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6 ここは死後の世界か否か

「リン、其れは魔法か?」

「はい。私は、火の魔法が使えます。」

それから、僕はリンに魔法を見せて貰った。リンはオアシスの中で唯一魔法を使える。と言う事だった。

オアシスの皆が、僕を心配して、リンを付けてよこしたといった。


僕はその話を聞いて、益々落ち込んだ。リンは自分の意思で付いてきた訳ではなかった。

僕を心配してくれたことに感謝こそすれ、落ち込む事などないはずなのに、僕には全く信用も信頼も、人望も何もない。やはり、僕には、友達などいないのだ。出来ないのだ。出来るはずもないのだ。

今度はいじけて、ふて腐れている。

なんと情けない。あの、仕事では生き生きと働いていた僕が、いじけて、ふて腐れている。まるで、幼稚園のしょんべん垂れ小僧だ。

情けない。自分で、女性を傷つける言葉を吐いたくせに、自分で勝手に傷ついている。

僕はもうこの自分とのやりとりに疲れてしまった。


「リン。付いてきてくれてありがとう。助けてくれて、ありがとう。傷つけるようなことを言ってしまって、悪かった。」

「いえ。私は傷ついていません。夢見人は、此方に来られると、混乱してしまうそうです。ですから、なるべくそっと、しておかなければならなかったのです。私達が、余りにも久し振りに夢見人に相まみえることが出来て、興奮してしまったのが悪かったのです。申し訳ありませんでした。」

リンは真摯に謝ってきた。人としての、格の違いに脱帽した。


それからは、僕とリンは本当の友の様に話し合った。彼女は、オアシスの中では孤立しがちだと言った。

一人だけ魔法が使え、女である事も皆から、一歩退かれてしまうのだとか。

矢張この世界でも男尊女卑が横行しているのだろうか。世の中は、何処まで行っても弱いものを見付け自分より下に置きたいもののようだ。


自分自身もそうだ。自分に確固たる自信が無いばかりに、他人の行いが気になる。自分より不幸な人を見て、自分の幸せを初めて感じられる。心貧しきものだった。

僕はこの先、この死後の世界で生きて行く?自信もなくなってしまった。


「リン。君には好きな人はいないのか?オアシスでは君を娶りたい人も多いだろう?」

「はい。以前はおりました。彼は、半魚人との戦いで死んでしまいました。」

僕は、不思議に思った。死後の人も死ぬのか。僕もここで死ぬとしたら、今度は何処に行くのかと。

その話をすると彼女は変な顔をして、

「死後の世界は、ここでは無いと思います。ここは心象の世界、またの名を夏の世界と呼ばれています。」

と言った。

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