火力に全振りしたら、VRMMO世界のモンスターが泣き始めた件
ノリでかきました。後悔してます。
よろしくお願いいたします。
~~~変人、ログインする~~~
発売初日、巷で話題沸騰中のフルダイブ型VRMMOに、一人の男がログインした。
名前はユウカイ。由来は「有機物など火力があればイチコロ」――略してユウカイ。
なお本人は無表情で淡々としており、名前の由来を説明する際もまったく照れたりしない。すごく怖い。
「火力……もっと火力を」
ログイン初日、初期ステータスを決める場面で彼が行った選択は、こうだ。
【ステータス振り分け完了】
筋力:999(上限) 耐久:1(紙) 敏捷:1(動かない) 魔力:0(知能ゼロ) 運:0(即死あり)
初期の草原ウサギ(Lv.2)に一発殴られてHPが蒸発。
それを20回ほど繰り返して“敵の攻撃を食らう前に倒す”という結論に至るまで、わずか1時間。
そして彼は、座ったまま動かず、敵をワンパンする不動の火力マンとなった。
~~~掲示板で晒される~~~
【攻略板】
スレ:初心者狩りの森 Part75
0024 名前:名無しの冒険者
また出たぞ、座って殴る変人。動かないから初心者かと思ったら、こっちが一撃で吹き飛んだ。
0031 名前:名無しの冒険者
24
火力厨ユウカイな。モンスターすら震えて逃げるって噂。
0033 名前:名無しの冒険者
31
さっき見た。ウサギに睨まれてログアウトした。俺が。
~~~美少女ギルドにスカウトされる~~~
ある日、彼の元にギルド勧誘の使者がやってきた。
「あなたが……ユウカイさん?」
現れたのは、トップランカーの美少女プレイヤー、アリア。氷属性使い、清楚系。しかもギルマス。
「もしよければ、うちのギルド《白銀の羽》に入りませんか?」
「嫌です」
即答だった。
「な、なぜっ……!? ここには癒し系ヒーラー、ツンデレ弓使い、元男の姫騎士まで揃ってるんですよ!?」
「それが問題です」
彼は、ソロにしか心を許さない。
~~~騎獣にビビられる~~~
騎獣システムが実装された初日。プレイヤーたちは皆、可愛いドラゴンやユニコーンを従えることに夢中になっていた。
ユウカイも例外ではなかった。
「炎竜バルゴン、忠誠を誓わせたい」
出現した炎竜はプライドが高く、普通ならプレイヤーに従うことはない。ところが――
「…………」
ユウカイが無言で睨んだ瞬間、バルゴンは地面に腹を伏せた。
その後、ユウカイの背に乗ったバルゴンは、常に目を逸らしていたという。
~~~ラスボスと初対面~~~
ある日、ユウカイはひょんなことからラスボスダンジョンの最奥に到達する。
ちなみに道中のギミックはすべて敵をワンパンで消し飛ばすことで突破した。
「この先に立ち入る者よ。我を倒し、新たな時代を切り開くがよい」
ラスボス《混沌の王ゼル=メギア》が現れた。
HP:9,999,999
防御:1,000以上
スキル:一撃死
それに対し、ユウカイ。
「…………(棒立ち)」
「な……なぜ動かぬ? 貴様、その構え……まさか……!!」
一撃。
ゼル=メギアは文字通り、蒸発した。
【システムメッセージ】
《混沌の王ゼル=メギア》を撃破しました。ゲームクリア特典が解放されます。
「火力……足りない」
まだ満足していなかった。
~~~ゲームの住民に崇められる~~~
ユウカイの名は、ゲーム内の伝説となった。
彼の行動はまとめられ、攻略サイトに「火力狂の生態」として掲載。掲示板ではスレが立ち続け、ファンアートが投稿されるほどに。
そして今日も、彼は“初心者狩りの森”の隅っこに座っている。
「ユウカイさん、なにか、私に教えてくれませんか……?」
新人プレイヤーの少女が震えながら近づいてきた。
「……筋力に全振りしろ」
その言葉に、少女のステータスが光る。
【ステータス異常:常識消失】を獲得しました。
~~~火力は、すべてを解決する~~~
こうして、ユウカイは今日も動かずに敵を倒す。
動かぬ山。静かなる終末。彼の火力はバグの域を超えて、神話へと突入していた。
公式運営曰く
「ユウカイさん、ゲームバランスを壊しすぎなので、次のアプデで筋力上限を下げます……」
だが彼は言った。
「ならば、スキル攻撃力に振るだけです」
運営が泣いた。
ありがとうございます。