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冒険者通り十三番!  作者: 鼠色猫/長月達平
第三章  『働くのは大変』
13/21

『持ち込まれた火種その1』


 隣り合って歩くのかどこか気恥ずかしい帰り道は、冒険者通りに辿り着くことで一区切りを迎える。恥ずかしいことを言ったと思っているティファはアルの顔を見れず、アルは未だに先ほどの会話を思い出すだけで鼻水が垂れかけるので無言。


 そんな二人から一歩下がった位置でにやにや見ていたロッテが、二人より先に異変に気づいたのは心の余裕の分だけ当然だったかもしれない。


「ティファ、アル。宿屋がちょいと騒がしいことになってる」


 ロッテがタバコで指し示す先、店の前には確かに人だかりができていた。それも賑やかではなく騒がしいと形容したように、繁盛しているという印象ではない。

 ティファと顔を合わせ、アルは手早くロッテに荷物を返すと店の入り口に駆け込む。集まっている群衆を掻き分け、さらに喧騒の強まる気配にティファが声を上げた。


「何があったの! バルトが癇癪で刀傷沙汰を起こしたとか、プリカが禁制品を使って検挙……まさか! ノエルが宗教裁判にかけられるんじゃ……」


「お前ホントにみんなのこと信頼してる!?」


 店主のティファに野次馬が道を空け、騒ぎの中心へ人波が開く。と、どうやら騒ぎの中心はプリカの店らしく、囲む人の群れの外にバルトとノエルの姿もあった。


「ちょっと、プリカの店で何かあったの?」


「む、ティファと……歩く荷物掛けか」


「歩く荷物掛けって何だよ。お前、荷物掛けが歩いてるとこ見たことあんのかよ」


「クレームという感じではないんですがネ。どうもプリカさん自身を糾弾といいますか、受け答えがプリカさんですので要領を得なくて相手も戸惑ってますヨ」


 手短な説明が済むのと同時、野次馬の雑談を貫く男の怒号が響き渡った。


「とぼけるのもいい加減にしたまえ、エルフの女よ!」


「まあ。とぼけるなんてとんでもありません。本当に見当もつかないんですよ」


 おっとりとしたプリカの物言いだが、激昂している相手には挑発と取られるかもしれない。事実、向き合う男は額に青筋を浮かべると唇を震わせて、


「まだ白を切るというのなら、我輩にも考えが……」


「ちょっとちょっと、タンマ!」


 物騒な台詞とともに懐に手を入れた男の前にアルが割り込む。プリカを背中で庇い、平和的な解決に持ち込む所存だ。


「なんだね、貴様。関係ない荷物掛けは引っ込んでいたまえ!」


「ところが荷物掛けでも無関係でもないんだ。プリカとは共同経営者って仲でね。な?」


「まあ。アルさんお帰りなさい。頼んでいた薬瓶は買ってきていただけましたか?」


「頼むから話の流れについてこいよ。……とまぁ、こういうわけだ」


「どういうわけだね」


 突っ込む男は勢いを削がれたと言いたげに懐に入れていた手を抜いた。その判断に安堵しつつ、男の次なる挙動を警戒したまま観察する。


 ひょろりと背の高い、不健康そうな印象の男だ。落ち窪んだ目とこけた頬が弱々しくもあるが、双眸は爛々と輝きその印象を裏切る。整えられた口髭と紫を基調としたマント付きの、おとぎ話の悪い魔法使いのような服装をしていた。


「プリカじゃ埒が明かないだろうから聞くけど……何用で?」


「え? 代わりに聞いてくれるというのか? 助かる。この娘、話が通じなくてなぁ」


 急に砕けた態度になった。が、背後のプリカの状況を掴んでなさそうな雰囲気を見れば納得だ。庇ったはずのプリカはすでに、アルの背負った荷物から自分の頼んだ物を取り出して自分の店に並べているし。話の通じない状況下で孤独と戦っていたのだろう。


