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葬送のレクイエム──亡霊剣士と魂送りの少女【小説家になろう版】  作者: 深月(由希つばさ)
第11章 殲滅の宴

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第11章4話 主君と臣下

更新遅くなりすみません。

お楽しみいただけると嬉しいです(*´ω`*)


挿絵(By みてみん)


 ジェイドに呼ばれて司令官室に出向いたのは、夜も更け、宴のにぎわいも落ち着いてきた頃だった。


 昼間の戦闘の事後処理を一段落させて、くたびれた顔をしたジェイドが、机で書類仕事に向かっていた。



「いろいろと訊きたいこともあるかと思ってな……」



 まぁ座れ、とアスターにソファを勧める。



「悪かったよ。ろくに説明もしないで」


「…………」



 アスターの顔色を見て、言う。仕事に忙殺されたジェイドよりも、さらに疲れた顔をしていたのだろうと思う。


 こうしてジェイドと落ち着いて話すのは、王都リングドールに到着し、エヴァンダール王子に謁見(えっけん)して以来だった。



「俺もこの国に来たときには驚いた。謡い手部隊の魂解析(アナリス)のことは聞いたか? ……実はな、あれを開発したのはエヴァンダールなんだ」


「……エヴァンダール王子が?」



 アスターは目をみはった。腰にさげた剣に刻まれた、不死鳥の意匠を無意識になぞる。


 カトリーナと同じ褐色の肌と黒髪の、グリモアの第三王子。



「聖性という巫女個人の資質によらず、魔術で亡者を滅する秘技。それを魔術の研究者たちと一緒に共同開発した……天才だよ。魂解析(アナリス)のできる遣い手も今はそれほど数はいないが、いずれはもっと実践配備される予定だ」


「…………」



 魂送りのできる謡い手の不足を補うため、魂解析(アナリス)のできる魔術師を配置する。

 魂送りをする資質である聖性の多寡(たか)に左右されることもない。


 それは、とても生産的で……喜ばしいことなのだろう。

 けれど、アスターは手放しで喜ぶ気にはなれなかった。


 ──クロードが見ていたら……。


 交易町リビドで再会した彼ではなく、ノワール王国にいた頃──顔も知らぬどこかの国が滅んでは泣いていたあの優しい青年が知ったら、なんて言っただろう。

 亡者の魂を滅する秘技を見て、どう思っただろう。



「隊長はなぜエヴァンダール王子のところにいる。この国の現状を知って、どうして……?」


「……。おまえがクロード王子のことを慕っていたのは知ってる」



 静かな声に、ドキリとした。

 卓上の燭台の光がジェイドの顔に陰を落とす。

 無情な月明かりが、司令官室の窓からしらしらと降り注いでいた。



「おまえらは幼なじみだからな。情も出る。……けどな、俺はノワールにいた頃も、あの王子を信頼できなかった。陛下や貴族どもの顔色をうかがってばかりのあいつに、国をなんとかする力があるとは思えなかった」


「……っ。それは──」



 反論しようとして、アスターは……言葉に()まった。


 ──軟弱な王子。

 クロードが裏でそうささやかれていたのを知っている。


 クロードの優しさが好きだった。

 彼が王になった世界で、誰もが安心して暮らせる(みらい)を創ってくれると信じて戦場を駆けた。けど──

 ……みなが、そうだったわけじゃない。



「その点、エヴァンダールはすげぇよ。稀少な魔術を研究して、魂解析(アナリス)のできる謡い手たちを育てた。俺にとっては、クロード王子よりもよっぽど信頼できる。だから……俺はあいつに仕えるって決めた」



 自国の王子(クロード)よりも──

 他国の王子(エヴァンダール)を選んだ。


 亡者の脅威にのみこまれ、滅びを待つこの世界で──

 自分の信じる王子に仕えることを決めた。


 その選択を……アスターは否定することができない。



「この国で何を見て、何を選ぶかは、おまえの勝手だ。……けど、いつまでも過去の亡霊に仕えるのはやめろ。大事なもんがあるなら、なおさらだ」



 握りすぎたこぶしに、爪が食い込んで痛んだ。


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