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3.秋路の過去

「ふぅ」

秋路は乗り込んだエレベーターのボタンを押すと安堵の息をつく。すると自然と笑みがこぼれた。

(和泉智光いずみともみつ君か。面白い子だ…)

教えてもらった名前を脳内で繰り返すと、なんだか微笑ましさから自然と笑みがこぼれる。

(あんな、ほわほわしてるのに、夜の営み頑張って我慢します、だもんなぁ。でも、まぁ今日は俺が来て良かった。享子にはちょっと衝撃的すぎるかもな。しばらくは黙っておくか…)

そう心に決めて、エレベーターを降りマンションの外に出ると、急に冷たい風が吹いた。

それが心の中まで通り抜けた気がして、秋路は無性に寂しさを感じた。

それも、あの男の子の真剣な姿を見て、秋路は昔の自分がさらに虚しく思えたからだった。

(あんなに若いのに、すごい…)

そう。秋路は長身で整った男らしい顔立ちの、いわゆる結構なイケメンなのだ。

それに、見た目だけに止まらず、優しく温厚な性格も相俟って、昔から女の子を引き寄せてしまう特性が彼にはあるのだ。

以前の秋路は、見た目ゆえに気がつけば学生時代彼女がいない日は1日としてなかった。

それも、いつも女の子に囲まれてしまうので、彼女がいれば近寄ってくる女の子の数が減るからと、仕方なくそうしていた。

そうやって、多くの女の子に出会ってきたが、結局誰一人として特別になった子はいなかった。付き合っていた子にもなんの思い入れもないのだ。

それでも、女の子を粗野に扱ったことなどないが、結局は自分のための道具にしか思ってない事に気づき、大学を卒業するころにそういうのはすっぱりと止めた。

入社するころには、罪悪感で女の子とどう付き合っていけばいいのかわからなくなって女の子を避けるようになっていた。

そんなとき秋路は、由子と享子に出会った。

この二人は初めから秋路を一人の人として見てくれて、今まで出会った女の子と全く違っていた。そんな二人だから今のように仲良くなれた。

そのおかげで、二人と話すうち秋路の女の子への苦手意識は薄らいでいったのだった。


(自分にもあんな風に愛せる女性が現れるのだろうか…)

そして今、由子の彼氏に一人の女性を愛する姿を見せられて、秋路は途端に不安になってきたのだった。

(家で飲みなおすか…。酔えたためしはないけどな…)

夜道を秋を感じる風に吹かれながら、秋路は最寄の駅へと歩き出すのだった。




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