さようなら現実、こんにちは異世界
「ぅわぁぁぁぁーーーー」
「きゃぁぁぁぁーーーー」
……………………
「どぅわぁぁぁぁーーーー」
「いやぁぁぁぁーーーーー」
……………………
「茜ーーなーんーかーのーみーもーのーあーるー?」
「えー?にーさーん。なーんーでーすーかー?」
かれこれ相当な時間が経過してます。(笑)
周りの景色は黒い岩肌しか見えず、風の音しか聞こえない。最初の絶叫さえ懐かしく感じるほどだ。しかも、
「にーいーさーん。さーむーくーなーいーでーすかー?」
「えー?なーんーてー?」
落ちてる速度が速いのか、下からの風が強いのかはっきり声が聞き取れず、ずっとこの調子である。
もしかして地球の中心ぐらいまで続いているのか?でも、このまま落ち続けてしかもこのスピードで着地したら………
(絶対、アウトだな。)
無意識のうちに、手を伸ばし茜を引き寄せ抱き締める。
「に、兄さん……。」
「すまん。気持ち悪いかもしれんが、我慢してくれ。」
聞き取れたかどうかはわからないが、離れないということは、大丈夫だろう。
……………………
どれくらい時間が経っただろうか?いいかげん、飽きてきた。茜はじっとして腕の中にいる。
下からの風が強すぎて顔を見ることはできない。
小さい頃はよくこうやって寝てたっけ。怖くて眠れない夜は大抵こうして潜り込んできてた気がする。少しでも安心してくれればいいんだが…………
ゴォォゥ……………………ゴゴゴゴゴゴ……
突如、下の方で地鳴りが聞こえた。何かを通過し暗い闇の中からいきなり光の中に投げだされたせいか、未だ目が慣れず視力が回復しない。
「兄さん!下!下です!!」
茜の声が鮮明に聞こえる。
先程と違う場所にいることを自覚する。
数秒後、おそるおそる目を開いてみると……
眼前にそびえ立つ大きな山。今まで見たことある山より、格段にデカイ。そして、都会では見ることの出来ない透き通った海。なにより驚いたのは、地上から天空まで届いているバカデカイ樹木。まだ上までありそう。その周りには大都市が見える。
そんな風に周りに見惚れてると…………
「兄さんっ!兄さんっっ!落ちてますーーー!」
迫る地面はすぐそこまできていた。
「「ぅわぁぁぁぁーーーー」」
茜を強く抱きしめ、衝撃が来るのを覚悟する。
……………ふにょん……………
想像してたより、地面って柔らかいな……
「ん~ん~、んっんっんっ!(兄さ~ん!苦しい!)」
「あっ!わりぃ!」
急いで茜から身を離す。
「いえ。こちらこそありがとうございました。もうちょっと堪能したかったですけど……」
「ん?何て?最後の方、聞き取れなかった。」
「な、何でもないですっ!」
そっぽを向かれてしまった……
ま、まさかっ!これが噂に聞く反抗期なのだろうか?どっどどどう対応すればっ!?
あたふたしてる俺を尻目に茜は冷静に周りを見ていた。
「なんでしょうかね。コレ?」
茜が指を指すのは、俺たちが着陸した"場所"。もとい"物"?
水色のグニャグニャした物体。ひんやりする。
「それはわしのペットのスライムじゃよ。」
声のする方に顔を向けると、白衣を着た幼女がたっていた。ピンク色の髪をおさげにし、丸眼鏡をつけた幼女が駆け寄ってきた。
「ご苦労さん。元に戻ってよいぞ。」
そう言いながら水色の物体に手をかざすと、"それ"はみるみるうちに小さくなり掌サイズぐらいになった。
俺達もようやく地面に降り立つことができた。
若干、久しぶりの大地にフラフラしてるけど………
「お主ら、遅すぎじゃ。ここまで来るのに何故そんなにかかる。昼ぐらいに着くだろうと連絡を受けておったが、もう夕方じゃぞ?
時間にルーズな所はそっくりじゃな(笑)
まぁ、よい。秀ちゃんより話はきいておるぞ。
啓祐、茜。ようこそヴィルゼバウムへ。そして入学おめでとう。」
「「………………………は?」」
なんかデジャブ………………
俺と茜は顔を見合せ、目を丸くした。