第四話「ドキドキ!年下男子と初デート!?の巻」
懐かしの我が家に帰って来て数週間。
荷ほどきもほとんど終わった私は、食生活が貧しいウチの男性陣の為に今日も包丁片手に食事の支度にいそしんでいた。
「フンフンフーーンっと♪」
鼻歌を歌いながら味噌汁の鍋に味噌をといていた時の事である。
Piriririri・・・・・・!!!!
家の電話の呼び出し音がけたたましく鳴り始めた。
「はいは~~い。今出ますよ~~っと」
一旦手を止め、パタパタと茶の間に置かれた電話の子機を取りに走った。
「はい、もしもし」
『あ、カナさん?やっほー。俺だけど~~』
「俺俺詐欺なら間に合ってま~~す」
タンパクに言い放つと、電話の向こう側で『ええ~~っ!?』と驚きの声が響いた。
「あはは!ジョーダンよジョーダン♪ジュンちゃんでしょ、分かってるって~」
『カナさ~~ん、カンベンしてよ~~』
「ごめんごめん。で、なぁに?」
笑いながら尋ねると、ジュンちゃんの明るい声が返って来た。
『カナさんっ、デートしよ!!』
「はぁっ!?でで、デートぉぉーーー!!??」
思わず叫んだ私に、ジュンちゃんは笑いながら言った。
『そ。デート。ゆきっちゃんは飲み会で遊べないって言うからさ、カナさん一緒に出かけないかな~~って思って』
その言葉に、私はホッと息を漏らした。
「なぁんだ。そ~ゆ~事ね。いいよ~。今、ご飯支度してるけど、これ終わったら出られるからさ~~」
「じゃあ決まりね!7時にそっち迎えに行くから、それまでに支度しといて~」
私は短く了解の返事を返して電話を切り台所へ戻った。
それにしても、デートなんて・・・・。
ジュンちゃんに他意は無いんだろうけど、一瞬めちゃくちゃドキドキしちゃったよ。
まったく・・・・・。
などと思いながら夕食の支度を済ませ、いそいそと出かける支度にかかった。
「えーと、トップスはこれで、スカートはこれ、アウターはこれ。下着は・・・・」
どれにしようと思った時、何となく可愛いやつに目が行ってしまった。
「やっ、別に見せる訳じゃないけど!トータルコーディネートってやつよ!うん!!」
言い聞かせるように言って、ちゃっかり可愛い系の下着を選んだ。
上下お揃いの淡いピンクの下着にキャミソール。インナーにはシンプルな白のブラウス、アウターには細いヒモを胸元でリボン結びにするVネックの黒セーターを着る事にした。
下は、黒が基調の、ゴシックまではいかない控え目なフェミニン系のスカートに黒のストッキング。
それから入念な基礎化粧で肌のお手入れもして、控え目な化粧をほどこした後、愛用の香水【アクア・デ・ジオ】のミニボトルを開けてちょこんと掌にのせて耳たぶへつける。
仕上げに首元にお気に入りのプチダイヤのネックレスをつけて・・・・。
「ん、完璧♪」
今持っている服で出来る最大限のおしゃれコーディネートだ。
でもコレ、まるでデート服・・・・・。
「や、違うし!!!!!」
自分で考えて自分でつっこんだ。
「もう・・・!ジュンちゃんがデートとか言うから・・・・」
しっかりデートを意識してしまった自分にちょっと自己嫌悪。
あんな年下の冗談を意識するとか、有り得ないし!!!!
などと半ば言い聞かせるように思っていると、遠くから特徴的なマフラー音が聞こえ始めた。あの音は多分・・・・・。
案の定、音は我が家の前で停まり、やがてガラガラと玄関の引き戸が開かれる音が響いた。
「ちわ~~!!姫、お迎えにあがりましたよ~~」
その声に、思わず頬が熱を持つ。
「・・・・は、は~い!今行きま~~す!!」
ごまかすようにバッグを持って部屋の外へ飛び出した。
バタバタと階段を降り、玄関へ向かう。
「お~、カナさん可愛いじゃん!」
(か、可愛い!?)
唐突にかけられた言葉に、思わず頬の熱が増した。
このシチュエーションでそう言われるとは・・・・・。
「ん?どしたの?何か忘れ物?」
思わず固まった私に、キョトンとした顔で尋ねて来たジュンちゃんを見て、慌てて口を開いた。
「や、大丈夫!行こっか!」
下駄箱から黒のブーツを取り出し、それを履いて外に出る。
玄関の前には横付けされた黒い軽自動車があり、ジュンちゃんが助手席のドアを開けてくれた。
「どうぞ、カナさん」
「あ、ありがと・・・・」
ちょっと躊躇いながら助手席に乗り込んだ。
途端に、マリン系のいい香りが鼻孔をくすぐる。
ドアを閉め、シートベルトを締めている私の横にジュンちゃんが乗り込んだ。
「ジュンちゃんの車って、いっつもいい匂いするよね」
シートベルトを締めながら、ジュンちゃんは笑って答えた。
「カナさんコレ好き?【マリンシャワー】だよ」
目の前に置かれた缶に入った芳香剤を指して嬉しそうに言う。
(や、だからその笑顔ヤバイってば!)
いちいち思うのも何だけど、ジュンちゃんに向けられる笑顔は反則的にヤバイ。
見てるだけで思わずドキドキしちゃうようなステキ笑顔なのだ。
別に他意があるわけじゃないんだろうけど・・・・。
「んじゃ、行きますか♪」
ステキ笑顔を浮かべて車を発進させるジュンちゃんの横で、私はひたすら窓の外を眺めていた。紅い頬をごまかすように・・・・。
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<次回予告>
「ねえジュンちゃん、恋愛って難しいよねえ」
「え!?何その前フリ!?」
「たまにはシリアスにいこうかと」
「カナさん、キャラに合ってない――」
「生意気言うのはこの口か~?ん~?」
「ほへんなは~い(ごめんなさ~い)」」
次回【フレンド】
第五話「愛って何さ?年下男子は無関心!?の巻」
☆お楽しみに☆