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フレンド  作者: 七瀬 夏葵
3/10

第二話「年下男子はゲームがお好き?の巻」

ジュンちゃんはそのまま私の荷物を抱えて車まで案内してくれた。


「ささ、カナさん乗って」


手際良く荷物を後部座席へと積み込み、助手席のドアを開けてエスコートされる。


「あ、ありがと」


私が助手席に座ったのを確認してからサッとドアを閉め、運転席へと回り込む。

その手際の良さに、思わず感嘆の声を漏らした。


「はぁ~~、変われば変わるもんだねぇ」


「はは。やっと分かってくれた?俺だっていつまでもガキじゃないんだからね~」


ほれ見た事か、と言わんばかりに得意気な彼に、私は大袈裟に感心しながら言った。


「うん。ビックリした。いつの間にか大人になってたんだねぇ。おねぇさんは嬉しいよ。君がちゃんと成長してくれてて」


うんうんと頷く私に、彼はシートベルトを締めながら苦笑を浮かべ、こちらを見やった。


「はは。ま、とりあえず、車動かすからベルト締めてくれる?」


「あ、うん。ちょっと待ってね」


私がシートベルトを締めると間もなく車が発進した。


「カナさん、音楽かけていい?」


「ん?いいよー」


短く答えると、彼は器用に片手でカーオディオを操作し、車内に女性ボーカルの歌う軽快な曲が流れ始めた。


「あ、この曲イイね。誰の?」


「ああ、コレ?知ってるかなー。同人ゲームで使われてる曲なんだけどさ」


そう言って教えてくれたゲーム名と女性ボーカルの名前は、私が聞いた事も無いものだった。


「へ~、知らないなぁ。流行りなの?」


「そうだね~、けっこう流行ってるんじゃないかな~。けっこういろんなバンドがカバー曲出してて、コンサートやイベントもあちこちでやってるし」


「え!同人ゲームなのに!?凄いね!!そんなに人気あるんだ!?」


同人ゲームという事は、つまりメジャーな企業から出されているプロの作品ではな無く、個人が趣味で造って販売している物の筈だ。それがカバー曲が出ていて、コンサートやイベントが色々あるという事は、それだけその作品の人気が高いという事なのだろう。


「うん。そりゃもう、物凄い人気みたいだよー。俺も友達がCDかけてて、いいなって思ったのがきっかけなんだけどさ、今じゃゲームもハマッてンだ」


そう語る彼は、いかにも楽しそうで、思わず興味がそそられた。


「へー。どんなゲームなの?」


「シューティング系のパソゲーだよ」


シューティングと聞き、思わず苦い顔になった。せめてRPGとかアドベンチャーなら私もやれるんだけど・・・・。


「そっかー。それは私じゃ無理かもね。シューティングだけは苦手でさ」


残念がる私に、彼は何でも無い事のように笑った。


「一回やってみれば?ゆきっちゃんのパソコンにインストールしてあるからさ」


“ゆきっちゃん”。

久しぶりに聞く弟の愛称に、私は懐かしさで目を細めた。


「その呼び方、変わってないね~。今でもあの子と仲良いの?」


彼はまっすぐ前を見ながら笑顔で答えた。


「うん。冬なんかほとんど毎日カラオケ一緒に行ったりしてたよー」


「ま、毎日!?あんたら元気ね~」


毎日カラオケ行く体力があるとは。流石に若いなぁと思ってしまう。


「あはは。カナさん、発言がオバちゃんくさいよ~」


可笑しそうに笑われてしまい、ちょっとだけ落ち込む。

うーん、年齢の差を感じるなぁ。


「悪かったわね~。こちとらもう三十路なのよ。そういえば君、随分会って無かったけど、今年幾つなんだっけ?」


私の問いに、彼はサラリと答えた。


「21だよ」


「に、にじゅういち~~~!?10コも下!?」


驚く私に、彼はハンドルを握ったまま苦笑を浮かべた。


「カナさん、本気で俺の歳忘れてたの?ま、10年以上会ってないから仕方ないちゃー仕方ないけど」


昔はあんなにしょっちゅう顔合わせてたのに、と言われ、思わず慌てた。


「ごめんごめん。あ、そういえば今日、何であの子じゃなくて君が迎えに来たの?」


バツの悪さから話題を変えると、彼は何でもないようにサラリと答えてくれた。


「ああ。ゆきっちゃんが集会入っちゃったって言うからさ、急遽俺が代理でね」


“集会”というのは農業組合の集まりの事だ。

弟の正志は、数年前に父の後を継いで農業経営者となっているので、組合の寄り合いなどには弟が自分で参加しているのだと聞いた事があった。


「ふーん、そっかー。それならそうと教えておいてくれたらいいのに。あたし、何も聞いてなかったよー?」


今日向こうを出る前に連絡した時も、別段変わりなく、来られないという話はしていなかった。


「そりゃそうだよ。ビックリさせようと思って秘密にしてたんだもん。予想以上にビックリしてくれてドッキリ大成功って感じ?」


悪戯っぽく微笑む彼に、私は思わずドキンとした。

そんなふうに笑うの、反則だ。


「ドッキリはしたね、うん」


ごまかすように目を逸らし、窓の外を見やった。

「やったね!」などと無邪気に喜ぶ彼の声を聞きながら、私は懐かしい故郷の、流れる景色を見つめるのだった。

<次回予告>


「や~、悪ガキがここまで変わるとはね~」

「俺よりすご~く変わった人がいるけどね」

「そ、それって・・・・」

(あたしのこと?ドキドキ)


次回【フレンド】

第三話「年下男子にただいま!?の巻」


☆お楽しみに☆

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