『起』承転結
商店と書いてコンビニと読みます
20XX年8月後半 日本の南の方の何処かの離島
とある南国の離島
「カモメは飛びながら歌を覚える 人生は遊びながら年老う」
と、歌われるが、この島ではウミネコが「ミャー・・・ミャー!ミャー!!」
と猫の様に歌い
一人の少女は惰眠を貪っていた。
夏の暑さも和らぎセーラー服で平らな防波堤の上で仰向けで寝る少女が一人
名前を『羽海』
髪は長く黒色、健康的な体つきの少女
近くの集会所に用がある島の人々がその道を通るが誰も注意はしない。
彼女はいつもこうなのだ。
そんな羽海が寝返りを打つと、不意に体に浮遊感が訪れ内臓が天に向かって引っ張られる感覚に
襲われ、目が覚めると同時に海に流され始めていた。
羽海は冷静に慌てずに体を浮上させる為に体を大の字に広げ、安定させた後に自分が見ているのは海底だと気が付く、と同時に違和感を覚える。
「あれ?ここって浅瀬なのに・・・なんでこんな海底が見えないの?」
羽海の思考通りに海底は見えず、光が見えないディープブルーが広がっていた。
それと同時に自身が僅かながらにも沈んでいた。着衣が水を吸って重たくなった結果、
体の生み出す浮力よりも着衣の重みが僅かなにも勝っていたのだ。
羽海の思考が「不味い・・・息が苦しい・・」で埋め尽くされ悶える。
水中で藻掻くが意味をなさず意識が薄れゆく中、巨大なナニカに助けられた。
そのナニカを形容するならばそれはきっと島の伝承に伝わる守護神だった。
だた現代を生きる人々は「クラーケン」と一纏めにしてそう呼んだ
羽海は気が付くと防波堤の上に寝ころんでいた。
最初は「・・・夢?」と呟くも体を覆う重たい着衣を見れば濡れていた。
そして怪我は無いかと見渡して最後に手の平を見ると指と指の間にある水かきが
金色に光っていた。
本来、人間は胎内では水かきがあり「退化」か「進化」の過程で今の形に収まる事が多い
水かきがあること自体は異常ではないのだが少女は思わず「指と指の間が光っている・・・?」
そう呟いた。
訳が分からなったが気のせいにして羽海はスマホが入ったカバンを手に持ち
気怠さと着衣が肌に張り付く嫌な感覚に襲われながら実家の商店に帰る事にした。
そうしないと気が狂いそうだった。
「これは夏の陽炎が見せた幻夢なんだ」と言い聞かせつつ
商店の扉をくぐるとカウンターの向こう側に羽海の母親が座っていた。
自身の娘の姿に驚きつつも母親が「床が濡れるから裏から入りなさい」
そう叱った、そう言われ母親に背を向けると「・・・ぁっ!」と声に成らない悲鳴を上げた
羽海は気だるく「何?」と問いかけると母親は「け、毛先が・・・!!」
そう言われ背中側に下していた髪の毛を手元に持ってくると同時に
羽海の体を水が全身を覆った