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フレンド  作者: 七瀬 夏葵
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第九話「アレアレ!?年下男子と大喧嘩?の巻」

初めは少し緊張したものの、二人でのカラオケは大いに盛り上がった。


「いやー、歌った歌った!」


帰りの車中で、ジュンちゃんは満足げに笑顔を浮かべた。


「楽しかったぁ~。ジュンちゃん、ありがとーね!」


満面の笑顔を向けると、ジュンちゃんはニッコリ笑って「どういたしまして」と言葉を返してくれた。


「カナさんが楽しめたなら誘って良かったよ~」


ドキン!

向けられた爽やかな笑顔に胸が高鳴った。


―――――どうしよう・・・・。


言うなら今かな?でも、本当に言っても大丈夫なのかな?

言おうって心に決めてた筈なのに、いざとなると勇気が出ない。

迷いながら、とりあえず口を開いた。


「・・・・・あのさ、ジュンちゃん、その・・・・」


「ん?」


向けられた優しい目に、私はうるさいくらいの鼓動を感じながら言葉を続けた。


「あのね、実はあたし・・・・その・・・・、そう!相談があるの!!」


とっさに口をついて出たのは、そんな言葉だった。


「相談?何?俺で良かったら聞くよ」


真面目さが含まれたその声音に、私はちょっとだけ引け目を感じながら彼を見た。


(違う!こんな事が言いたかったんじゃなくて・・・・。えぇい!もうこうなったら仕方ない!!)


私は腹をくくり、最初の計画とは別の切り口で話を進めてみる事にした。


「うん・・・・。あの、ね、実は、気になってる人が・・・いるんだけど・・・」


するとジュンちゃんは、思いっきり爽やかな笑顔を浮かべて言った。


「そうなんだー。誰?この間言ってた職場の人?」


「えっと・・・・まあ、そんなとこ」


君です、とはやっぱり言えず、私は曖昧に言葉を濁した。


「そっかぁ。あ、そういえばカナさん、結局あの彼氏とはちゃんと別れたの?」


唐突に聞かれて、私はちょっと戸惑いながら答えた。


「う、うん。まあね。別れ話したのは電話でだけど、距離もあるし、もう会うコトも無いと思うよ」


私の言葉に、ジュンちゃんは満足そうに頷いた。


「なら問題ないじゃん。ガンガンアタックしちゃいなよ~~」


「う、うん・・・・。そうだね、アタック・・・・」


曖昧に頷きながら、私は伊藤さんに言われた言葉を思い出していた。


『向こうもカナちゃんから好きって言われるの待ってるんだと思うよ?』


―――て、伊藤さんは言ってたけど・・・・。

本当にそうなのかな?実は違う何てオチだったらどうしよう?

私の中にこのまま告白しちゃえという気持ちと、このまま言わないでおいた方がいいという気持ちが激しくせめぎ合っていた。


「カナさん、自信無いとか言ってるけど、俺はちゃんと魅力あると思うし、相手も好きって言われれば嬉しいんじゃないかと思うよ」


「で、でも、向こうはホントに何とも思って無いかもしれないし・・・・」


ためらう私に、ジュンちゃんは力強く言った。


「大丈夫だって!もしダメでもさ、好きって言われてから意識する事だってあるんだから!ほら、男って単純だからさ!」


これは・・・・遠まわしに早く告白しろと言われてるんだろうか?

それとも本当に私が違う人を好きだと思ってアドバイスしてくれてるんだろうか?

どっちなのか分からなくて、私はなおも戸惑いながら答えた。


「・・・・でも、その・・・・やっぱり私、自信無くて・・・・」


「んもう!カナさん!何ウジウジしてんの!?考えてても始まらないって!とにかく行動しないとさ!!」


「で、でも・・・・」


なおもためらっている私に、ジュンちゃんはイラッとしたように言い放った。


「あーーーもうっ!!いいよもうやめっ!!この話終わり!!これ以上話しててもしょうがないよ!!」


そう言ってスッと表情を変えた。


「ごめんねカナさん、カナさんの事なんだから俺がとやかく言う事無いよね。俺が悪かったよ」


無理に笑顔を作るジュンちゃんに、ふいに胸がズキンとした。

何でそんなふうに笑うの?

頭をよぎるのは、伊藤さんの言葉。


『―――好きって言われるの待ってるんだと思うよ?』


ホントにそうなのかな?だからこんなふうに無理に笑ってくれるのかな?

考えても答えが出る訳も無く、かといって直接聞く勇気も無く・・・・。

その後私は、結局ジュンちゃんに何も聞けないまま、ただ他愛も無い世間話をして終わった。


――――ジュンちゃん、ごめんね・・・・。


帰って来た自分の部屋で、私はさっきのやりとりを思い出して考え込んでいた。

もしホントにジュンちゃんが私を好きなら、私はジュンちゃんに酷いコトしちゃった。

誰だって好きな人に他の人の話をされたら良い気はしないだろう。

おまけに自分のを抑えて応援しようとしたのに相手が乗り気じゃなかったら、そりゃ怒るよね。

なのにあんなふうに無理して笑ってくれるなんて・・・・。


「よし!決めた!!」


明日、ちゃんと言おう。

ホントは誰を好きなのか、ちゃんと言うんだ!

今度こそ本当に告白する決意を固め、私はグッと拳を握り締めるのだった。

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