第八話「デート再び!?年下男子と二人きり!の巻」
仕事明け。私はロッカールームでそわそわしながら着替えをすませ外に出た。
(いた!!)
外に出てすぐの所にある駐車場に、ジュンちゃんの車が停まっているのを見て、私はさすがに胸のドキドキが止まらなかった。
(どうしよう!ホントに来ちゃったよ!!)
ああは言っていたものの、まさか本当に来るとは思っていなかった。
しかも、車内にはジュンちゃん一人。正志の姿は見当たらない。
(ホントにあたしを誘ってたんだ・・・・)
電話の時はもしかしたら正志も一緒に来るのかも、と思ってたんだけど、迎えに来たのはジュンちゃん一人だ。
という事は、つまりこれは・・・・。
(そういう、意味なのかな、やっぱり・・・・)
『カナちゃんから好きって言われるの待ってるんだと思うよ?』
伊藤さんの言葉が頭をよぎり、鼓動が速くなった。
いや、まさか、そんな・・・・・。
安易に期待するのは良くない。もしかしたら単に正志の都合が悪かっただけかもしれないし。
そんな事を思いながら、私は深呼吸してなんとか心を落ち着け、勇気を出してジュンちゃんの車へと向かった。
「お疲れ~」
ドアを開けるなり、ジュンちゃんは普通に声をかけて来た。
「あ、うん。お疲れ。ごめんね、待たせて」
「いや、別にそんな待ってないし、大丈夫だよ」
私が助手席に乗り込むと、ジュンちゃんはスッと車を発進させた。
それなりに空間があるとはいえ、車内に二人きり・・・・。
何だか気まずい私をよそに、ジュンちゃんは至って明るく、普通に話しかけて来た。
「とりあえずカラオケでいい?」
「あ、うん・・・・」
曖昧に頷き、私は思考を巡らせた。
電話では怒った様子だったけど、今のジュンちゃんは至って普通で、全然怒ってるようには見えない。
まあ、彼は元々、『喉元過ぎれば』というタイプで、物事を長く引きずらないタイプだから、あの時は怒ってたとしても、気にしないように振る舞ってくれているのかもしれないが。
「あの、ジュンちゃん?」
思い切って声をかけてみた。
「ん、何?」
受け答えも至って普通だ。特にいつもと変わった様子は無い。
「あのさ、今日さ、正志は抜きで二人でってコトでいいのかな?」
するとジュンちゃんは、「え?」というような顔を浮かべた。
私は内心、あー、やっぱりね、と思いつつ気持ちを奮い立たせて言葉を続けた。
「あのさ、あたし、たまにはさ、家族なしで遊びに行きたいんだけど、ダメかな?」
言った!言ったよ!!
さて、ジュンちゃんはどう出るかな?
「そうなの?んー・・・、まあ、そういう時もあるよね。じゃあ今日は二人で行こっか」
(やった!!OKだよ!!やっぱりコレは脈ありってコトなんじゃない?)
私は内心思いっきり喜びながら表には出さないようにして普通に「ありがと」と短く述べた。
「でさ、ご飯はどうする?」
「んー、カラオケ屋で食べるんでいいんじゃない?」
などと普通に会話しながら車は市街地へと進んでいく。
「カナさん、これ知ってる?新曲なんだけど・・・」
車内に流れ出したBGMは、綺麗な女性ボーカルの声の切ないラブソングだった。
「んー、知らないけど、いい曲だね」
「このアーティスト、カナさんと同じ名前なんだよ」
「え!そうなんだ?」
ごそごそと片手で車のセンターボックスを漁り、ジュンちゃんはCDのジャケットを取り出した。
そこに映っていたのは綺麗な茶色の巻き毛の若い女性だった。
「うわー、たしかに同じ名前だけど、スゴイ美人だね!私とは大違いだよー」
「いや、そんな事ないよー。たしかにこの子可愛いと思うけど、カナさんにはカナさんの魅力があるんだからさ♪」
自信持って、と眩しい笑顔を向けられた。
「あ、ありがと・・・・」
思わず照れて目を逸らした。
そんな優しい笑顔を向けられると、やっぱりこう、何か、期待しちゃうよ。
もしかしたら・・・・。
そんな思いの中、私はジュンちゃんと二人、カラオケ屋へと向かったのだった。
まさかその先、あんなコトになるなんて・・・・。
この時の私にはまだ、知る由もなかった。
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<予告>
「あのねジュンちゃん、あたし・・・・」
「ん?何?どしたのカナさん」
(言えっ!言うのよあたしっ!!)
次回【フレンド】
第九話「アレアレ!?年下男子と大喧嘩?の巻」
☆お楽しみに☆
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