第七話「もしかして?年下男子と両想い!?の巻」
自分がジュンちゃんを好きだと自覚して以来、私は何となく彼を避けるようになっていた。
何しろ彼は、絶望的なまでに私を恋愛対象外にしている。
ジュンちゃんが私を遊びに誘ってくれるのは、私個人に興味があるとかそういう事ではないのだ。
私が正志の姉だから。それだけなのだ。
そう思うと無性に悲しくて、この頃では一緒に遊びに行こうと誘われても何か理由を付けては断るようにしていたんだけど・・・・。
『仕事終わったら迎えに行くから、遊びに行こうよ!』
私の携帯電話にそんなメールが届いたのは、仕事が終わる一時間前の事だった。
(またか・・・・。もう、やめて欲しいなぁ、こういうの)
メールの相手はもちろんジュンちゃんである。
私はちょっとうんざりしながらこっそり携帯電話を手に席をたち、トイレに入ってメールを返信した。
『正志と二人で行ってくればいいよー。私あんまりお金ないからさー。ごめんね』
とメールしたら、すぐさま返事が返って来た。
『カナさんの分は俺が出すからさ!たまには一緒に行こうよ!』
それを見た私は、思わずイラッとして短く文を打った。
『あたしの事は気にしないでいいから。二人で行って』
メールを送信してトイレを出ようとしたその時だった。
Bububububu・・・・・!
携帯電話が震え出し、見るとディスプレイにジュンちゃんの名前が表示されていた。
(ちょっ、メールじゃなくて電話!?何なのもう!!)
驚きながら急いで電話を切り、メールを打った。
『悪いけど仕事中は電話無理だから。メールにして』
送信し終えると、すぐにまた電話が震え出した。
ディスプレイに表示されているのは、やっぱりジュンちゃんの名前・・・。
(ああもうっ!何なの一体!?)
イライラしながら通話ボタンを押して電話に出た。
「ちょっとジュンちゃん!何なの?こっちは仕事中なんだよ?」
声をひそめながら苛立ちまぎれに言い放った私に、ジュンちゃんは怒り声を返して来た。
『だってメールじゃラチ明かないから!何?カナさん俺と行くの嫌なワケ?だったらハッキリ言ってよ!』
「そ、そんな事ないけど・・・・」
戸惑う私に、ジュンちゃんはすっかり苛立った声で続けた。
『俺はカナさんを誘ってるんだよ!?ゆきっちゃんと二人で行きたいならわざわざカナさんに声かけないよ!』
ドキン!!
心臓が跳ねた。
今のセリフってつまり、ジュンちゃんは正志じゃなくて私を誘ってるってコトで・・・・。
『とにかく迎えに行くから!待っててよね!!』
そのままブチッと電話が切れた。
(どうしよう・・・・。この展開、一体どうしたらいいの!?)
ドキドキする胸を抑えながらもう切れた電話を見つめていると、トイレのドアが開き、人が入って来た。
「どうしたの?何かあった?」
心配そうに私の顔を覗き込んで来たのは、同じ事務員の伊藤さんだった。
3つ年上の彼女には、普段から色々と話を聞いて貰っていて、ジュンちゃんへ片思いしている辛い話もよく聞いて貰っていた。
2人のお子さんがいる主婦で、仕事も出来る伊藤さんは公私共に頼りになる先輩だった。
彼女ならきっと、良いアドバイスをしてくれるに違いない!!
「い、伊藤さん!!き、聞いて下さい!!」
先程起こった信じられない展開を話して聞かせると、伊藤さんは何か妙に納得したように頷きながら言った。
「ん~、やっぱりねえ。いつかそうなるんじゃないかと思ってたよ~」
私が彼の誘いを断り続けている話を聞いていた伊藤さんは、いずれこういう展開になるコトを予想していたというのだ。
「え!?何で!?どういう事ですか!?」
驚く私に、伊藤さんはにっこりと笑顔を浮かべた。
「だって、いくら友達のお姉さんだからって、断ってるのにそれだけ誘われるってコトはさ、何かしら気があると思った方が自然じゃない?」
「ええっ!?でで、でもっ、彼は多分そういうんじゃないと思うんですけど・・・・」
納得いかない私に、彼女はなおも笑顔で続けた。
「そんな事ないよ~。今だって強引に誘われたんでしょ?それはもうカナちゃんの事好きってコトなんじゃないの?」
「そ、そうですか!?そうなのかな?でも、そんな事・・・・」
ありえないと思いつつ、伊藤さんの言葉を聞いているとやっぱりジュンちゃんは私の事が好きなんじゃないかと思えて来る。
考えてみれば、たしかに友達のお姉さんを毎回遊びに誘う理由は見当たらないような・・・・。
「い、伊藤さん、わ、私、どうすれば・・・・」
戸惑う私に、伊藤さんはニコーッとひときわ爽やかな笑みを向けた。
「これはもう、告白しちゃうしかないんじゃない?」
「えええっっ!!??ここ、告白ぅっ!!??」
や、それはさすがに・・・・と渋る私に、伊藤さんは「絶対大丈夫!」と笑顔で太鼓判を押してくれた。
「向こうもカナちゃんから好きって言われるの待ってるんだと思うよ?」
伊藤さんの言葉には妙な説得力があって、最初は信じられない気持ちだった私も、何だか本当にジュンちゃんが自分を好きなんじゃないかと思い始めた。
とりあえず、今日彼が迎えに来て二人になれるんなら、その時に・・・・。
密かな決意を胸に、私は残り一時間を落ち着かない気持ちで過ごしたのだった。
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<予告>
「あたしって魅力ないよね・・・・」
「カナさんにはカナさんの魅力があるって!」
(キュン!!)
「ジュンちゃん・・・・」
(これってやっぱり、そういうコト!?)
次回【フレンド】
第八話「デート再び!?年下男子と二人きり!の巻」
☆お楽しみに☆
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