selection.04 イニフィニット・ポシビリティ・オブ・アヒルちゃん
「うわぁ……」
ダンジョンから帰ってきたラグラとミルが見つけたのは、超一級品白虹石の床で、安らかな笑顔を浮かべ横たわる、シチューまみれの少女の姿だった。
少女の名はフィリシス・アジャストメント。脳の記憶容量を割くには値しない名前だと思ってはいるのだが、そのエキセントリックな生き様は嫌でも刻まれてしまっている。お掃除ゴーレムの思考アルゴリズムが生命体をゴミと認識することはないため、倒れ込んだ彼女の周囲だけが、綺麗になっていた。必死の努力を重ね、落とし穴から這い出ることに成功したのだろう。笑みはどこか満ち足りたもので、偉業を成し遂げた人間によく見られる、爽やかな達成感が浮かび上がっていた。
正直どうでも良い。
本日のダンジョン探索も、大した成果は上げられなかった。ラグラとしては、当然良い気分ではない。良い気分ではないところに、帰ってきたら例の少女が転がっていたのだから、なおさら良い気分ではなかった。
「ミル、この女をつまみ出せ!」
ラグラはそう言った。
「給与の発生しているおまえの時間と、俺への奉仕に使われるべきおまえの手をこのようなことに割くのは不愉快甚だしいが、この女をこれ以上城に居座らせておくことの方が不愉快だ!」
「かしこまりました、坊ちゃま」
「気持ちよく寝ているようなので起こさんようにな!」
ラグラはそのようにミルに命じ、自身はアヒルちゃんの厳選作業を再開するべく準備を始めた。
出発前は、結局ひとつも合格品を探し出すことはできなかった。せめて、1日1個は、超最高級アヒルちゃんのストックを増やしておきたいところでは、あるのだが……。
「フッ、待っていたわよ! 厳選王子!!」
「ぎゃあああああっ! 起きたああああああっ!」
むくり、と起き上がるフィリシスの声に、飛び上がるラグラ。そのまま地べたを這うようにしてミルの足元までたどり着き、エプロンスカートから覗く眩しい生脚にがっしとしがみつくのであった。ミルはさすがのプロフェッショナルで、ぴくりとも動じる気配を見せない。
「ミル、早急に処分しろ! この女を永遠の眠りにつかせるんだ!」
「ま、待ちなさいよ! 私を殺すって言うの!?」
「知ったことか! 人の家に勝手に不法侵入した挙句、ステンドグラスをぶち破りシチューを台無しにしてなお命乞いをするのか!? 生き汚い女め! 今すぐ帰れば命だけは見逃してやる! この俺の優雅な午後のひと時を邪魔するんじゃない!!」
『ぐわっぐわっ』
厳選途中のアヒルちゃんを掴みながら叫ぶラグラである。ミルは彼の言葉を忠実に実行するべく動き出すが、フィリシスは構わずびしりと人差し指をラグラに突きつけた。
「私の話を聞きなさい、厳選王子! あなたにも決して悪い話ではないはずよ!」
「おまえの持ってきた話がどうであれ、おまえ自身からすでに面倒くさい感じが漂ってきているのだ! 断固として断る!」
近づいてくるフィリシスから逃げるようにして、ラグラはミルの生脚から遠のく。
「私がどんな苦労を重ねてここに来たと思っているの!?」
「相手の都合も省みず自分の身の上話を始める人間にロクな奴はいないぞ! ミルウウウ! 早くしろ、ミルウウウウッ!!」
「かしこまりました、坊ちゃま」
ラグラの言葉を受け、ミルが一歩前に出る。ミルの周りをぐるぐると回っての追いかけっこは、ラグラとフィリシスがバターになる前になんとか中断と相成った。
「私はここを動かないわ! 何があっても動かないわ! 絶対に動かないわ! 動かないんだから!!」
フィリシスが腰に手を当てたまま喚き散らしている。ミルはそのままどこかから取り出したロープでフィリシスをふん縛ると、荷車に載せてゴトゴトと運んでいった。