「それで用向きと……あんたの素性は?」


「フ……よくぞ聞いてくれた、ボゥイ」


 いくらかの共感と同情の問いに、男はマントを体に巻きつけ、翻して風を切る。


「我輩の名前はルドー。ダークエルフ狩りのルドーだ!」


 両手を広げてポージングするルドーの姿に、数秒ほど店内が完全な沈黙に包まれる。周囲の硬直した反応をどう思ったのか、ルドーは艶のない前髪をかき上げ、


「決まりすぎて声も出ないか」


 勝ち誇るように言った。さらに静けさを増していく店内中の視線を一身に浴びながら踏ん反り返るルドーに、アルが全員の気持ちを代弁するように指を突きつける。


「なんてハイセンスな名乗り上げなんだ……只者じゃねえッ!」


「んなわけあるかぁっ!」


 拳大の火球がアルとルドーの側頭部に着弾し、あぢゃぢゃぢゃと床を激しく転がる。


「おい、ティファ! いきなり何すんだ、死ぬかと思ったぞ!」


「代表面して間違い発言しないで。それに相手はクレーマーよ。つまり敵、見敵必殺!」


「ま、待て、娘よ。我輩は断じてクレーマーではない」


「口を開けば文句か理不尽要求しか出ないのよ奴らは。だから何か言う前に消し炭に!」


「ちょっ、目が危ないよ、この子! 誰かーっ!」


 恐れおののいて後ずさるルドーを、まさに灼熱の怒気をまとって追い詰めるティファ。野次馬が助けを求める声に一歩下がる中、アルはティファの肩を叩いて前に出る。


「落ち着けって。一応は相手の用件を聞いてからでもいいだろ?」


「無駄よ。どうしたって料理に虫と髪の毛と埃と泥と三軒隣りの店のコボルトの体毛が入ってたとかクレームつけてくるのが向こうの常套手段なんだからっ」


「お前が本当に大変だったのは伝わったから、ノエルか誰かに聞いててもらってくれ」


 ぶつぶつ過去を反芻して瞳の色を失うティファを、カモンカモンと嬉しげなノエルに押し付けて、ようやく件のルドーに向き直る。どうやらルドーは腰が抜けたらしく、小刻みに震える足を酷使して生まれたてみたいに立ち上がったところだ。


「あー、とりあえずうちのオーナーが驚かせて申し訳ない。続きを頼む」


「よ、よかろう。先んじて言っておくが、我輩の目的はクレームではない。ちょっとものを尋ねようとしたところ、きつい糾弾の台詞になってしまっただけなのだ。断じてクレーマーではない。いや、本当だから、信じてオーナー!」


