TRY-8 林檎(理解者)の話 PART2 side有央
狩人旭を始めて、初めてターゲットが変わった時やった。まだ元凶の事をはっきり、くっきり鮮明に覚えとったせいか、強烈な気分の悪さに襲われた。そして、初めて屋上に逃げた。貯水槽の上に寝っ転がって空をぼーっと見てると息を切らした林檎が屋上に入ってきた。
「はぁ、はぁ、はぁもう…どこにおんねん…有央ーっ有央ーっ!」
「ここにおるで。」貯水槽の上からひょっこり顔を出した俺を見て
「やっと…見つけた。」って笑うたんや。その瞬間、俺は林檎を抱きたいって思うたんや。林檎を抱けば、この気分の悪さが収まるかもしれへんって…。
「林檎俺、気分悪いねん。だから…林檎を抱かせてくれへん?」
「はっ?何っ…ソレ…///」
「林檎を抱けば、この気分の悪さが収まるかもしれないねん。」
「それで、有央が楽になるのなら…。」
「お願い。俺を癒してくれへん…?」
「有央が元気になるなら、有央…私を抱いて…ええよ?」
「ありがとう。大丈夫、優しくするから…。」これが愛のない行為のはじまりやった。
「ごめん…初めてが俺で…辛かったやろ?」俺は行為後、林檎の初めてを奪ってしまった罪悪感に包まれとった。なのに林檎は
「ううん!有央が楽になるならって考えたから何か頑張れたんやで?有央、ありがとう!」って笑って俺にお礼してきたんや。
俺はそんな林檎の優しさに甘えて、自分が不快になると自分のためだけに林檎を抱いてきた。まだ中1の林檎に辛い思いをさせてるかもしれへん。理解者やからって理由をつけて俺の都合だけで、林檎を抱いとる。他の女を抱けば良いものの、他の女じゃダメやった。前に林檎がどうしてもの理由でできなかった時があって他の女を抱いた。やけど、俺の気分の悪さは収まらず、おまけに黒い俺まで出てきた。黒い俺を出すのは、女を捨てる時だけやって決めとるのに、あまりの下手さに黒い俺が出てしもうたんや。俺の感情は林檎にしか制御できへんねん。黒い俺は林檎じゃなきゃ収められないんや。だけど、そのせいで林檎を苦しめとるかもしれへん…。俺は林檎の中に闇を作ってるかもしれへんねん。
俺は林檎の側から離れるべきやろう。でもそれができひん。だって…
-林檎は俺の唯一の理解者やから…。
ふと我に返った俺は、行為後で既に服装を直してくつろいでる林檎に、給食だからと言って教室へ戻した。
…ごめんな林檎。俺、お前から離れられそうにないわ…。