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現実は色々と残酷です

「それにしても美味しかったですね」


「だろ?あそこの市場は買い食いするには最高なんだよ」


腹が減っては戦が出来ないを建前に二人して目にしたものを買い占めて馬車に戻ってきた二人は向かいあって食事を終えて嘆息する。ちなみにしっかりと野宿を見越して携帯食を買い込んで荷台に放り込んである。腹を満たしても二人はすぐに出立はせずにいた。


「んで、レイが言ってた距離は砦から竜を使った時の最短距離な」


馴染みの店の横に止めた幌馬車の中、ユークリッドと向かいあったアルフレットは食料の買い出しがてら買ってきた簡易な地図を相手の前に広げる。広げられた簡易な地図を前にユークリッドは重々しく頷く。


-異世界地図-


それは本当に現代社会の地図があれば世界の勢力図が書き変わるのではないかと言わんばかりに簡素なもの。尺数も分からなければ川と道が拙いながらに書かれている程度。スマホもなければパソコンもない。もちろん“オッケー、グー●ル”と叫んでも道なんて出てこないし、教えてくれない。迷わずに旅をするために必要なのは記憶力と方向感覚。間違えたら即遭難。時たま、腐り落ちている標識もあるので気を付けたい所である。


「砦がここだとすると西に直線距離で二十キロだとこの辺りですか?」


広げられた地図から大体の目測をつけたユークリッドはとある場所を指でなぞる。


「ああ。この前、お前が名付けたキン●ギドラ事件の場所とはおおよそ正反対だな」


ユークリッドが与えられた情報を基に指で指し示した場所にアルフレットは自虐的に笑いながら頷く。


「何にもない場所なんだよ。エルバート公国の穀倉地帯なんて言われてるが干ばつが起きるとすぐに家族を身売りしないと家が食っていけなくなる」


小さい頃、腹いっぱいに食べた記憶はない。12才になったらすぐに家を出された。僅かなお金を握りしめて、騎士団の試験を受けに向かったのはいい思い出だ。竜騎士の素質があったのでなんとか今生きていくだけの金は稼げている。自分の上の姉が二人。干ばつにより税を納められなくなった家族を養うために娼館に売られた。


「ノワールの領主は?」


「たしか魔術師団のお偉いさんで領地にはほぼいない」


「では代行が?」


「国一の穀倉地帯と言われてても他の国と違って自分家が食ってくのに必死な量しかとれないしな」


ユークリッドが眉を潜めるのにアルフレットは薄く笑いながらも肩を竦める。


「だから、この村に行くならこのひとつ前の街道筋で馬車を預けた方がいい」


「どうしてですか?」


正確な距離は分からないがノワールに馬車で向かうのは勧めないと肩を竦める相手にユークリッドは真顔で問いかける。

その質問に更にアルフレットは酷薄に笑う。


「ノワールに馬車が来るのは税の徴収か、税を払えなくなった家の娘を買いに来た奴隷商人だからさ」


アルフレットの告げた衝撃の一言にユークリッドは目を見開く。


「それは………………」


ユークリッドが言葉を詰まらせる中、アルフレットはニッと笑う。


「それが現実なんだよ」


何でもないように告げられる言葉の重さが現実の生々しさを物語っていた。





部下二人が顔を付き合わせて今後の予定をすり合わせていたそんな頃………。第5竜騎士団団長レイ・アルフォードは眉間に皺を寄せながら昼食をとっていた。周囲が騒がしくても淡々と机の上に広げた紙を睨み、ただ思案する。


“どうするべきか………”


朝はまったくと言っていいほど魔術師団にも騎士団の面々にも混じる事が出来なかった。直面した予想外の事態を打開すべく問題点を書き出すために食事の傍ら、ずっと解決策を考えていたのだ。悩みつつもレイは傾げていた首を戻すと紙に文字を書く。


-いかに若者に混じるか-


アルフレットに見られたら爆笑される事請け負いの悩みであるが今、真剣に自分は悩んでいる。もちろん自分の年齢は分かる。もちろんそれが若者の域に入る事も。だからこそ、ユークリッドから部署を同じ部屋で仕事をさせるのはどうかという提案を受けた時、いけるかもしれないと思った。が、いざ彼らと仕事をしていると自分がいかに若者らしくないかという事実に気付いてしまったのだ。今の状態ではただ同じ場所に居るだけで終わってしまう。これは由々しき事態だ。名誉のために言わせて貰えるなら決して誰にも話しかけられなくて寂しかった訳ではない。


“若者らしく………”


まだ17歳の青年らしからぬ悩みを抱えたレイは更に眉間の皺を深くする。是非昼からは彼らと会話するきっかけを作りたい。若者の興味のある話はなんだろうか。


「隊長~、眉間に皺寄せてどうしたんすか?」


「ん?」


その声に再び眉間に皺を寄せて紙を睨みつけていたレイは顔を上げる。そこには22歳という年齢のまだ若者枠に入る第3隊隊長オルソ・エフォールが自分を驚いた表情で見下ろしている。その姿を認めたレイは即座に命令を下す。


「オルソ。今すぐ、そこに座れ」


朝の不名誉を拭いさるべく、レイは若者の代表を捕獲したのだった。

いつもお読み頂きましてありがとうございます。誤字・脱字がありましたら申し訳ありません。リアルが忙しくて更新までに間が空きまして申し訳ありませんでした。


この1週間、巻き寿司三昧でした。さすがに三食巻き寿司はいらないですね(笑)


少しでも楽しんで頂ければ幸いです


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