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トイソルジャー  作者: 三色の水風船
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人形の保護者

 馬車に乗った商人たちは森を前にしていた。これから向かう町を目指すにはこの森を通過しなければいけない。だが森を抜けるには半日が必要だ。商人たちは森の手前で夜を迎えることにした。


「ミナトくんは」

「今さっき寝たよ」

「そうか」

 夜中、ジルはミナトが眠ったのを見計らってアランの部屋に入った。部屋といっても棚で区切られているだけで同じ荷車の中だ。

 蝋燭の灯りだけで照らされたアランの部屋のソファーの上で、ミナトは本を読んでいたらしい。床に本が落ちていた。

「話がある。外に来てほしい」

「外は寒いだろ」

「ミナトくんを起こすのは悪いだろう」

 なんとなく、ジルはミナトに聞かれたくない話がしたいのだと勘づいたアランは荷車の外へ出た。


「アランは今後ミナトくんをどうするつもりだ」

 いきなりそう言われた。

「どうする、とは」

「記憶喪失の少年をどうしたいのか、答えろ」

 ジルの強い口調にアランも強く返す。

「育てるに決まってるだろ。これはアイツとの約束だ」

「アラン、お前は商人だ。旅の中で生きる人間だ。育てる余裕なんかないぞ!何より危険だ!」

「……っ」

 アランは言い返せない。普通の子供は学校で常識的なことを学ぶ、だが旅する商人のもとでは学校になど行けない。

「お前は親友の忘れ形見をモンスターの餌にでもするつもりか!」

 そして、常識のないミナトにとって旅は常人よりも過酷なものになるだろう。

 これから学習していく、一番の成長期にあるミナトは一番死にやすい時期にもいる。その時期に安全な場所にいられないのだ。


「……明日の森で判断する」

 悩んだ末、アランが出した答えがこれだ。

「使えなかったらどうする」

「ミナトは元軍人だ。きっと役に立つ」

 これは願望だった。根拠などアランは何もなかった。

「俺はお前についていく仲間として言わせてもらうぞ。貴重な金を、使えないやつの飯代にするなんて許さない。仲間の命に関わるんだ。使えないと判断したらミナトを捨てて別のやつを雇う」

「わかっている」

 アランは渋々頷いた。

 ミナトにとってどちらが幸せなのか、アランはわからなくなった。旅人になるのが幸せなのか、最低限の金を渡して自由な職につかせるのが幸せなのか。明らかにミナトにとっての幸せは後者だろう。

 そこまではアランもわかっているのだ。ただ、見届ける者がミナトには必要だろう。そして俺がその見届ける者なんだ、と勝手に感じていた。アイツからミナトを託された者なのだから。


 ――俺はミナトが記憶を取り戻し、本当にやりたいことが見つかるまで側にいてやるアイツの代わりだ。保護者なんだ。

 心を失った人形は、手放した瞬間支えを失って崩れ落ちるだろう。もしくは唯一残った本気が求めるまま戦場に戻るしれない。それは絶対にさせられない。

 何か支えが見つかるまでは、アランはミナトを手放す気にはなれなかった。

「ジル。こういう作戦はどうだ」

こんばんは。読んでいただき感謝です。

かなーり短いですね。このくらいのペースでぱっぱと進めていきたいです。本当は次の話とくっつけるつもりでした。

しかしこんだけの文章でも書くのにそこそこ時間がかかってしまいます。

可能な限り更新します。昨日は朝から晩まで家に帰れなかったので更新が抜けてしまいました。

それでは失礼します。

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