プロローグ
すでに一本連載中なのですが、こちらはすでに終わりまで書き終わっている作品なのでご安心を。
もう一本の方の箸休め的な感覚でどうぞ。
複数掲載したらもっと色んな人が見てくれるかな(ちらちらっ
全能の神、アルファズルによる世界創世より数千年――世界はかつてない混迷を迎えていた。
生まれ出でた時、遥か広がる大地の他に何も持たなかった人類は豊かな世界を削り、自分達の文明を作り出していった。元より世界にあった青と緑、そして神が与えた赤や黄。存在しなかった色までもを自由に操り、人々は自分達の住みよい世界を作り上げる。
狭い世界しか知らなかった人類は数を増やし、そしてその度に広がる世界の大きさを知る。
そして、世界に自分達以外にも、自分達と同じように生を謳歌する存在があることを知る。
諍いが起きたこともあった。決して相容れぬと存在を否定しあった時代があった。
それでも人類とそれ以外の者達は、年月をかけて溝を埋め、名を連ねて共存の道を選んだ。
自分達が争うことで、世界から緑や青の輝きが失われていくことが悲しかったのだ。
同じことを嘆き悲しんだ彼らを迎え入れ、人類は人類種族と名を改めた。
そうして大きな争いの絶えた世界、平穏の時が数千年続いた中で――それは突如生まれた。
世界中に蔓延り、混沌を生み出したそれは黒に属し、黒を好む魔界の使徒。
彼らはかつての争いを遥かに越える暴虐をもって、平和な世界を蹂躙していった。
青や緑、赤や黄、それらの色が黒に染め上げられ、人類種は皆が為す術なく途方に暮れる。
創世よりずっと世界を見守っていた神は、悲しみに打ちひしがれる世界中の人類種を哀れに思い、黒の使徒に対抗する白い色を授けた。
――以来、黒を好む使徒と白を心に宿す人類種との戦いはずっと続いている。
黒の使徒を統率する権力者を魔王と呼び、白の力で魔王に挑む者達を勇者と呼んで。
勇者達は世界中、全ての人類種の希望であり、いずれも魔王を打ち倒し、世界を救わんとする使命感に満ち溢れた勇猛果敢な戦士達だった。
彼らは故郷を飛び出し、数多の苦難を乗り越え、頼れる仲間と出会い、またある時には仲間や大事な人を失う悲しみに膝をつき、それでも燃え尽きぬ勇気を胸に立ち上がる。
手には無双の武器を持ち、その身は万難を弾く防具に覆われる。生命の限界を超えて戦うための秘薬や、傷付いた体を癒すためのアイテムを常備し、背には神から授かった加護と、自分達を優しく、そして願いを込めて見送ってくれた人々の期待を背負って勇者達は戦う。
その彼らを影に日向に支え続け、冒険の旅の果てに倒れることがないように、共に行けずとも一緒に戦い続ける人々がいる。
これは魔王と勇者が戦う、剣と魔法の英雄譚を舞台裏から見守り続ける、
――暮らしを支える人々の激闘の記録である。