「ちょっと! 動かないって言ってるでしょ! 私は! ここから! うご……」
ばたん! と超一級品の防音扉が閉まったので、ラグラはそれ以上フィリシスのクソやかましい喚き声を聞かずに済んだ。アヒルちゃんを片手に、ようやく勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「勝ったな……」
ようやくあの小うるさい女から解放される。厳選城モット・セレクションに、ラグラの愛する静寂が訪れたのだ。いつも通りのおだやかな厳選ライフが戻ってくると思えば、満ち足りた表情でアヒルちゃんの厳選を再開できる。
それぞれにわずかな個体差があるアヒルちゃんの鳴き声に包まれながら、ラグラは至福の時間を迎えることにした。
はずで、あったのだが……、
「ミル……、」
ややげっそりとした顔で食卓につきながら、ラグラはメイドの名を呼んだ。
厳選された超一級品のメイドは、いつもと全く変わらない落ち着いた態度で脇に控えている。ミルはラグラの口元に細かく切り分けたベイクドポテトを運びつつ、答える。
「はい、なんでしょう。坊ちゃま」
「あの女が俺の城の前に居座って今日で何日だ……」
「ちょうど10日になります」
「そうか……意外と経ってないな……」
あの女、というのは、
当然、フィリシス・アジャストメントのことである。
ミルの手によって城の外に放り出されたフィリシスは、そのまま城の前に野宿を始めた。ラグラは面倒臭く思いながらも、ミルにもう少し遠くへ捨ててくるように言い、それに従ったミルはフィリシスを木箱に詰めて遥か遠方の河原へと捨ててきた。が、その日の晩には、彼女はもう城の前まで戻ってきてしまったのだ。
驚くべき帰巣本能であると褒めてやりたいところだが、よくよく考えれば、いや、考えなくとも、フィリシスの帰るべき巣はこの城ではない。この城であってはならない。
それでも、厳選城モット・セレクションは、無人の荒野であるメノスティモ平原のド真ん中に存在する。食料もなく、雨風をしのげる大岩や大木といったものも見当たらない。数日もたてば、根をあげて帰るか野たれ死ぬだろうと、そう踏んでいたのだ。
いたのだが、
「もう我慢できん!!」
口の中に含んだベイクドポテトを噴出しながら、厳選王子ラグラは行儀悪く叫んだ。
「ミル、城の倉庫で眠っている砲撃ゴーレムをすべてかり出せ!」
「かしこまりました。少しお時間をいただきます。よろしいですか?」
「構わん! もう全て吹き飛ばしてやる!」
ミルは厳選されたナプキンで、そっとラグラの口元を拭い、その後恭しく一礼した。
「かしこまりました。では準備いたします」
厳選王グラバリタが、その生涯でもっとも多く厳選したものは、ゴーレムであったと言われる。グラバリタは身の回りの世話を、ほとんどゴーレムに任せるべく、超一級品のゴーレムにそれぞれ適切な調整を行った。それが、今も厳選城の中で無数に稼働する、物言わぬ使用人達だ。
砲撃ゴーレムとは、厳選漏れしたゴーレムの中で、攻撃性能の高かった個体にグラバリタが調整を施した、厳選城の予備戦力なのである。基本、予備戦力なので、倉庫から出されることはほとんどないが、それでも一国が運用する大規模砲撃魔術師団に匹敵、あるいは凌駕するだけの火力を有する。
なお、ラグラは幼少期に一度倉庫に迷い込んで、一週間ほど発見されなかったことがトラウマになっているので、倉庫からものを出すときは全てミルにやらせている。
数分の後、ミルが大量の砲撃ゴーレムを引き連れてラグラのもとへやってくる。彼は満足げに頷くと、一人のメイドとたくさんのゴーレムを従えたまま、城の外へと向かった。
「フィリシス・アジャストメント! 貴様は今まで俺の心ある忠告を再三無視しってうわぁ!?」
高らかな口上は、ラグラ自身の口によって遮られる。城を出た厳選王子は、思わず仰け反ってしまったのだ。
