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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
二章 激突!武田vs徳川 三方ヶ原の戦い
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120三方ヶ原の戦い12 家康の最期(カケルのターン)

 信玄が倒れると、陣頭指揮の座に就いたその子武田勝頼は、緘口令かんこうれい(ある物事や話などを、他人に言うのを禁止すること)を敷いた。


「よいか、父上の容態は敵にも、四天王にも絶対に漏らしてはならぬぞ!」


 勝頼は、信玄の容態が家臣、四天王に知れると、陣頭を引き払い、後事を話し合いに引き戻って来ると思ってのことだ。


「それに、山県昌景がもどると、話が思い通りにいかなくなりますぞ」


 と、勝頼の側近、跡部勝資の忠言によるところも大きい。


 三方ヶ原の決戦の前日、信玄は、重い体をおしてこの陣へ望むことを決めた折、自分の死期が迫ることを見越して、武田家の後事を山県昌景を呼んで託した。


 信玄の山県昌景への信頼は、皆の衆目で行われたから、家中の者は四天王をはじめ、末端の侍大将なら皆、承知の事実だ。


 今、信玄が倒れた事実を、本来なら、家康追撃へ向かった山県昌景へすぐさま伝えねばならない。


 しかし、武田勝頼は事実を隠した。それは、武田家を思ってと言うよりも、自己が野心を成就するため。



 信玄は、後継をこの勝頼ではなくまだ幼い子の部王丸へ継がせ、摂政を山県昌景に任せることを公言した。それを、一門衆と四天王は知っている。


 後継の座を自己ではなく、子の部王丸へ引き継ぐのは構わない。しかし、「なにはなくとも、子の自己(勝頼)を差し置いて、山県昌景へなぞ、任せおくものか!」


 勝頼は、この三方ヶ原の戦いにおいてことごとく山県昌景の後塵を拝した。


「なにはなくとも忌々しきは山県昌景!」の念が、勝頼の心の奥底で沸々とたぎっている。


 いわゆる、サラリーマン社会でいう、出来すぎる社員は煙たいである。


「なにをされるのです勝頼殿!」


 気を失った信玄を支える山県虎に近づいた勝頼は、信玄の首から兜の紐をほどくと、自己の兜をほどき、付け替えた。


「これより、武田家の惣領はこの武田諏訪四郎勝頼が務める! 皆の者、相違ないな!!」


 勝頼は陣中を掌握した。




「かかれ! かかれ! かかれ!」


 徳川家康を馬を駆る真紅の部隊が追う。


「あれに、見えるは徳川家康が首ぞ、皆の者、かかれ!!」


 山県昌景は追撃の手を休めない。


「ひぃ~~~~~!」


 徳川家康は、逃げて、逃げて、逃げる!


 しかし、とうとう、徳川家康は崖の岩場へ追い詰められた。


 徳川家康を追い詰めた山県昌景は、馬上を下りて、


「お主が、真の徳川家康であるな!」


 家康は、静かに首を振るだけで答えない。


 山県昌景が、家来に命じて、


「捕らえた者の中で、徳川家康が顔を分かる者を連れて来い!」


「こ、っこ、この方が本物の徳川家康さまだ!」


 キリッ!


 それを聞いた山県昌景は、徳川家康の首に刀を宛がい、一刀両断の元に打ち落とした。


「敵将、徳川家康が首、この山県昌景が討ち取ったり!!」





 ――三方ヶ原の最前線――


 夏目正吉、成瀬正義、世良田次郎三郎元信の三人の影武者徳川家康が、陣頭に現れ、攪乱作戦を展開している。


 前線は、中央の夏目正吉が、指揮をとり、本多忠勝を叔父の本多忠真、榊原康政を兄の榊原清政に、それぞれ入れ替えた。


 そこへ、


「武田の赤備え山県昌景が、敵大将、徳川家康を討ち取ったぞ!!」


 と、武田方に声が上がった。


 その言葉に、影武者夏目正吉はじめ、本多忠勝、榊原康政は顔を青ざめた。


 しかし、夏目正吉は冷静に、


「うはははは~~~! 笑止なり山県昌景!! 真の徳川家康ならここにおるわ、やつは影武者じゃ!!!」


 と、高らかに言ってのけた。


 すると、西からも、成瀬正義が、


「うはははは~~~~! 猛将、山県昌景が聞いて呆れるわ。影武者と、真の徳川家康を見間違うなぞ!!!」


 と、声を張り上げた。


 東では、世良田次郎三郎元信が、


「時は来た。我らは頃合いを見て、本軍の本多忠勝、榊原康政を吸収し撤退じゃ!!」


 家康戦死の報で全軍総崩れになると思われた徳川軍であったが、全軍動揺することなく連携を取り戻し、世良田次郎三郎元信を中心に、本多忠勝、榊原康政を吸収し、撤退を始めた。


「何?! 真の徳川家康はあやつであったか!!」


 武田軍は、家康の死の知らせと同時に、三人の影武者徳川家康が「我こそが真の徳川家康である!」との名乗りで、もはや、誰が真で、誰が影武者か、見分けがつかない始末。


「こうなれば、戦場にいる徳川家康の首を悉く跳ね上げよ!」


 と、前線の四天王、馬場信春と内藤昌豊が請け負った。




「左近、お主はどうするのじゃ?」


 と、菅沼大膳が、嶋左近ことカケルへ尋ねた。


「う~ん、わかんないけど。ここは、馬場さんと内藤さんに任せて、俺たちは、本多忠勝と榊原康政の守るあの撤退してゆく部隊を追いかけよう! いくぞ、セイヤーーーー!!」


 カケルの駆る漆黒の巨馬霧風は、立ち塞がる徳川の兵たちをことごとく跳ね飛ばし、風のように追いかける。


 カケル率いる山県昌景の赤備え一番隊は、先頭のカケルが切り拓いた戦場を放たれた矢のようについて行く。


 カケルの一群は、壁として立ち塞がる夏目正吉の陣を突破し、成瀬正義の陣を切り裂く。


「かかれ! かかれ! かかれーーーーー!」


 もはや、嶋左近は、師である山県昌景がここに居るかと見違うばかりに生き写しである。


 真紅の軍団は、世良田次郎三郎元信を守る本多忠勝と、榊原康政へ迫った。





 つづく



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