5 猫人族のちびっ子
「その様子では、無事に加護を授かることが出来たようじゃの」
「はい。『時神之主』...と言うようです」
「儂も、『太陽神之主』という加護を持っておるしの。さて...」
マルスタは、立ち上がると、部屋を出て、庭へと向かう。
「行くぞい。能力の確認じゃ」
「...はい!」
ウォロは、マルスタの後を追って"降臨の間"の敷居を跨いだ。
ウォロが【時主】ウロボロスとの邂逅を果たし、加護を得た。これで第一段階は突破した。だが当然ながら、力はすぐに扱えるわけではない。よって、これからはマルスタ指導の下、能力を扱えるように訓練するのだ。
では、今現在のウォロの能力お見せしよう。
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名:ウォロ・カルゴン 年:17 種族:人間族
得意属性:風 ギルドランク:E 職業:――――
称号:時神之主
・技能
〔元素付与〕〔魔法戦技〕
・特性
〔気配感知Ⅱ〕〔魔力感知Ⅱ〕〔魔力操作Ⅲ〕〔元素収集Ⅰ〕〔元素操作Ⅱ〕〔思考加速Ⅰ〕
・固有特性
〔時間停止Ⅰ〕〔先読みⅠ〕〔神の申し子〕
※〔思考加速Ⅰ〕...思考速度を上げる。一秒に5秒分の思考が出来る。
〔時間停止Ⅰ〕...時間を止められる。止められるのは3秒。
〔先読みⅠ〕 ...未来を知ることが出来る。見れる未来は3秒後。
〔神の申し子〕...現実世界でも契約神と話すことが出来る。知識や助言を受けることも出来る、第二の思考回路のようなもの。
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このようになっている。このうち、ウロボロスとの契約、及び邂逅で手に入れた能力は、〔魔力操作Ⅰ→Ⅲ〕〔思考加速Ⅰ〕〔時間停止Ⅰ〕〔先読みⅠ〕〔神の申し子〕の5つ。ウォロは、これからの修行でこれらを使いこなせるようにならなければいけない。
「そういえば、どうやって俺のステータスを見れたんですか?」
能力の確認をし、修行内容を考えているマルスタに、ウォロがそう問いかけた。
「確か魔法道具を使わないと知ることはできないんじゃないんでしたっけ」
「確かにのう」
ウォロが冒険者協会会員証明書、通称身分証を発行した時、ステータス確認のために"能力測定器"という魔法道具を使用したのだ。他人が知るためにはこのような道具を使うはずが、マルスタが使わずに言い当てたことに疑問を感じたのだ。
「しかし、それは特性を持っておらんものが使うものじゃ。世の中には、道具無しで能力を見破る者もいるのじゃ」
マルスタは、ウォロに指を向ける。
「例えば、儂は特性〔天照瞳〕で、その他にも、〔龍眼〕〔透視眼〕というようなものも存在する。まぁ、ものによって読み取れる程度は違ってくるのじゃがな」
「なるほど」
ウォロはマルスタの言葉に頷く。もし相手の能力を知ることが出来たら、戦闘が楽になる。そう感じた。
「...ふむ、こんなものか」
「決まったんですか?」
「うむ、そうじゃな。初期段階とかなり変わるが、まぁいいじゃろ」
「それで、これからどうするんですか?」
ウォロの言葉にマルスタは一つ頷く。
「まずは、魔力操作を完璧にしようかの」
「魔力操作ですか」
「そうじゃ。それでは―――」
「爺さーん!」
早速始めようとした二人を止めたのは、グレンの声だった。聞こえた方に目を向ければ、手を振って走るグレンと、その後ろを小走りに駆けてくるミラシータの姿があった。
「はぁ...はぁ...」
「グレン、どうした?」
「...飯の時間だっ!」
「......はっ?」
グレンの慌てように問いかけたウォロは、彼の言葉に固まった。マルスタは苦笑を浮かべながら言う。
「確かに昼飯時じゃが。そこまで焦ることかのう」
「あたりめぇじゃねえか爺さん。今までずっとミラシータの魔法をずっと斬ってたんだぞ。あの量はないぜ....」
「おかげさまで精霊魔法の扱いが上達しました。これからも、よろしくお願いしますね」
肩を落としたグレンは、可憐な笑みで爆弾(小さな)を落としてくるミラシータに曖昧な笑みを返す。二人の中が深まっていることに満足したのか、マルスタは何度も頷いている。
「まぁ頑張れよ」
「うぅ...くそぅ」
ウォロの言葉で完全に諦めたのか、グレンはがっくりと首を落とした。
「さて、ひとまずお昼としようかの」
「はい。先に行って準備してまいります」
「そうですね。息抜きにも」
「めしぃ...」
一行は、母屋へと足を向けるのだった。
***
「ふぅーー、食った食った」
「すごい食べっぷりだな、そんなに疲れる物なのか」
「お前も一度やってみろよ。絶対追いつけないって」
時刻は昼下がり。昼食を食べ終わった一行は、暫しの休息を取っていた。
「私はそんなに多くしていないつもりですが?」