「なんだこの宮殿は! 昨日までこんなのあったか!?」
ラグラの言葉通り、城の前には荘厳な宮殿がそびえていた。カローラ式の準先進型伝統建築。左右に広く伸びたそれは、持ち合わせる神聖な威厳とともに強い圧迫感を生み出す。帝国の北西部の一部にのみ見られる、美しい建築様式であると言えた。
ともすれば、この宮殿自体が一級品だ。ラグラは思わず見とれそうになったが、改めて首を横に振った。
「えぇい、フィリシスめ! この俺の城の前に余計なものを作りおって!」
「幻覚の類ではないようです」
「そもそもこれだけの建築素材をどこで集めた!? このメノスティモ平原には薬草にもならないようなゴミ雑草しか生えておらんぞ!」
苛立ちもあらわに叫んでみるものの、緑色の宮殿からフィリシスの声は聞こえない。
「ええい、仕方ない、ミル! 撃て!」
ラグラは腕を組んだまま、顎だけで指し示す。
「よろしいのですか?」
「構わん! すべて燃やしてやれ! 灰になるまでな!」
ミルは恭しく一礼すると、城の前にずらりと並べられた砲撃ゴーレム達へと指示をくだした。ラグラが目を閉じ耳を塞いで、ミルの後ろに隠れるようにしてしゃがみこんだ直後
ゴーレム達が抱える砲口が一斉に火を吹く。
轟音がすべてを掻き消す。ラグラの『フハハハハハ! これがセレクション家の誇るラグナロック・フレイムだ! 存分に味わうがいい!』という叫びも、ラグラの喉を痛めるだけで他の誰にも届かない。
かくて砲撃ゴーレム部隊による十字砲火はたっぷり20分にも及び、厳選城モット・セレクション前にそびえていた謎の宮殿は、灰燼へと帰した。
「フハハハハハハ! これで俺の生活に安寧が訪れた! あの女の狂気に満ちた強襲に怯えることもないぞ! フハハハハハハハハ!!」
ラグラは高笑いをあげながら、城の中へと戻っていく。ゴーレム達は、いまだに硝煙の立ち昇る大砲を抱えながら、主の凱旋を見送るのであった。
が、
「なんで1日で元通りになっているんだよおおおおおお!!」
翌朝、『あの女も宮殿ごと焼き払ったことだし実に清々しい朝だ! あまりにも清々しいので散歩してこよう!』と意気込み城を出たラグラが真っ先に見たものは、昨日とまったく変わらずにそびえる、豪華な緑色の建築物であった。
「許さん! 許さんぞフィリシス! よくもあの猛火の中を生き残ったと褒めてやりたいところだが、もう許さん! じわじわとなぶり殺しにしてやる! ミルがな!」
「ご命令とあらば」
恭しく傅くミルの後ろで、掃除ゴーレム達が肩をすくめていた。
「カローラ式準先進型伝統建築か! この様式の建築物は、まず玄関先のエントランスが広くとられているのが特徴でな! ついて来いミル!」
「坊ちゃま、あまり急がれると階段に躓かれます」
「ぐわあああああああああああああああ」
城に備えられた5段の階段を転げ落ち、血まみれになるラグラ。ミルの治癒術式が傷を塞ぐのに2秒、泣きじゃくるラグラをなだめるのに20分かかった。二人は改めてフィリシスが建てたと思しき宮殿へと突入する。
掃除ゴーレムはその間に、城の玄関先の掃除を完全に終えていた。
「カローラ式準先進型伝統建築か! この様式の建築物は、まず玄関先のエンランスが広くとられているのが特徴でな! 見てみろミル……うわぁ、広ッ!?」
扉を開けたラグラは、そのまま素っ頓狂な声をあげる。
確かにエントランスホールは広かった。面積の割に調度品がひとつもないのが、その広さに拍車をかけていると言って良いだろう。エントランスの床には、小さな寝袋に包まった少女が転がっており、その枕元には小型魔導コンロと鍋、そして綺麗に洗われた食器が重ねられている。