 必死の弁解はアルではなく、まだ焼き殺さんと魔力を高めるティファに向けてだ。アルはわかったわかったと頷いて、それから店の花と会話しているプリカを指で示す。


「で、ルドーさんはプリカに訊きたいことがあったんだが、彼女はそれを知らないと」


「いや、知らぬはずがない。そこなエルフは嘘をついている。故に強硬手段に……いや、クレームじゃないから! 本当だから、オーナーッ!」


「話が進まねえなぁ……」


 辟易としながら呟くと、ルドーは埒が明かないと頭を振って、それから一枚の書状を叩きつけるように近くのテーブルの上に広げた。それは――、


「手配書……?」


「ただの手配書ではない。我輩はダークエルフ狩りのルドー! 標的はただ一つだ」


 ずいと見せつけるように差し出される手配書には、指名手配された罪人の写真と罪状や特徴、加えて数字で示された賞金額――十万ゴールドを超える大物だ。

 だが、その全ての情報の中で一際アルの目を惹いたのは賞金首の写真――それは、


「プリカ……か?」


 手配書の示す人物は今、背後に庇っているプリカと瓜二つの容姿をしていた。

 しかし金糸のような髪は薄紫色で、普段から弓の形を引く目は凶悪につり上がっている。悪辣な色香を放つ人物は、個々のパーツが一緒でもプリカと同一人物とは思えない。


 アルが抱いた感想を顔色から読み取ったのか、ルドーは仕方ないと首を振り、


「そちらのご想像通り、残念ながら我輩の追っているエルフは後ろの女性ではない。だが、この手配書を見れば無関係と白を切るのがナンセンスなのはわかるだろう?」


 確かに。似ているという次元ではない。瓜二つ――プリカがこの表情を浮かべればこうなるだろうという相似性だ。ただ、それがとても想像できないだけであって。

 アルが何も言い返せないでいると、後ろにいたプリカは手配書を覗き込んで「まあ」と驚きを露わにする。その反応を見逃すルドーではない。


「見たまえ。彼女はやはり何かを知っている。この凶悪犯と密接な関係があるのだ」


「いや、わからないだろ。世の中には自分と同じ顔の人間が五人はいるっていうから」


「何ぃ……」


「しかもだ! 生涯でその五人の内の三人と出会ってしまうと死んでしまうらしい」


「な、何てことだ……恐ろしい……!」


「つまり、後ろのプリカがこの写真の人と関係あるかというとそうとは言い切れない」


 口八丁手八丁で話題をそらすアル。ルドーはそれに気づかず、唸りながらあわや説得されかかっているところだったのだが、


「サロメちゃんでしょう? 知っていますよ」


 まさかの裏切りに形勢逆転、瞳を血走らせるルドーがやはりと膝を叩いて笑う。


「やはり知っていたか! このダークエルフ……サロメを!」


「ええ。サロメちゃんとは幼馴染で……でも、今どうしているのかは知りませんよ?」


 手配書をまじまじと見つめ、それから頬に手を当てて困ったように首を傾げる。


「しばらく会わない間に指名手配されちゃうなんて、サロメちゃん何をしたのかしら」


「ふっ、恐るべきことだ。このサロメというダークエルフはだな。アスガルド大陸にあるプーラの森というエルフの集落を焼き払い、忽然と姿を消したのだ!」


 テーブルに手を叩きつけ、糾弾するように声高に罪状を口にするルドー。その発言を吟味して、プリカは額に手を当てると不意にその場に崩れ落ちる。


「お、おい、プリカ!」


 慌ててその肩を支えて、すがるように見上げてくる彼女の姿を見て思い出す。

 今、ルドーが焼き払われたと発言したプーラの森とは、プリカの生まれ故郷と聞いていた森だ。幼馴染が自分の故郷を焼いたと聞かされ、ショックを受けないわけがない。


 心なしか顔を青ざめさせるプリカを心配して、ティファ達も駆け寄ってくる。その様子を覗き込んでいたルドーは、プリカの反応を見て先ほどまでの勢いを鎮火していた。


「どうやら本当に心当たりはないようだな。……しかし、この驚きようは」