「何言ってんだミラシータ。あれはどう考えてもおかしいって」
「ふぅーん。じゃ、俺も後でしてみようかな」
「ウォロさんもですか?分かりました」
「...む」
談笑していた三人は、声に反応してマルスタの方を見る。少し仮眠を取っていたマルスタは、玄関の方を凝視していた。気になったウォロは、理由を聞こうとして固まる。
「ウォロ?どうしたんだ」
「...誰かいる」
「うむ。この気配は彼女らじゃの。ミラシータ、通してあげなさい」
「わ、分かりました」
いまだに良く分かっていないミラシータは、戸惑いながらも玄関へと向かう。そして、数秒経って伴って来たのは、
「昨日ぶりー。元気してたー?」
「お邪魔しますね」
「こ、こんにちは...」
猫人族で"森の猫番人"の一員であるケシーと、その母親のアルシア、そして初めて会うケシーより少し幼い男の子だった。
「よく来たのう。今日はどうしたのじゃ?」
「ええ、それが...」
「おにぃちゃーん!」
「うぐっ!」
マルスタの問いかけにアルシアが答えようとしたが、それを遮るようにウォロのくぐもった呻き声が響いた。
「だ、大丈夫か...」
「なんとかな」
「ねえねえおにぃちゃん。ボクとしょーぶして!」
「勝負?」
「ほらケシーちゃん。それは後でよ」
「はぁーい」
ケシーは母の言葉でウォロの上から降りる。ゆっくりと起き上がったウォロは頭を掻きながらアルシアに目を向ける。
「ごめんなさいね。この子がどうしてもというから」
「俺は別にいいですけど。それで話とは?」
「ああ...マルスタさん、この子をお願いしたいんです」
「ふむ。新しい"森の猫番人"かね」
「ええ、そうです」
アルシアは男の子をマルスタの前に座らせ、その横に腰かける。
「ほら、自己紹介は?」
「ぼ、僕はコリョウです。お、お願いします...」
「ふむ...」
俯き加減でコリョウと名乗った少年をじっと見据えるマルスタ。どうやら固有特性〔天照瞳〕で能力を視ているようだ。
「〔虎獣化〕か」
「うぅっ」
「大丈夫よ。この方も、みんなも、貴方を見捨てたりしないわ」
「それってなんだ?」
話を聞いていたグレンが、聞きなれない単語に首を傾げる。その疑問に答えたのは、静かに座っていたミラシータだった。
「〔虎獣化〕というのは特性の一つです。猫人族に稀に持っている子が生まれるという種族特性ですが、発動後の凶暴化がひどい故に忌み嫌われています。この能力を持って生まれた子は"忌み子"と呼ばれ、最悪殺されることもあるようです」
「他の集落に行っていた方が、帰り際に捨てられたこの子を見つけたそうです。衰弱していたこの子を見捨てることがどうしても出来ず、連れ帰ってきたようです」
「ふむ。そうか...」
マルスタは、無機質な目でコリョウをじっと見据える。一瞬ビクッとなった彼も、マルスタの目をじいっと見つめ返す。音一つ立てられない空気がその場を支配して数秒。マルスタの右手が伸び、コリョウの小さな頭をポンポンと叩く。そして、慈しむようにゆっくりと撫でる。
「こんなにも小さいのに、辛い思いをしたのう。じゃがこの世界を憎むでないぞ。この世界の広さを、豊かさを教えてやるからのう」
「...ありがとう。おじいちゃん?」
「はっはっは。それでいい」
「おじいちゃん、よろしく!」
「うむ」
今までずっと俯いていたコリョウに笑顔の花が咲く。マルスタは微笑みながら頷く。まさに孫と祖父の絵面だ。
「...さて、そろそろ外へ―――」
「しょーぶ!」
「ぐへっ!」
当分の間現実に戻ってこなさそうなマルスタを見て、自主練でもするかと腰を上げるウォロ。そこに、砲弾の様に突撃してきたのはケシーだ。腹部に直撃し、変な声が出たのは仕方がない。
「おにぃちゃん、ボクとしょーぶ!」
「すっかり忘れてた...」
「してくれないの...?」
「いや、しますとも」
「やったー!早く行こー!」
「おう...ってちょまっ、はやっ!」
ケシーに連れ去られ庭へ直行とする二人の姿に、現実に残っているグレンとアルシア、ミラシータは苦笑気味だ。
「なんであんなに好かれてんだか」
「ほんとですね。では、私はこれで失礼します」
「あ、お送りします」
アルシアは、「ケシーをお願いね」と残してその場を去った。グレンは、ちびっ子が2人増えて賑やかになった神殿で、自分の成長に思いを馳せるのだった。
今回は、また新しい登場人物、コリョウ君が登場しました。膨れ上がっていく人数の多さに若干頬が引きつっています。どうしましょうか(特に気にしてませんが)。
さて、次回の投稿ですが、正直いつになるか分かりません。早くて6月下旬、遅くなれば夏休み入ってから、という事もあり得そうです。
ですが、皆さまなら気長に待っていただけると信じて、勉強の方に専念したいと思います。
なので皆様、応援(小説も勉強も)どうかよろしくお願いいたします