「帰るぞミル! 見栄っ張りが豪華な宮殿を買ったは良いが持ち金が尽きて中で質素な生活を送っている光景を目にしたようで居た堪れない気持ちになった!」
「フッ、よく来たわね! 厳選王子!」
「起きてんのかよ!!」
ごろん、と寝袋に包まれたまま、フィリシスが寝返りをうった。少女の顔はだいぶやつれているが、不敵な笑みは相変わらずだ。
「待っていたのよ! ぜひゆっくりしていくといいわ!」
「寝袋に包まれたまま転がってくるのが客を迎える態度なのか!? やめろ気持ち悪い! 俺の周りをぐるぐるまわるな! 何の儀式だこれは!」
フィリシスは、ごそごそと寝袋の中から這い出ると、いつものように(そう思える程深い付き合いになりつつあることを知って、ラグラは恐怖した)胸を張る。
「客人はもてなすわ!」
「偉そうにのたまっているがここは俺の私有地の範囲だからな!」
「どうせ朝ごはんはまだなんでしょう! 奢るわ!」
「ミル、意思疎通の極めて困難なこの超絶自信過剰生命体は果たして俺と同じ生き物なのか?」
「わかりかねます」
フィリシスは鍋を魔導コンロにかけ、何やら調理の真似事をはじめた。このメノスティモ平原で果たしてどれだけの食材が手に入るのか、甚だ疑問だったのだが、しばらくもしない内に、空きっ腹を刺激するかぐわしい芳香が鼻腔へと運ばれてくる。
「どういうことだ……。この平原で手に入るのは雑草くらいなものだぞ……」
「できたわ」
困惑するラグラの前にトレーが運ばれてくる。
「ほう、ステーキか……! なぜ朝っぱらからこんな重いものを食わせるのかはわからんが、見たところ悪くはないな! 無論、俺の家で出るものには劣るが! ミル、切り分けろ!」
「かしこまりました、坊ちゃま」
床に置かれたステーキ皿に向けて、ミルが傅く。その間にも、フィリシスは次々と料理を運んできた。厳選王子の口やかましい抗議の声を、止めるだけの料理ではあったのだ。
切り分けたステーキを、ミルがラグラの口元へと運ぶ。
「ほう、美味いな! この歯応えと溢れ出る汁がたまらん! フィリシス、これはなんだ!?」
「雑草のステーキよ」
「ブフーッ!!」
ラグラの口から吐き出されたそれは、空中に美しい緑色の軌跡を描く。宮殿の床へべちゃっと落下したそれは、よく見てみれば、確かにメノスティモ平原のどこにでも生えているような、雑草であった。
「ざ、雑草だと……!? 貴様、この俺に雑草を……」
「これが雑草のサラダ、雑草の佃煮、雑草のスープ、雑草ご飯、そして雑草のアイスソルベよ」
「雑草ばっかりじゃないか! 貴様は俺を芋虫かなんかだと思っているのか!?」
「仕方ないじゃない! それしか材料がないんだから! この宮殿も雑草でできているのよ!」
「何でも無駄にはできない高山帯の遊牧民か!? 仮にも文明人を名乗るならもっと文化的な材料を用意しろ! そうか雑草でできているのか! 通りで毒々しいまでの緑色をしていると思った!!」
はぁ、はぁ、と肩で息をするラグラ。過呼吸を起こしかねない勢いであったのだが、ミルがいつの間にか手にしていたアヒルちゃんを横からそっと差し出すと、ラグラはそれをしばらく眺めてようやく心を落ち着けたようだった。『ぐわっぐわっ』という癒しの音色が、雑草宮殿へと響き渡る。
その様子を眺め、フィリシスは頷いた。
「厳選王子、私が何故ここにきたのか……。それはわかって貰えたと思うわ」
「この流れで本気でそう思っているなら、俺は明日からフィリシス語を通訳できる人間を厳選しなければならんな……」
「見ての通り、私は一億万年に一人と言われた天才美少女……。しかし、そんな私にも欠点があるの」
「周知の事実をさも当然のように語るな」
「そう、材料の厳選が下手くそなことよ!!」
『ぐわっぐわっ』
アヒルちゃんと戯れるラグラに対し、フィリシスは拳を握りしめてくわっと力説する。
