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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
二章 激突!武田vs徳川 三方ヶ原の戦い
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101木下藤吉郎(左近のターン)

 信長の面接を終え名刀、宗三左文字を信長からもらった意気揚々の左近と、信長を相手に一歩も引かない左近の振る舞いに、肝を冷やし、ゲッソリと顔に疲れの見える斎藤利三が夕焼け迫る城門を潜ってでてきた。


「お~い、斎藤利三殿お待ちを~」


 と、左近たちを追って城門口に仮の屋敷を構えた木下藤吉郎が追っかけてきた。


「おお、これは木下藤吉郎殿、お疲れ様にござる」


 藤吉郎は額の汗を手で拭って、


「ひゃ~、聞きましたぞ利三殿。信長様の面接で少しも恐れもせず、饅頭を二つとも食らった男がおると、城内で評判ですぞ」


 仕方なさそうに、斎藤利三は、左近こと渡辺勘兵衛を藤吉郎に紹介した。


「こやつが、この度、我が明智家へ仕官した、渡辺勘兵衛にござる。ほれ、勘兵衛、自己紹介をせぬか!」


 左近を、子供が面白い物でも見るように、目玉を丸くして、キラキラした瞳を向ける木下藤吉郎の無邪気さに、左近もペースに乗せられそうになる。

(おお、この木下藤吉郎なる人物が、後の太閤殿下になる若き日の豊臣秀吉様か、うむ、確かに、塊のよう好奇心と、溢れんばかりの行動力にたけた人物であるな)


「お初にお目にかかる木下藤吉郎殿、明智家家臣、渡辺勘兵衛にござる。以後、お見知りおきを」


 と、左近が、杓子定規に挨拶すると、藤吉郎は、いきなり手を掴んで、


「おお、さすが、あの怖い信長様が一目で気に入られた若者だ。これは、凛々しいの~」


 と、藤吉郎は、左近の体つきをベタベタ触って確かめた。


 それを見た斎藤利三が、(この御仁のペースに乗せられると思わぬ足止めをくい、自己の用事が出来なくなってしまうぞ。ならば……)


 すると、斎藤利三が切り出した。


「藤吉郎殿、なにやらお主は、ワシじゃのうて、この渡辺勘兵衛に興味があるようじゃのう?」


「いや、ワシは、利三殿にも興味はある。だがじゃ、今日のところは城中で話題の御仁に会っておきたいと思うたのじゃ」


「ならば、名案がある。ワシは、まだ坂本から船で運んだ鉄砲を蔵へ納品する仕事が残っておるゆへそれをすませる時間があるゆえ、そこまで、木下殿が、勘兵衛に興味をお持ちなら、しばし、御貸ししましょう」


「良いのか、利三殿?」


「構いませぬ。今宵は、我らも一晩こちらへ泊りますゆへ、仕事が終わったら、ワタシも木下殿の屋敷で一緒に共にご相伴にあずかりましょう。よいな勘兵衛?」


(良いも悪いもない。直接の上司の斎藤利三が頭を越えて了解しているのだ。まだまだ、下級の武士の意思などこの時代にはないに等しい)


 左近は、


「分かり申した。木下殿に同行いたしましょう」


 藤吉郎はパン! と、手を叩いて喜んで、


「ワシのところには、お主に劣らぬ若い者たちが溢れておるゆへな、奴らにもお主の話を聞かせてやりたいと思っておったところじゃ。これは、楽しみじゃ~」




 左近が案内された木下藤吉郎の屋敷はまるで剣術道場のようであった。


 およそ現代で言うところの二十五メートルプールほどの広さのだだっ中庭道場に、居住まいを正した青っ白い顔の三〇歳にかかるかかからないかの利発そうな男を筆頭に、若い十代の悪ガキどもが槍や刀を掴んで、「えいや! とうや!」稽古に励んでいる。


 切っ先を無用な怪我をしないように木で作った十文字槍を構える少年と、同じく木の切っ先の片鎌槍を構えた少年が一際、激しく稽古に励んでいる。


「虎之介、お前の十文字は、その十字に振れればそれだけで相手は体に傷をうけ戦意を奪える大きく旋回させるのじゃ。おお、市松、お主の片鎌槍はその鍵が特徴じゃ、地の面すれすれをこするように旋回させ、足を引っ掛けるのじゃ」


 藤吉郎に案内されて中庭道場に入った左近は、少年ながら大柄な、虎之介、市松の槍裁きに唸った。


「木下殿、あの虎之介殿と、市松殿はなかなかに筋が良い」


「おお、勘兵衛殿わかるか、やつらは子のないワシが親類縁者から引っかき集めた子飼いの武将たちじゃ」


「まだ、子供なのに武将ですか?」


「そうじゃ、やつらは、いずれワシを支える侍大将になる。ワシは、信じておる」


「ほう、それは楽しみな逸材ですな」


「どうじゃろう、お主、やつらに、一手稽古をつけてくれんか?」


 藤吉郎は人懐っこい顔で簡単に人にムリを頼む。


「うむ、ならば、木刀をお貸し願おう」


 左近は、木刀を掴むと重さの感触を確かめるようにブンブン振るって確かめた。


「これじゃな」


 左近は、のしのしと、木刀を引っ提げて、虎之介、市松、二名同時に相手にするよう願い出た。


「ワシらが、子供じゃと馬鹿にしおって、よ~し、返り討ちにしてくれる」


 虎之介も市松も子供ながらに、左近を叩きのめす気満々だ。



 藤吉郎が、武術の稽古の指導をしている青白い顔をした利発そうな男に耳打ちした。


「あやつが、ワシの高名争いのライバル明智家に仕官し、面接で、信長様に一目で気に入られさらに、名刀、宗三左文字を拝領した男じゃ。半兵衛よ、あやつが明智の家来として仕えそうな人物ならこの機会に、この場で、虎之介と市松を使い殺してしまえ」




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