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トイソルジャー  作者: 三色の水風船
8/8

フロル宿町

 使い物にならなくなったミナトを乗せて馬車は森を抜けた。ポリゴンを全て使いきるとシューターは戦闘力がなくなってしまい、回復までに一日が必要となる。

「ふぅ。疲れたぜ」

 アランが汗を拭きながら乗り込んだ。

「お疲れさまです」

「おう。俺も一眠りさせてもらうから、町まで任せたぞ」

「わかっている」

 森を抜けると草原に出る。草原は見通しもよく、人間の脅威となるほどのモンスターはほとんどいない。目的地までもうすぐだ。

 ミナトはポリゴンを全て放出した後の脱力感の中、アランはオニメツキの群れを数時間ずっと相手にして疲労中。ジルもかなり疲れてきている。馬車の速度調節と横からのモンスターに対応できるように常に意識を向けていたのだ。だがジルは自分の役目だと思い、文句を言うことなく馬車を走らせる。


 フロル宿町。

 アランの家があるこの町は、旅人や商人の中継地点に使われることが多く、宿町と呼ばれるようになった。

 旅人と商人がいたら商売が始まる。フロル宿町の中央市場にはずらりと屋台が並び、活気も品揃えも王都に並ぶほどだ。

 そんな活気溢れる中央市場の隣の道を馬車は通った。その道の一番奥の一軒家がアランの家。真っ白な長屋で土地を贅沢に使っている。

「俺とジルは足枷外せるような道具を見つけてくるから、しばらく待っていてくれ」

「了解です」

「留守番している仲間がいるんだ。自己紹介でもしていてよ」

 馬車置き、馬を小屋に戻してアランとジルは市場へと向かった。足枷のついたミナトをなるべく出歩かせたくないからだ。

 この町には様々な職業の人間がいる。足枷を外す道具を見つけることは可能だろうが時間がかかってしまう。

 ミナトはドアをノックしてから家に入った。


「帰ってきた!」

 アランの家で留守番をしていた少女リーナは、ドアをノックする音を聞いて私室から飛び出した。

「おかえりー」

「はじめまして、ミナトです」

 リーナの想像とは違い。家に入ってきたのはミナトだ。そしてミナトのことをリーナは知らない。

 ――誰!?軍人!?

 軍服の少年に突然頭を下げられ、反射的にリーナも頭を下げた。金色の長い髪の毛が大きく揺れる。

「は、はいっ。リーナです」

 そして頭を下げたせいで見えた物がある。

 ――足枷って……もしかしてこの子人形!?

 私室からは馬車の音が聞こえていた、つまりアランとジルが帰ってきたのは確実なのだ。

 ――なるほど、二人が買ってきた人形ってわけね。

 こう勘違いをした。


「ミナト。とりあえず私の部屋の掃除をお願い。ほうきと雑巾は物置にあるわ」

 家に迎え入れてさっそく掃除という礼儀も何もない行為だが、リーナは目をつぶることにした。

「了解です。物置とリーナの部屋はどちらでしょうか」

 そんな無礼な同居人を相手にしてもミナトは嫌な顔をすることなく返事をする。その時リーナは違うことを感じていた。

 ――呼び捨てにされた!?

 人形だと勘違いし、リーナは堂々とした態度で初対面のミナトに振る舞うが、呼び捨てにされてガックリと腰を落とした。

「リーナ。どうしましたか」

 ――また呼び捨て……私なめられている。いいわ。人形をしつけるのも役目ってわけね。


「ミナト。私のことはリーナ様と呼ぶように」

「リーナ様?」

「うんうん」

 リーナはご満悦だ。

「なぜですか」

「えっ!?」

「リーナは外見から僕と年齢はそれほど変わらないと思いますし、目上の人でもありません」

 ――この人形、全然しつけがなってないじゃない!

 人形は買い主一家の所有物である。勘違いしたリーナは根本が間違っているという可能性にたどり着けなかった。

「そんなのいいから!早く仕事してきて!」

 口論するのが面倒くさくなり、リーナはミナトを物置まで押し出した。

「了解です。リーナ」

「またリーナって言った!」


 数分でリーナの部屋の掃除が終わった。物は散らかっていなかったので雑巾で壁と床を拭く程度だ。その後もミナトはリーナにこき使われた。

 ――風呂掃除に皿洗いに洗濯、さらには買い物までしてくれるなんて、人形がいると楽だなぁ。仕事も早いし、私に対する無礼さえなければ文句なしなのに。

 ちなみにミナトは今料理を作っている。

 リーナは雰囲気を作るため急遽買ってこさせた紅茶で優雅な夕暮れを迎えていた。

 しかし、そんな優雅な時間は長く続かない。しょせんメッキである。

 突然家の扉が大きな音をたてて開かれ、アランが顔を出した。


「ミナト!」

「あ、おかえりアラン」

「アラン。お帰りなさい」

 そしてアランは軍服の上からエプロンという変な格好をして台所に立つミナトを見て絶句し、リーナに目をやった。

「……お前、ミナトに何させてるんだ」

 アランの質問の意図が理解できず、リーナは首を傾げながら答える。

「何って。掃除とか買い物とかいろいろ」

 アランは一瞬でリーナが何を勘違いしているのか理解し、的確に答えを言った。

「バカ!ミナトは人形じゃねえんだぞ!」

「ええ!?でも足枷がついてるじゃない」

「それを外すために俺とジルが町中走り回ったんだ!ああ、ミナト。早くついてこいよ」

「了解です」

「あの、まだ料理作りかけ……」

 バタン、と音がして扉が閉まる。突風のようにリーナの優雅な夕暮れは終わりを告げた。

「そんなぁ……」

 そして追い討ちをかけるように再び扉が開いた。

「リーナ。アランから伝言です。後でミナトに謝ると同時に説教だと」

「あうう……」

こんばんは。8話目ですよ。

三日坊主に終わる可能性大でしたが、なぜか続いています。

今日はとあるアプリのガチャで爆死しまして、むしゃくしゃして書いてしまいました。いつも以上に雑なのでは。

それでは失礼します。

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