サユリとして稼動しよう
ついに学園祭でサユリになる日がやってきた。本当なら細かい調整をしないといけないのに、私が色々と用事があったので行くことが出来なかった。ぶっつけ本番でサユリになるというわけだ。
兄に晩はあまり食事をせずに来てくれといわれ不審に思っていたけど、来てみてトイレにあまり行かないでくれというのだ! そうかわり大人用オムツを履いてくれというのだ!
あたしは、年頃の女よ! どうしてオムツしなければいけないのよ! 」
猛抗議をしたが、私は早く機ぐるみを着たかったので、追加の「報酬」として好きな映画の入場券二枚をつけてもらうことにした。その後、顔の部分だけ露出するようになる全身タイツ、所謂モジモジ君の衣装を渡された。この衣装に着替えるため私は女子更衣室にいった。
「それにしたって、なんてアナログなんだろう。これがアニメだったら一瞬で着れたりするだろうけど。そんな時代が来たらいいのに」
そんな事を思いながら戻ると私の身体に機ぐるみをつける作業が始まった。私の身体は機ぐるみのなかに埋め込まれてしまった。徐々に拘束感が増していくとともにガイノイドの姿になった。
マスクを被される事になった。ここからは顎が固定されるので声が出せなくなり会話が出来なくなるので、最後に「こうやってジェスチャーしたら伝えたい事があるので紙とシャーペンを用意してね」と筆談したい時はさせてねと言った。そして私はサユリになった。
学園祭が始まったが、兄のロボット研究会は注目されていない不人気サークルなので見物客は皆無に等しかった。そこで顧問、とはいっても名目上の榊原講師と実行委員会の許可を受けて、私ことサユリを会場内を歩くことになった。「内臓」の私からすれば、機ぐるみに拘束され動くのもままならないのに辛かったがしかたなかった。
すると注目をすごく集め、私の周りには多くの見物客が記念撮影してくれと殺到していた。素顔のままですらここまで集まる事はないだろうと思うほどだった。
その一方で前に進む事が困難になったので、私は筆談させてくれるようにとポーズをした。私は「熱い! 撮影会を開くなら陽の当たらないところでして頂戴!」とだけ書いた。
「みなさん、ここは集まりすぎたのでこれから校舎裏の駐車場に行きましょう! お願いします」
兄の先輩は、そういって撮影希望者を引き連れて駐車場にいった。ここも空いているスペースはなかったが、とりあえず校舎の壁をバックにして撮影会をした。しかし、ここも多くの人が集まりすぎたので実行委員会からのクレームで元の展示会場にへと追いやられた。
こうして研究会の会場に来客を呼び込むことに成功したが、私は休みなく対応していたが、拘束感に加え酷い疲労感と乾きを感じていた。途中で「メンテナンス」といって隠れ場所で私はスポーツドリンクを飲ませてくれたが、大変な汗をかいていることが判った。
この時、口元が開けられると外の冷たい空気が入るのが、心地よかった。