宵、おつやの方のしと寝へ忍び込み、その手練手管で陥落させていただきたい」


 カケルは、首をかしげて、


「しと寝ってなに? 」


「夜の秘め事にござる」


「えっ?! オレってば童貞ッスよ!! ムリムリムリ! あんな気の強い女が初体験の(あいて)なんてイヤ! しかもオレには月代っつう心に決めた(ひと)が……(ぶつぶつ……)」


 鳶加藤は、嶋左近ことカケルの肩をグッと掴んで、


「左近殿、覚悟召されよ! 」


「覚悟ってどうすりゃいいのさ、手練手管って、オレ童貞よ。しかも、あんな気の強い女じゃ元気になるものも元気になる自信ないよ! 」


 鳶加藤は、意地の悪い顔をして胸もとから本を取り出しクククッとカケルに渡した。


「房中秘術――虎の巻―― がござる」


 カケルはパラパラと虎の巻に目を通した。


「文字がゼンブ古典じゃん、こんなん読めねーよ! 」


 悪い顔をした鳶加藤は、「貸してみなされ」と取り戻すと、パラパラとページをめくって「うんうん」うなずいて再びカケルへ返した。


「房中秘術の絵図もござる」


 絵図は、頭が丸で体が棒の棒人間で書かれていた。二人の重なる棒人間が様々な秘事の型を成している。現代でいうところの棒中四十八手だ。


 悪い顔をした鳶加藤はつづける。


「この棒中秘術を頭に叩き込みことに及びなされ、されば、女というものは欲望の(とりこ)にさえしてしまえば、どんなに気の強い女といえども、いともかんたんに言うことを聞くものにござるよ」


「そういうものかな……」 と、カケルは、鳶加藤の口車にのっかりそうになるのだが、慌てて「ムリムリムリ! オレの初体験の相手は月代って決めてるの! 」と駄々(だだ)をこねだした。


「左近殿、想い(ひと)とことに及ぶまで、童貞を貫くと申されるのは、(まこと)(おとこ)とは申せませんな。漢というものは、女としと寝を共にする際は、欲望の(ふち)へと導いてやるものですぞ! 漢は秘術にこなれていて当たり前!! たとえ童貞でろうが、秘事がおぼつかないようでは女に馬鹿にされますぞ!!! 」


 悪い顔をした鳶加藤は、カケルに耳打ちした。


 カケルはそういうものかなと、妙に納得させられ、「棒中秘術ー虎の巻ー」を渡された。




 ――岩村城、おつやの方の寝所。


 床の間に織田木瓜の掛け軸、男伊達の面が厳めしい甲冑、女だてらに朱槍を飾り、織田家の武威を示している。


 枕元へ用心に短刀を置いた寝所に横たわって眠るおつやの方は、昼間、カケルを槍で脅しつけた時とはうってかわって男の(よろい)を脱ぎ捨てたようだ。


「コトッ!」


 天井の抜き板が開いた。


「(声を忍んで)ほれ見なされ左近殿、女というものは仮面をはいでしまえば、かわいいものです」


 カケルが、開いた抜き板からヌッと顔を出した。


「ホンマや、あの鬼ばばあだったのが、こんなに美しい女だったのね」


 鳶加藤が、天井の抜き板からスルスルと縄を落とした。


「左近殿、この先は一人でお行きなされ」


「エッ! 鳶加藤さんついてこないの? 」


「ワシは左近殿の首尾をつまびらやかに見守り、山県殿へお伝えするのが役目でござる」


「オレ、自信ないわ~」


 悪い顔をした鳶加藤が、


「やれば出来る! 嶋左近は漢にござる!!」


 と、キッパリと言い切った。


 カケルはそのペテンの言葉に妙に勇気をもらったような気がして、鳶加藤へ親指を立てて「行ってきます! 」と、スルスル縄から寝所へ降りた。


 男の仮面を脱ぎ捨てたおつやの方は美しい。艶やかな長い黒髪に、真っ白な白い肌、瓜実型の顔貌(かおかたち)にスラリとした鼻にポッテリとした唇が艶かしい。


 カケルは一瞬で、おつやの方に心奪われた。


「なんてキレイな(ひと)なんだ……」


 カケルの心の声が漏れた。


「パチリッ!」 おつやの方は目を開け、ウドの大木みたいなカケルを見つけると、枕元の短刀を掴んで身構えた。


「たれぞ!?……」


 おつやの方が、助けを呼ぼうと声を出すが早いか、カケルは瞬間的に、短刀を掴む腕を捕まえ、口を唇で塞いだ。


 ファーストキスである。


 カケルは、突発的とはいえ、女を初めて知った。ファーストキスは、レモンやらイチゴやら果実の味がすると聞いていたが、案外に味なんてしないもんなんだなと、おつやの方の唇を味わっている。


「ガブリッ!」


 気を抜いたカケルへおつやの方は噛みついて身を離した。


「たれぞ!……」


 再び、助けを呼ぼうとしたおつやの方を、カケルは再び瞬間的に強い力で腰を掴んで引き寄せ、もう一度、唇を重ねた。


 先程は、ファーストキス。わずか、数秒足らずの間に2度目のキスだ。それは、すべての思考を奪い去る本能的な情熱的なキスだった。


 今度のカケルは、キスを味わっていない。まるでむさぼるようなキスだ。


 カケルの情熱にほだされたのかおつやの方が手から短刀をポトリと落とした。「このままどうなってもいい」と、身を任せたのだ。


 そこで、ようやくカケルは、唇を離した。


「ゴメンね、おつやの方様。突然だけどこうするしかなかったんだ」


「お前はあの時の五平の孫の助兵衛ではないか、ワラワをどうするつもりじゃ! ここは織田家の城中、たとえワラワを人質に取ってもそうそう逃げおおせるものではないぞ! 」


 カケルは、おつやの方にゆっくり首をふって、


「なら、口説くのさ」


 と、ニッコリ笑った。




 つづく



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