カズミ、これが着たいの!
カズミには人には言えない変身願望があった。それは機械の身体になることだ。周囲からはカワイイ美少女との評価もされ同級生の男子からは憧れの眼差しを送られ、あの馬鹿兄貴すら「お前が実の妹ではなく性格を知らなかったら彼女にしたいほどカワイイ」といわれているが、その自分ではない異形の姿になりたかった。
しかも生身の人間を機械の体に改造したサイボーグではなく、最初から機械の身体を作られたロボットないし女性らしいアンドロイドの身体になりたいと思っていた。一部のSFマニアから女性アンドロイドは「ガイノイド」という言い方をするが、そんなことはどうでもよかった。カズミがなりたかったのはメタリックな金属に覆われ、かつ女性らしいボディラインを持つアンドロイドだ。
そのイメージするアンドロイドは、以前テレビで紹介された20世紀初頭のドイツで製作された映画「メトロポリス」に登場した「マリア」だった。彼女のようにメタリックな質感と人間にも変身する能力、そして民衆を先導する能力に感銘をうけたからだ。
もっとも、自分が機械の身体になるわけではないので、せめて外見だけでも機械のような姿になることで、願望の一部を叶えられるのでは無いかと思い、弘樹の変な提案にのったカズミであった。ここで欲しい洋服を買ってとねだったが、やはり自分の満足するメタリックなアンドロイドの姿に変身してもらえるなら、本当は何もいらなかった。
とりあえずカズミは自分がイメージする「このようなアンドロイドになりたい」というデザイン画を書いた。本当にこれを着たいと思うカズミであった。