笑顔と目標
よろしくお願いします
フィリアは面白すぎて笑いが止まらなかった
「はぁー久しぶりにこんなに笑った」
「笑うなよ」
「笑うでしょ」
拗ねるアイルと笑い疲れたフィリア。何があったのかと言うと…
――――――――
「出発するよ」
荷物をまとめて出発することを伝えるとアイルが棒立ちで立ち尽くしていた。馬がいないことを伝えてから抜け殻のようになったのだ。
「聞いてる?」
「うん…」
アイルは馬なしでの長距離移動など知らない。歩いて移動する未来を想像し絶望していたのだ
「何日ぐらいで着くの?」
「たぶん夕方前には着く予定」
「明日の?」
「いや、今日のだけど」
「・・・え」
フィリアは少し考え、大体の時間を計算する
「今13時だから2時間もあれば着くはず」
(15時には着くであってる?)
(ああ)
「あっ。アイル、ハクから少し離れた方がいいよ」
「え?うわっ!」
後ろを振り返ると大きくなったハク。体長1.5mから倍ぐらいは大きくなっている。ありがたく彼の背中に乗り、タラエアまで向かう。だけど少し前から機嫌が悪い。
多分(お前が勝手決めるな。走るのは俺だぞ)ってところだろう
(街に着いたらご馳走用意するから機嫌直して)
(……)
無反応ですか。どうしようかな…あっ!
(シンセ)
(早く乗れ。行くぞ)
機嫌直るどころか、ハクがやる気になった。シンセとはハクのお気に入りの魔石である。透明度を高く、夜になると輝く特別な魔石。大きさによっては屋敷を買えるほどのお値段になる。そこそこの大きさで許して頂きたい。
《無属性選択 対象確定 浮遊》
アイルと自分を浮かせ、ハクの背中に乗る。アイルはフィリアの背中に捕まり
「出発ー!」
《継続 結界》
時速75km~80kmほどのスピードで移動する。結界でハクから落ちないようになっている。あと風よけのために発動している
「ハクに乗って移動するなら先に言ってよ」
アイルぼそっと「でも良かった」っと。
「良かったってどういう意味?」
「な、なんでもないよ」
確実に動揺している。放心状態だったときのことを考えてみる…何日もかかると思っていたんだよね、ハクに乗る考えはなかったとすると、、
「あー!歩いて移動すると思ってたから、もぬけの殻みたいになってたんだ」
「き、聞こえなーい」
貴族のお坊ちゃんには馬なしでの移動はありえないから。彼の反応が面白くて笑ってしまったフィリア。
アイルは自分が後ろに乗るで良かったと思った。恥ずかしくて顔が熱い。ちなみに耳まで真っ赤になったアイルであった。
―――――――
と言うことがあったのだ。ハク以外と話すことがほとんどないフィリアにとっては笑うこと自体が久しぶりだった。
タラエアに着くまでの2時間ぐらいずっーとアイルに話しかけられていた。飽きもせず、ずっと。だけど少しだけ懐かしく思った。学園にも、たったひとりだけずっと話しかけてくる変わり者がいた。めんどくさい、関わりたくない等、結構酷い態度だったが、彼女は毎日話しかけてきた。懐かし…
「俺には2人、兄様がいるんだ。2人ともすごく強くてかっこいいだ。でも1ヶ月ぐらい会ってないな。俺もあんな風になりたい…あっ!父さまも強くてかっこいいだ」
「そう」
「なれるかな…」
「鍛錬を続ける。それしか方法はないと思うよ」
目標のために努力し、鍛錬をする。言うのは簡単だが、やるのはとても難しい。その努力が実るかどうかも分からないものに何年、何十年も掛ける。
「環境があるなら有効活用すれば良いし、無いなら鍛錬が出来る場所に。目標が決まっているなら、突き進んでいけばと思う。何事も行動しないと始まらないからね。まぁ結局のところ後悔しない道を選べばいいよ…」
思ってしまった。自分は後悔しているのだろうかと…自分には環境がなかった。だから出来る場所へ行くために努力し、学んだ。だけど、そこへ行くために目の前にある問題から努力せず逃げた。見て見ぬふりをして突き進んだ結果、今がある。過去の自分の選択に苦しくなった。話すべきではなかったかも知れない…
「ありがとう、フィリア。俺、頑張るよ」
でもアイルにとってはフィリアの言葉が、この出会いが自分を大きく変えるきっかけになる。それはフィリアにとっても同じであったのかもしれない。「ありがとう」この言葉がほんの少しだけフィリアが抱える苦しさから救ってくれた。
「…っ!もうすぐ着くよ」
視界が見えずらく、目元が赤くなって胸が苦しいのはどうしてなのだろうか…この知らない、分からない感情を誤魔化すように返事をした
お読みいただきありがとうございました




