今度はもっといいのを作ってね
私を「内蔵」したガイノイド・サユリだけを目当てに研究会のブースにやってくる見物客はそこそこ来てくれた。
この時、サークルのメンバーの一人が、コミケだったら同人誌を購入した特典としてコスプレした売り子を撮影出来るので、ここもそうすればよかったのにと思った。誰もサユリ以外の出品物や販売物、展示品に興味はなかったからだ。
それで仕方なく「改良資金カンパ」として、どこからか持ってきたタライを用意した。すると小銭ばかりだが少しばかりのお金が入っていった。私は見世物なのかと思うと少し悲しかったが、今はマスクの下に顔が隠れているので、誰も気付いてくれなかった。
私はサユリになりきっていたが、中に人間が入っているのは見る人が見れば明白だった。その度にメンバーの誰かが「中の人はいません! 」という主張ばかりしていた。
イベントが終わり、ようやくサユリのマスクを外すことが出来た。私の顔は真っ赤になって、まるで長時間入浴したような状態だった。研究会のメンバーはみんな心配してくれたけど、ランナーズハイというか私は大変満足だった。一日、ガイノイドとして活動できたからだ。そこで私は次のように言った。
「ガイノイドになった気分は最高だったよ! 本当によかったわ。でもずっとこの姿にいれるように、今度はもっといいのを作ってね! その時は私が参加するからね」
もし次に、長時間着用できるガイノイドスーツを兄が作ってくれるのなら、私は喜んで被験者になりたい。
- 了 -
実験的に書いた作品でしたが、ほとんど放置状態にしていたので、この度完成させます。文章量自体は短編と同じぐらいでしたのですいませんでした。
作品も初期作なので、稚拙な面もあり、今度作る時はもっといいものにしたいと思います。最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございました。
2015/04/21 ジャン記