2 ドラゴニュートと言う種族
彼等は、ドラゴンの末裔だと言った。
その昔、此処は緑なす大地で偉大なるドラゴンが群れをなして住んでいたと言う。
在るとき、一体のドラゴンが世界を見て回ると言って飛び立ったがそれきり帰ってこなかった。他のドラゴンたちは、きっと素晴らしい土地を彼は見付けたのだ。俺達に知らせないで其処の王に収まったのだ。と言って次々に飛び立っていなくなってしまった。最後に残ったドラゴンは、
「自分も一緒に行けば良かった。だがもう遅い」年老いたドラゴンはそれから暫くして死んでしまった。
その後には、果てしない砂漠と海、オアシスができあがり、生れたのが彼等、ドラゴニュートだという。
話は儘面白かったが、おとぎの国の話だな。話している本人もおとぎの国の住人だ。
変な夢だ。なかなか目が覚めないと言うことは、僕はもう死んでいるのだろう。変な死後の世界にきてしまったものだ。だがここでも、腹は減る。排泄もする。死んでもこんなものなのか?
ふと自分の服装を見てみると、背広ではなかった。ズボンは探検家のようなニッカポッカのようなものをはいていた。ブーツ、これはどうやら本革のようだ。上着はなく、ポケットが付いたベストに替わっていた。
何故かワイシャツだけは以前の儘だ。ネクタイはどこかに落としたのか無くなっていた。
僕の体格はどうやら大きくなったようだ。以前はどちらかと言えば小柄で、痩せていた。
運動などは苦手で、専ら本を読むか、ゲームをするくらいで、閑なときは家で寝ていた。
友人は沢山いた。極薄い関係の友人がスマホに沢山登録されていた。
友人とは言えないかも知れない。知り合い程度だったかも。
ここはオアシスで椰子のような蘇鉄のような、似ているが何となく違う、木々が生えていた。
綺麗な水をたたえた池があり底から水がこんこんと湧いていた。池の周りは果物の木もあり草も豊富に生えていて食い物には困らないようだ。
偶に海に行って、魚を捕ってくるものもいた。誰もなにもせず、ただのんびり過ごしている。
僕に彼等は、餌を与えるように彼等の言うところの、ごちそうを持ってくる。
かいがいしく世話を焼き、時には女を与えてくる。
僕は其れは丁重に断った。何度断っても、次の日は違う女が僕の家の中に用意されているのだ。
顔を見れば恐ろしげなトカゲだ。無理だろ、僕にこれをどうしろと?
でも、話は通じるので一人のドラゴニュートの女と親しくなった。名前を、リンと言った。
リンは120歳だという。多分若いのだと思うが、彼等の平均年齢は分らないので、そのまま流して聞いている。
「大介様、背中を流して差し上げます。」
丁寧に王にするように僕を扱う。身体を洗ってくれるようだが、水で流すだけだ。前も洗おうとするが、其れは丁寧に断っている。万が一反応でもしたら、大惨事だ。
こそこそと自分で洗う。サッサと服を着てしまう。
「大介様は、私が嫌いですか?」
「そんなことはない。僕の国では、その様なことは、余りしないことになっている。」
適当なことを言って、はぐらかす。同じ事が繰り返されるのでいい加減うんざりしてきた。
在るとき服を着ようとして何気なくポケットの中を探っていたら、ビスケットが出てきた。
「なんだ?ビスケットが、何故ここに入っているのだ?」