童貞
今回ばかりは、違うと思っていた。
メールもした。電話もした。食事も何度か行ったし、夜景だって観にいった。
もうこれは、告白するまでもない。
付き合ってんじゃないのか?すでに。
そう思った。
「私、今学校とか忙しいし、彼氏とか別にいらないなぁ。」
そう彼女は、いやこのメスは言いやがったのだ。
告白する前に撃沈。というよりむしろ、先手を打たれたというところか。
付き合うつもりなど、ない、と。
女というものは、どうしてこうもあざといのか。
「女なんて、単純だよ。」
幼なじみの山吹は言う。
見た目も成績も運動も同じくらいのコイツと俺が、唯一違うのは、女がいるか、いないか。
これは意外と大きな溝になってしまった。
今の俺は、幼なじみのコイツより、大学で出会った童貞仲間の方が気安い。
何故、俺がこんなにも劣等感を感じなければならないのか。
俺と山吹は一体何が違うのだ?
いや、違う。
俺は、別に女が必要ってわけじゃない。
別に、焦ることないさ。
その気になりゃ彼女の一人や二人、、、
あの山吹にだって出来るんだから。
セックスだって、出来ないんじゃない。
しないだけだ。
「重田くん、定期落ちてたよ〜。」
ほら、俺は、何もしなくっても女が寄ってくるじゃないか。
コイツもわざとらしいなぁ、上目使いなんかしちゃって。
でも、その表情結構かわいい。
親切だし、結構いいかも。
そうだ、俺が女と付き合えないのは、
きっと、全ての女の子に惚れるためなんだ。
これから、色んな女の子のかわいいとこに気付いて、色んな女の子を好きになるためだ。
とか言っても、結局付き合いたいし、童貞脱出したいんだけどね。