第三話「年下男子にただいま!?の巻」
それから車は順調に進み、やがて懐かしい我が家へと辿り着いた。
「到着~~」
車を停めたジュンちゃんに、私はにっこり微笑んだ。
「ありがとうジュンちゃん。運転お疲れ様でした」
「いえいえ。カナさんも長旅で疲れたデショ」
ドキン!
返された笑顔に思わず胸が高鳴る。
――や、だからその笑顔、ヤバイって!
焦りながら車を降り、荷物を取り出そうと後部座席のドアに手をかけた時だった。
「あ、カナさんは先行って。荷物は俺が運ぶから」
「え!?や、そんなわけには・・・・」
遠慮する私に、彼は眉をしかめて言った。
「いいってば。長旅で疲れてンでしょ。俺が運ぶからカナさんは行きなっての」
「あ・・・・うん・・・・・」
思わず頷き、素直に玄関へと向かって歩き出した。
何て言うか、ホント、変わったなぁ、ジュンちゃん。
昔は本当に悪ガキって印象しか無かったのに、すっかり男の顔するようになっちゃって。
などと思いながら歩いていると、大荷物を難なく抱えたジュンちゃんが追い付いて来た。
「カナさん、ごめん、玄関だけ開けてくれる?」
私はすぐに玄関まで走り、昔ながらの引き戸をガラガラと開けた。
「ありがと~~。お~いゆきっちゃん、カナさん連れて来たよ~~」
ドサリと荷物を玄関に置き、ジュンちゃんは叫んだ。
ドタドタと音がして、二階から弟が・・・・
「・・・・て、えぇぇぇぇーーーーー!!??まま、正志!!??」
思わず叫んだ。だって、その姿は・・・・・。
「お疲れ~~。ありがとね~~ジュンちゃん」
にこにこ笑顔を向けられ、ジュンちゃんは爽やかに笑顔を返している。
「おぅ。あ、コレ、頼まれてたやつ」
空港で買ったらしいお菓子の包みを手渡しているのを見ながら、私は唖然として口を開く。
「ちょっ・・・・アンタ、ホントに正志なの!!??」
目の前の〝正志らしい男″に問いかけると、彼は苦笑いを浮かべて答えた。
「カナさん、酷いなぁ。可愛い弟にその言い草はないだろ」
その声もゆったりした口調も、たしかに弟正志のものだけど・・・・。
「いや、だってアンタ、いくら何でも変わりすぎでしょーーー!!!!」
目の前には、相撲でもやってるの?と問いかけたくなるほどの巨漢男がいる。
五年前、最後に見た弟の正志は、少なくともこんな姿ではなかった。ちょっとぽっちゃりではあるが、それでも普通の範囲だったハズなのだ。それが・・・・。
「その体型!!一体どーーしちゃったのよーーーー!!??」
全力で問いかけた私に、正志は相変わらず苦笑いを浮かべて答えた。
「ああ、まあ、夜中にインスタントラーメン食べたりしてたらこうなった」
「はぁっ!!!??何よソレーーーー!!??」
話を聞くと、どうやらこうなったのは正式に家督を継いでからの事らしい。
私がいない間、食事もほとんどインスタントか冷凍食品が多く、栄養バランスが著しく崩れた食生活となっていたようだ。
「はぁ~~・・・・・。まったく・・・・」
思わず頭を抱えた。よもやここまで我が家の食生活がヤバイ事になっていようとは。
これは本当に、帰って来て正解だったのかもしれない。
「あ、そういえばさ、まだ言ってなかったね」
思わず溜め息を吐いていた私を見て、ジュンちゃんが言った。
「カナさん、おかえり!!」
向けられた笑顔が眩しくて、私は小さく呟くように返した。
「・・・・・ただいま」
――――こうして私は、五年ぶりに我が家へと戻って来た。
数年ぶりに再会した懐かしい家族。そして、ジュンちゃん。
この再会が、後々大きな嵐を巻き起こす事になるなど、この時はまだ、知る由も無かった。
<次回予告>
「ねえジュンちゃん、デートの定義って何だと思う?」
「一緒に出かける事でしょ。男同士でもデート!!」
「ダメだこりゃ・・・・」
次回【フレンド】
第四話「ドキドキ!年下男子と初デート!?の巻」
☆お楽しみに☆