妹の憂鬱
「………兄さんの、エッチ……」
「だから、あれは不可抗力だろ?不慮の事故なんだってば…」
「うぅっ~~~~~」
顔を真っ赤にして涙目で何かを訴える妹。
ただいま、フォンニエスの中にあるとある喫茶店で休憩中。
「急用じゃ。」とこの場を離れて学校に呼び出された白衣幼女(笑)と別れて残りの必要物品を揃えている途中である。
買ったものは全て後から転移魔法で寮に届けてくれるそうだ。何て画期的なサービスなんだろう…
これで金儲けを考える輩はいないのだろうか?
さて、なぜこんな状況になってるのか………………
説明しよう!(キリッ)
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「兄さん。たぶんここですよ。」
小さな看板がぶら下がっている、古い洋服店の前に立つ。
パラケススからもらった地図とにらめっこしながらここまで来たが、正直アバウトすぎて全くわからない。それに、地図に乗ってない小さな路地や訳のわからない通路がめちゃくちゃ多くてもはや巨大迷宮とかしている。
ぶっちゃけここまでの道案内は全"茜"がしてくれた。
「兄さん、ここっぽいです。」
「うーん……あっちかな。」
「こっちからおいしそうな匂いがしますっ!」
おいしそうな匂いって何だよ。(笑)
以前も説明したが、この残念美人な妹はとにかく道に弱い。その茜が真っ当な道をズバリ言い当てていくのだ。俺は涙が止まらなかった。成長したな……妹よ……………。
野生の勘でも何でもいい!とにかく今回は助かった。
「兄さん。入りますよー」
カランコロン……
「いらっしゃいませ~。何をお求めでしょうか?」
歳は30代って所だろうか…綺麗な人だ。
でも、わかるほど営業スマイルの店員さんがやってくる。
「マージナル専門学校の制服採寸に伺ったんですが………」
「新入生の方ですね。お一人ずつ行いますので、まずはそちらの貴方からお願いします。」
俺からか。
淡々と店員さんが、採寸を行う。
男子の制服は黒を貴重としたコートのようなシックな作りだった。襟元には私立マージナル専門学校の校章がついており"Ⅰ"の英数字が刻まれている。驚いたのは素材だった。着心地は恐ろしく軽く、伸縮性もある。そして耐久性にも優れちょっとやそっとじゃ破けないらしい。
「はい、終わりました。次は女性のお客様。」
俺と交代で茜が試着室に入っていき、カーテンが閉まり、キャッキャと嬉しそうな会話が聞こえてきた。
「この制服、凄く可愛いですね!」
「お客様、とてもお似合いです!そうですわ!』
シャッ…
「彼氏さんも、彼女さんの制服姿見たいですよね。」
「へ?」
よほどテンションが上がっているのか、口調が砕けてしまっている店員さんの言葉と、彼氏と言われたことにビックリしすぎて間の抜けた声を出してしまった。
店員さんも若干、興奮し過ぎているようだ。
「彼氏さんにも是非見てもらいましょう。今年の新入生の中でもトップクラスに似合ってますから!」
「えっ?彼氏じゃな………」
シャーーーーーーー
勢いよくカーテンが開く…
そこには純白のヒラヒラした制服を着た茜がいた。白を貴重としたドレスタイプ。ピンクのリボンがアクセントとなっている。
「兄さんっ………ど、どうですか?」
顔を赤らめながら茜が訪ねる。その時……
ストッ…
何かが落ちる音…
スルッ……
今まで茜のパンツを守っていた布が消え去る……
「えっ…………」
サイズ合わせの為にスカートを仮止めしていたピンが床に見える。恐らくそれが取れてしまったのだろう…
大人っぽい黒いレースの下着が露になる…
こいつ顔に全く似合わない下着穿いてんな(笑)
そして、時間が止まる…
「いやぁーーーーーーーーーー」
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平謝りしてくる店員さんに会釈しながら、店を出る。その間も茜は下を向いて涙目だ。
そして、話は冒頭に戻る。
「だいたいあのお姉さんがしっかり止めてないのがいけないんです。(彼女って言ってくれたのはすごく嬉しかったですけど……)」
最後の方は小声で何って言ってるかわからなかったが、とにかく怒りの矛先が俺じゃなくなって胸を撫で下ろす。
表情がだいぶ柔らかくなった所で、
「とりあえず、次に行こうか。まだまだあるし……」
「えっ………あっ、はい。(なんかもっと照れたりしてくれればいいのに…)兄さんのバカ……」
「まだ言うか。」
茜の頭を乱暴に撫でる。
茜の心の声は誰にも言えない。
鈍感すぎる兄で本当に助かってる…
この気持ちは誰にも言えない。
言ってはいけない。
くしゃくしゃになった髪型を直し、兄の元へ駆けてゆく………