「プーラの森はプリカの故郷らしい。燃やされたって聞いてショックを受けたんだよ」


「むむ……それは配慮のない発言をした。慰めになるかわからないが、プーラの森のエルフ達は無事だ。森は失われたが、今はそれぞれ別の森に住処を移している」


 落ち着けば紳士的な態度が板についた人柄らしく、歩み寄ったルドーはプリカを慮るように告げる。プリカはその言葉にいくらか救われたように表情を和らげた。


「貴女には悪いが、我輩はそのサロメを追う。そして償わせねばならない」


「サロメちゃんは悪い子じゃないのに、どうしてそんなことを……」


「ダークエルフは魔物の一味だ。我輩はそれら悪を断じて見過ごしはしない」


 断固たる決意の言葉にプリカは瞼を閉じ、そして開いた瞳には覚悟の輝きがあった。

 立ち上がって店の中に戻り、何かを手にして戻ってくる。それは一輪の赤い花。そしてそれをルドーに対して差し出した。


「――これは?」


「私の森で、出立の際に贈られる花です。ご武運と旅の安全を祈る、という意味の」


 ルドーはその言葉を聞くと、プリカの意を汲むように花を受け取って胸に挿す。


「サロメは必ず捕らえましょう。そして、それが叶ったならば必ず報告いたします」


「はい、お願いします」


 ルドーはプリカに一礼すると、騒がせてすまないとアルや周囲の客にも一礼。それからマントを大きく翻らせ、堂々たる足取りで扉を開け放って旅立っていった。


 最初はどうにも変人の要素の強かった男が、去り際に漢を見せてくれたものだ。

 大勢の野次馬は騒ぎが収束したのを見取って、それぞれが店外や当初の目的に散っていく。そんな中、カインド・ベルのメンバーはプリカの傍に集まった。


「プリカ……故郷のことは……」


「まあ。ご心配なさらないでください。驚きましたけど……私、大丈夫ですから」


 俯くプリカにティファが慰めを口にしかけたが、彼女は気丈に首を振ってそれを辞退した。バルトとノエルもまた、その強がりを尊重するつもりになったのか何も言わない。

 アルもまた同意見だったが、ただ一つだけ非常に気になることがあった。


「なあ、プリカ」


「――はい、なんですか、アルさん」


 指で最後に目元の涙を拭うと、普段と何も変わらない穏やかな微笑を向けてくる。


 その普段通りの彼女に、アルもまた特に強い意図もなく問いかけた。


「さっき渡した花、チュベロースってやつじゃなかった?」


「――ちっ。気づきやがったか」


 その瞬間のドスの利いた声と、邪悪に歪んだプリカの表情は忘れられないだろう。


 唖然とする全員の視線を受けたまま、プリカはつまらなそうに金の髪をかき上げ、気だるげな吐息を漏らすと手近な椅子に腰を下ろす。

 そして次の瞬間、鮮やかな金色の髪が一瞬で薄紫色に染め上がっていた。


「手配書の――サロメ?」


「セ・イ・カ・イ。あ、言っとくけど偽名でも嘘でもないよ。プリカは本当にアタシの居場所を知らなかったってだけだから」


 着ている服の胸元のボタンを大胆に開け、すらりと長い足を見せつけるように組む。


 扇情的なその姿は、まさに悪女の如き色香を強烈に放つ姿へ一変していた。


「ダーフエルフか……」


 突然の変わりように言葉もない中で、何かに思い至ったようなバルトの呟きが漏れる。

 何の話だと問いかけると、バルトは短い腕を組んで聞きかじった程度だがと前置きし、


「エルフ族がエルフとダークエルフに大別されるのは知っているな。そして森に住むエルフと違い、ダークエルフは洞穴や曰くつきの樹海を好む見所のある連中なわけだが」


「じめじめ仲間ジメジメンに対する好感は置いといてくれ」


「誰がジメジメンか! ……とにかく、エルフとダークエルフは似て異なる存在。特にダークエルフは魔王軍に加担しているという噂もあるしな。しかし、中にはエルフとダークエルフで恋仲になる場合もあり、その両者の血を引いた結果として……」


