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教えて!先生!


「すまん。もう1回言ってくれるか?」


「ですから………今日は説明会に来ただけなので終わったら帰りたいんですけど………」


「何を言っとるんじゃ?もう帰れる訳なかろう?」


話が全く噛み合わない。先程から同じ会話の繰り返し。

しかも、幼女の方はだんだんイライラしてきている。場の雰囲気は最悪だ。


「あ、あのっ!パラケススさんはおばぁちゃんの知り合いで間違いないんですよね?」


空気を読むことに長けている茜がこの場を救ってくれた。


「当たり前じゃろ?今回の件は全部、秀ちゃんから任されておるのじゃから。ん?……ちょっと待て。まさかお前ら何も説明されとらん訳ではあるまいな?」


茜が俺に変わって経緯を説明する…………


突如……


「あの!めんどくさがり屋がぁ~~~!」

「いつもそうじゃ!重要な事は後回し!尻拭いはいつもわしじゃ!久しぶりに連絡してきたと思ったら一方的に話して"ブチッ"じゃぞ!積もる話もあるというのに…………昔はあんなに素直で可愛かったというのに……ブツブツ……ブツブツ……」


さっきまでの知的な雰囲気はどこにいったのやら。あまりの豹変ぶりを目の当たりにして茜の目が点になっている。


───────────────────


「すまん、すまん。ワシとした事が。秀ちゃんのペースにまんまとのせられてしもうとるわ(笑)しっかし、何の説明もせんで寄越すとはな。」


秀ちゃん。パラケススというこの幼女がそう呼ぶのは十中八九うちの保護者(ババァ)で間違いない。


神川秀子(かみかわひでこ)


神川家27代目の当主にして御歳70の祖母である。まさに理不尽の塊。俺が絶対に逆らえない、逆らってはいけない相手である。


「あのっ。説明していただいてもよろしいでしょうか?えっと…………」


先程の豹変ぶりが尾を引いてるのか、茜が恐る恐る幼女に訪ねる。


「ん?あぁ。きちんとした自己紹介がまだじゃったな。わしは"パラケスス"。私立マージナル専門学校で教鞭をとっておる。担当科目は精霊使役科じゃ。お主らの担任にもなる。よろしく頼むぞ。」


「ってことは、おばぁちゃんの言ってた知り合いの校長って?」


「校長だったのは昔の事じゃ。今は一教師に過ぎん。学校の創立時代の頃じゃからもう300年近くなるかの~。いやはや懐かしい。」


ん?300年?

計算おかしくない?


「あのー、すみません。パラケススさん。300年前ってうちのクソバ……ばぁちゃん産まれてないと思うんですが……」


「そりゃあ、あっちの時間とこっちの時間は違うからのぉ。」


待て待て!あっち?とかこっち?とか全然わかりません。

俺が頭を抱えていると、茜がすかさず助け船を出してくれた。助けてア~カ~ネ~モ~ン!


「あの!私達全然状況が飲み込めてないんです。色々お教えてくださいませんか?」


ナイスアシスト!本当良くできた妹!


「そうじゃったの……。何も説明されてこなかったんだったな。じゃあ順を追って説明するぞ。」


──────────────────────

簡潔にまとめると、以下のとおりだ。


1.ここは現実世界ではない。

ヴィルゼバウムと呼ばれる異世界。


人間・精霊・神様・妖怪・魔物、様々な種族が存在している世界。上空を見上げると神々しい扉が宙に浮かんでいる。どうやら俺らが落ちた穴はこの扉に繋がっていたらしい。

あの時の地鳴りはこの扉が開いた音だったようだ。また、この学校にとって不利益をもたらす者、魔法及び精霊に適正が全くない者は違う空間に飛ばされ元の世界に強制送還されるらしい。


強制送還してくれれば良かったのに………


2.私立マージナル専門学校について


4年制の全寮学校。創立者はパラケススを中心とした12名。魔法使い、精霊使い、魔物ハンター、聖職者、魔剣使い、魔法拳闘士といった様々な職業の中から自分にあった職業を学び、最終的には資格をとることを目標とする。また職業斡旋も同時に行う。

ハローワークかよ…………特殊すぎるけど(笑)


──────────────────────


「以上じゃ。何か質問は?」


いやいや。納得できるわけない。今まで生きてきて1番混乱している。なんだ?盛大なドッキリか?カメラを探すため辺りを見渡すが、綺麗な草原や深い森しかない……

めちゃくちゃ綺麗だけどね……


「はいっ!先生っ!質問です!」


先生って……(笑)茜が食いぎみに挙手。


「なんじゃ?」


「ここはいわゆるファンタジー世界というやつでしょうか?」


「すまない。その単語の意味がわからぬが……」


「ドラゴンさんだったり、妖精さんとかがいるってことですよね!」


うわぁ………この子目が輝いてる……

こいつゲーマーだったの忘れてた……

茜は学生時代出不精だった頃、一心不乱にありとあらゆるゲームをプレイしてたらしい。

そんな茜にとっては非現実が現実になるという夢の様な状況らしい…


「ドラゴンか。滅多にお目にはかからんが存在しておる………。妖精や精霊、魔物なんてのもおるぞ。茜はこちらの世界の事を秀ちゃんから聞いておったのか?」


「………ドラゴン……妖精……精霊……ふふっ。ふふふっふ……VR世界を超える……夢にまで見たゲームの中の世界……」


うわぁ…ブツブツ言ってる……

質問されたのも気付かない程、自分の世界に旅立たれました。


「ん?大丈夫か、茜?」


「あの子はしばらくほおっておいて下さい。とりあえずは理解しました。ですが先程も申し上げた通り、祖母からは説明会に行ってこいとだけ言われまして…」


俺は、ばぁちゃんとの会話をそのまま伝える。


「ふむ。秀ちゃんからお前の性格は聞いておったからのぉ。お前が逃げられんようにしたのじゃろ?それにお前らはまんまとのせられたのじゃ。言っておくが、ここにお前らがおる時点で入学は決定しておる。明日から学校じゃ。4年間は戻れんぞ。」


「あのっ、クソババァッーーーーーー!!」


俺に選ぶという選択肢はハナっからなかったようです。


─────────────────────


神川家side……


「クシュンッ!」


─なんじゃ。誰か悪口を言っとるな。─

─心当たりは、あの啓祐(バカ)しかおらんが─

─しっかりやれよ。─

─お前は自分自身といい加減向き合うべきなのじゃ。─


神川家の庭に咲く桜の花びらが散るのを見ながら孫たちの行く末を秀子は見守る………

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