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葬送のレクイエム──亡霊剣士と魂送りの少女【小説家になろう版】  作者: 深月(由希つばさ)
第10章 不死鳥のいざない

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第10章3話 逃亡奴隷②──捜索

挿絵(By みてみん)


 奴隷管理局の追っ手から逃げて、メルは無我夢中で路地裏を駆けた。


 少女の体格でやっと通れるような小道を抜け、生け垣の破れ目を突っ切る。それでも、背後を男たちが追ってくるかと思うと、バクバクと早鐘を打つ心臓が冷えた。



(助けて、アスター……!)



 アスターがいてくれたら、きっと、奴隷管理局の職員たちと渡りあってくれる。

 メルが奴隷管理局に捕まっても、きっと助け出す手段を考えてくれる……。


 でも──

 

 ……ぎゅっと目をつむった。

 守ってくれたアスターは、もういない。

 アスターは王都に行ったのだ。グリモアの葬送部隊に。

 ……そのことが今更になって胸に迫った。


 逃げて、逃げて──気付けば、何やら大きな天幕(テント)の乱立する広場にいた。



(…………? ここ、どこ……)



「グルルルル……」


「……きゃっ!」



 獣の臭いとうなり声、ガチャガチャという金属の音がメルの身体を恐怖ですくませる。

 そこへ──……男の声が迫った。



「誰だ。そこにいるのはっ」


「……!」


「待て、逃げるな!」



(……──っ!)



 叫び声が追いかけてくる。

 早くひとのいないところに……──

 早く……!

 はやく…………!



「待ちなさい……ったら!」


「!?」



 最後にかけられた声に、びくりと身をすくませた。

 追っ手の男たちとは違う──高飛車な少女の声。



「──まったく。この私から問答無用で逃げるなんて、どういうつもり!? 失礼にもほどがあるわ」


「……え……?」



 ……振り向くと、メルよりも少し年上の少女が仁王立(におうだ)ちしていた。


 金色の髪に(みどり)の瞳。暗がりにあっても舞台のスポットライトを浴びているかのような可憐な出で立ち。深紅(ボルドー)のワンピースを着た少女は、大胆不敵に微笑んだ。



「それとも──まさか。この私を忘れたなんて言わないわよねぇ?」


「…………フレデリカ、さん」



 間の抜けたメルの返事に、少女はにっこりと笑む。よくできました、と言わんばかりに。

 少女の背後──彼女がマネージャーと呼んでいた丸眼鏡の青年が、息を切らせて追いついてきた。



「に、逃げ足が速いな。全然追いつけないよ……」


「あら、ミランの足が遅いのよ。若いのに運動不足なんじゃなくて?」


「……うっ」



 フレデリカが軽口をたたくのに、丸眼鏡の青年がたじろぐ。緊迫した状況とは場違いなやりとりに思考が追いつかない。



「……なんでこんなところに……?」



 突如(とつじょ)として現れた花形(トップ)女優(アイドル)たちの姿に、メルは呆然(ぼうぜん)と立ちつくした。



  ☆☆



「あーあ、逃げられた。ライザちゃんが怖い顔するから」


「……課長と呼べ、アーサー。課長と」


「へぃへぃ」



 軽薄そうな部下に、ライザは目尻を()り上げる。……たかだか十四歳の少女と見て、甘く考えた。

 商館の職員たちの不満は頂点に達して、今にも部下たちに襲いかかってきそうだ。


 アーサーだけが軽々(けいけい)とした態度を崩さない。手にした鋼鉄の器具を見下ろした。



「どうするんです? せっかくグリモア行政府に許可もらって、足枷を()()器具までもってきたのに」


「小娘ひとりにかまってられるか。──日を改める」


「はぁーい」



 アーサーと残りの部下たちを引き連れて撤退する。……ひとりごちた。



「しかし、まったく解せないな。なぜ逃げる……。せっかく自由にしてやろうというのに」


「あー……。あれはライザちゃんの説明が悪いと思いますよー? 言葉足らずというか、何というか……」


「課長と呼べ、課長と」



 明後日の方向を見るアーサーを(しか)りつけながら、今後のことに想いをめぐらせる。

 足枷付きの小娘ひとりの足で行ける場所など限られている。しらみつぶしに捜せばいいだけだ。

 任務の遂行に、時間はかからないはずだった。


挿絵(By みてみん)


(↑↑花形女優フレデリカ。AIイラスト:狼駄様作✨)

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