「私はあらゆる調整と製作のプロ! 素材を活かすことにかけて、私の右に出る者はいないわ! それは、あらゆるものを厳選するあなたと組むことで、真価を発揮することができるのよ! 厳選王子、私と組む気はない!?」
「ない」
「なんですって!?」
どーん、と胸を張るフィリシスに向ける、ラグラの視線は冷たかった。
「待って待って! 私は一億万年に一人の天才美少女よ! あなたに有益な時間を提供することを約束するわ! あなたの人生に明るい未来が開けるの! 見えない!? あなたの明日はどどめ色よ!」
「おまえがいなくとも俺の人生は明るいし俺の明日はどどめ色だ! ミル、砲撃ゴーレムを連れて来い! この雑草御殿を根絶してやる!」
「待って待って! お願いだから待って! 三分間のアピールタイムをちょうだい! それで最後! きっぱりさっぱりすっぱり諦めるわ!」
「貴様に三分間くれてやるくらいならアヒルちゃんを三匹厳選するわ!」
「そう、そのアヒルちゃんよ!」
ラグラの足元にすがりつくフィリシス。その言葉に、ラグラはぴたりと動きを止めた。
「昨日、宮殿を焼き払ったゴーレムを見たわ。あれは本来、家事手伝い用に厳選されたゴーレムなのね。でも、わずかに個体能力に無駄があったから、厳選漏れした……。その中で、戦闘能力方面への〝無駄〟が高かった個体に、拠点防衛用の調整教育を施した。そうでしょう!?」
「おっしゃる通りでございます」
ミルが微動だにせずに頷く。
「厳選とは、無駄を切り捨てることだけではないわ! その無駄から、新たなる可能性
芽を育てることもできるのよ! あなたが厳選したアヒルちゃん、その中から何匹の子
厳選漏れしたの!? その子たち全てに、新しい可能性を見つけてあげることができるわ! お風呂に浮かべるだけじゃない、あなたの生活がアヒル色に染まるのよ! アヒルちゃんに込められた無限の可能性よ! インフィニット・ポシビリティ・オブ・アヒルちゃんよ!」
「…………」
ラグラは沈黙していた。彼にとって厳選漏れとはすべてゴミである。厳選王子ラグジュアリーの目に適ったものこそが真の一級品であり、それ以外に存在価値はない。だが、アヒルちゃんは。アヒルちゃんだけは。
声がわずかに低かっただけに、厳選漏れしてしまったアヒルちゃん。
目つきがほんの少し凛々しかっただけに、厳選漏れしてしまったアヒルちゃん。
お湯に浮かべた時の浮力が足りなかったばかりに、厳選漏れしてしまったアヒルちゃん。
それらすべてが、ラグラにとっては確かにキュートなアヒルちゃん達だった。
彼らを、救うことができる。新しい可能性を見つけてあげられる。かもしれない。
そう言われたとき、まさしくラグラは揺れていたのだ
「……できるんだな?」
ラグラは、長い長い苦悩の後に、そう尋ねた。
「できるわ。私は、一億万年に一人の、天才美少女よ」
フィリシスは、不敵な笑みとともに頷く。
「良いだろう。厳選した先にあるもののことなど考えたこともなかった。これから考えることもないだろうと思っていたが……貴様をこの厳選城モット・セレクションに置いてやることを許可する」
「ありがとう、厳選王子」
「フン」
雑草宮殿の中で、二人は熱い握手をかわした。
これこそがまさに、後に世界のあらゆるものを厳選する厳選皇帝ラグラと、神の手を持つと呼ばれた魔導調整師フィリシスの、最初の出会いであった。
「だがまずは貴様が壊したものの弁償をしてもらう」
「えっ、あれ、こんなに!? ちょ、ちょっと払えないわ!!」
「心配するな借金だ! アヒルちゃん一匹の調整につき5G減額してやる。せいぜい頑張るんだな! フハハハハハハハハ!」
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タイトル削ってスマートにしました。