4 魔法のポケット
リンは、
「これは獲物しか入れられない。魔法袋で、代々伝わるものです。皆の共有財産なので滅多に使う事が出来ないのです。でも、大介さんの魔法のポケットは何でも入る素晴らしいものだと聞いています。」
と言った。何が何だか意味が分らない。ビスケットが出せるポケットだとずっと思っていた。
夢見人は必ず不思議な力を持っている。特に不思議なのが、魔法のポケットだという。
魔法のポケットに願えば何でも出てくる。夢見人しか使う事の出来ない、特別のものなのだとか。
試しに僕は何でも入る魔法袋と念じてポケットに手を入れた。
するとリンが持っているのと似たような袋が出てきた。其れをリンに与えると、リンは感激して早くオアシスに帰って皆に知らせなければならないと言った。
リンが持っていた魔法袋も以前ここに来た夢見人が置いていったものらしい。
ドラゴニュート達が僕の機嫌を取っていたのは、どうやら僕の特異な才能目当てだったようだ。僕がなかなかプレゼントを彼等に与えないので、不安になっていたらしい。
「そうだよな。誰でも只で、親切にはしないものだ。親切にするのは、其処に何らかの思惑があるのだ。」
僕は今まで彼等に王のように扱われていたわけではないことに、チョット、苛立ちを覚えた。
純粋な感謝や、思い入れ、憧れや尊敬は、無いと言う事だ。
当たり前だ。僕が彼等に何をしてやった?彼等の尊敬する理由の何を持っている?ポケットだけではないか。
他人が親切にするのは、其処に何らかの見返りを求めているからだ。
彼等はその為に態々危険を冒し、魚を捕ってきたり、女を貢いだりしたのだ。
僕は、何となく興ざめてもうここにはいたくないと思った。
ここの他にこの死後の世界で知っているのは、海しかなかった。
海には好戦的な半魚人なるものがいる。
僕は「どうせ死んでいるのだ。これ以上死ぬことはないだろう。」
と高をくくって、オアシスの皆に別れを告げた。
別れは、あっさりしたものだった。
もう貰うものは貰ったのだから、彼等は僕に用はないのだろう。
一人砂漠に入っていった。もう、水の心配は無い。魔法のポケットに願えば、何でも出てくるのだから。
砂漠での三日目僕を追いかけて、リンが来た。