「一つの体に善と悪の人格を持つハーフが生まれる……なんて俗説があんのさ」


 バルトの説明の最後を引き受け、プリカ改めサロメが嘲るように笑う。


「馬鹿馬鹿しい伝承だけど、アタシとプリカはその通りになった。善悪なんて、人様の主観による区別のされ方は気に入らないけどね」


「それで、一つの体に二つの心……ってわけか」


「人とエルフの子どもがハーフエルフ。ダークエルフとエルフの子どもだから、ハーフ・ダーク・エルフでハークエルフとかダーフエルフとか、センスのない奴は呼ぶわけ」


「確かにセンスがないな。別にバルトのことじゃないけど、センス悪い。ダサっ」


「貴様という奴は……!」


 サロメは言外にバルトを小馬鹿にし、憤慨する姿を鼻を鳴らして侮蔑する。まるで世界の全てを憎んでいるような態度に、ティファはおずおずと言葉を作った。


「えっと、その……プロメ? サリカ?」


「混ぜなくていいの。今はサロメだよ、お嬢ちゃん」


「……サロメ。それで、生まれ故郷の森を燃やしたっていうのは……?」


「本当さ」


 言葉少なな返答にティファが喉を詰まらせ、悲痛な瞳でサロメを見つめる。その視線を鬱陶しく感じたのか、サロメは長い髪をがしがしと乱暴に掻きながら、


「森の連中はね、何だかんだ理由をつけてアタシって異端を籠に閉じ込めてたんだよ。アタシとプリカは一人だから、プリカもとばっちり。だから、逃げるためにやったのさ」


 嘘ような口ぶりではない。戸惑うティファの肩を叩き、ノエルが頷きかける。


「異端、というのはどんな集団でも攻撃の対象にされるのですヨ。先のバルトさんの言葉を鑑みれば、ダークエルフの血がエルフにとって疎まれるのは当然の成り行きですネ。生まれてからずっと閉じ込められていた、としても何らおかしくないと思いますヨ」


「お話の通じるシスター様の言う通りさ。だからアタシは外の世界を知るために森を燃やし、嫌いな連中の居場所を奪って森を出たのさ」


「プリカはそのことを知ってるのか?」


「知らないさね。プリカはなぁんにも知らないさ。プリカは自分とアタシが体を共有していることも知らない。アタシの行動や記憶はプリカの都合のいいように歪められて蓄積される。アタシの方はプリカの経験も何もかも、記憶してるんだけどさ」


 言うべきことは言ったのか、サロメは背もたれに身を預けて大きく仰け反って背筋を伸ばし、沙汰を待つように全員を見渡した。


「さ、好きにするといいさね。この後のアタシの処遇をどうするか、決めなよ」


「と、言われてもなぁ……」


 アルが困ったように同意を求めると、全員が同じような顔つきで肩をすくめた。


「森を燃やしたのはやりすぎと思うが、境遇を思えばわからなくもない」


「幸いにも先ほどの方の言葉を信じるなら、犠牲者はいらっしゃらないようですしネ」


「……無意識下でも犠牲者が出たらプリカが苦しむだろうから、出ないときを見計らったのさ。アタシの自己満足のためで、それ以外の理由はないさね」


 許容に傾く雰囲気が予想外だったのか、サロメは幾許かの驚きを滲ませながら呟く。

 悪ぶっているような答えだが、流石はプリカの半身というべきか。どうにも心底から悪人になりきれない甘さのようなものの垣間見える返答だった。


「俺の答えとしては、別に現状維持でいいんじゃないかってこと。サロメの姿になるときに、手配書を知ってる人間がいないのを確認するのが必要だけど」


「あ、あたしはお店に問題さえ持ち込まれなければそれでいいわ。……ずっと一つの場所に閉じ込められて、外の世界を知らなかったなんて、可哀想……だし」


 アルの言葉にバルトとノエルは同意するように頷き、ティファに至っては鼻声になりかけている。その全員の態度をどう思ったのか、サロメは苦い顔を逸らして、


「くそっ。どうりでプリカが居心地良さそうにしてるわけだ。アンタらは馬鹿といい人の紙一重な奴らだ……嫌いだね、アタシは」


 そっぽを向く態度は子どもじみたものだ。その微笑ましいといえる様子にティファ達は話の収束を見たようだが、まだアルは最初の疑問に答えてもらっていない。


「で、それはそれとしてルドーに渡した花はチュベロースだったよな?」


「ちっ、引きずるなよ。いいじゃないさ。アイツはアタシを追ってるわけで、アタシが手配犯だって知れるとアンタ達も困るだろ? 邪魔者を遠ざけるぐらいのことはさ」


「自殺草じゃなくて、狂戦士草を与えたって部分にまだ良心がチラリしてるかなぁ」


 どうもサロメは無意識下からプリカの行動に指針を与えることができるらしい。彼女の天然とも腹黒とも思えぬ行動の多くはそれが遠因なのかどうか判断しづらいが。

 とにかく、ルドーが何らかの事態を起こす前に花は回収すべきだ。


 それを告げようとアルが口を開きかけた途端、新たな騒動の種が店内に舞い込んだ。


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