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第61話 オッサン、帝国軍に石を投げる

「リエナ、なんでついてきたんだ……」

「だって~誰がバルドさまの回復サポートするんですか!」


 俺はマリーシアさまの本軍を離れ、襲撃された街の付近にまで接近していた。


 そしてリエナも……

 もう、ついてきちゃったものはしょうがないか。


 俺は気持ちを切り替えて、近くの丘から様子を伺う。丁度見下ろせて、街全体を把握することができる場所だ。


「う~ん。ちょっと遠くて、よく見えんなぁ」

「はい、バルドさま」


 リエナが望遠魔導鏡を渡してくれた。

 おお! 遠くまで良く見えるぞ!


「ほら~~私必要ですよね。ふふんっ!」


 ドヤ顔なリエナから貰った望遠鏡で、街の様子をぐるりと確認する。


「……やはり帝国軍だな。彼らの軍旗が見える」

「そんな……」


 恐らくは、フリダニアの混乱に乗じて侵攻を再開したのだろう。


「さて、問題はこの部隊が本体なのか? それとも他にも多数部隊が展開しているのか。う~む、街に降りて探りをいれるか……」


「ふふっ~~バルドさま~はい!」

「んん? なにこれ?」

「通信傍受石ですよ。これで近くの通信石情報を盗み聞きできます! 先日宝物庫にあったのを頂きました」

「おお! それは凄いな! こういう事態を見越してたのか? さすがリエナだ」

「え……いや、バルドさまがあやしい浮気通信してないかの……じゃなくてっ! そうですっ! こんな時もあろうかと準備してたんです!」


 何故かリエナの返答がしどろもどろしてたが、そんなことより早速使用してみる。


「あれ? 反応しないな?」

「あ、これ魔力を流し続けないと起動しないので、えいっ!」


 リエナが通信傍受石に魔力を流し始めると。


『こちら本部、魔導カノン砲の組み立ての進捗および魔導弾薬の運搬はどうなっている?』

『こちら集積所です。カノン砲組立80%完了! 弾薬の準備は完了!』


 おお! なんか聞こえてきた! 近くで通信しているってことか!

 横を見ると、リエナ本日2回目のドヤ顔である。


「かのんほう? ってなんだ?」

「バルドさま、あれ」


 リエナが俺の袖をチョイチョイ引っ張りながら、街のはずれを指さす。


「なんか長い筒みたいなものを作っているな……あれがかのんほうか?」

「私聞いたことがあります。帝国は魔力を砲弾にして、離れた場所を攻撃できる兵器があると」

「遠くを攻撃できる兵器か」

「威力は街を吹き飛ばす力を持っているとか。近くにある箱は魔力を詰めた砲弾でしょう」


 街のはずれは平地が広がっており、長い筒の他にはテントで覆われた大量の木箱が見える。


『作業を急げ! カノン砲が完成すればフリダニアの各防衛施設を叩くことができる。あとは本国より本軍が殺到すれば我が帝国の勝利だ!』


 再び魔導石から聞こえてくる、帝国兵の声。


 そうか。ここはフリダニア北部ではあるが、東西の真ん中に近い。

 ここにかのんほうを設置すれば、大部分が射程距離に入るのだろう。


 ゲナス王子と魔王軍、それにマリーシアさまの挙兵でフリダニア国内は混乱中だ。

 要所の防衛施設を無力化して、確実に占領する気か。


「ってことは、あのかのんほうを潰せばいいってことだな」

「え? まあそうですけど」


 こいつが帝国軍の要であれば、潰せば撤退するかもしれん。撤退しなくても大きく時間を稼げるぞ。


「まさかバルドさま1人で斬りこむつもりですか? いくらなんでも無茶ですよ!」

「リエナ、流石にオッサン1人で帝国軍に斬り込むなんてやらないよ。でも……」


「でも……?(嫌な予感がする)」


 俺は不安そうな声を出すリエナに、ある場所を指さした。


「え? 集積所ですか? あれが何か?」

「魔力をたっぷり詰めた砲弾が山のように積まれているんだ。1つでも爆発させることが出来たら―――」

「つまり、集積所の魔力砲弾を誘爆させるってことですね……でもどうやって」


「これだよ」


 俺はその場で拾った小石をポンポンとしながら、リエナに答えた。


「もしかして! キャルと朝練してたやつですか!?」


「ああ! リエナ少し離れてくれ」


 俺は大きく深呼吸して体内の【闘気】を一気に循環させる。

 そして膨れ上がった【闘気】を手の中の小石に全て注ぎ込む。


 むぅううん!


 上手投げのフォームで片足を高くあげ、腕のしなりが最高潮に達したところで……



「せぇ――――――い!」



 俺の手を離れた小石は赤く輝きながら、目標の集積所へ猛スピードで突っ込んでいく。


 頼むぞ! オッサンのなんちゃってメテオで、うまくいってくれ!


 着弾と同時に、閃光が街を覆いつくす。


 その後……


 ―――ズーンと大きな地響きが起こり、黒煙がモクモクとあがった。


 煙が引いて、全貌を確認できるようになると。


 街のはずれに大きなクレーターが出来ている。

 そこにはかのんほうも、集積所も何も無くなっていた。


「リエナ! うまくいった!」

「うわぁ……と、とんでもないですね。バルドさま……」


「うまく誘爆してくれたようだな。凄まじい威力の砲弾だな。全てを消し飛ばしたぞ」


「えぇ……誘爆とか関係ないような……いえ! なんでもないです! バルドさま凄い!」




 ◇帝国司令部視点◇



「フリダニアもとんでもないことになったものだ」

「ああ、内乱に魔王軍とはな」

「上層部はこれをチャンスと見て、貴様を司令官にしたか」

「ああ、砲撃部隊で防衛施設に打撃を与えたのち、各国境付近に配備した主力軍で進行予定だ」


 そこへ副官が顔を真っ青にして、駆け込んできた。


「せ、先遣の砲撃部隊より報告! 魔導カノン砲および全ての魔力砲弾を消失!」

「なんだと! 消失とはどういうことだ!」


「わ、わかりません! 「せいっ」という大声が響いたのち、空からなにかが飛んできて、全てが消え去ったとのことです!」


「「せいっ」だと!? ―――まさか!」


「砲撃部隊は敗走中ですが、主力部隊は健在です。今のフリダニアなら力押しでも勝てるかと思われます。いかがいたしましょう?」


「……撤退だ」


「え?」


「即時、国境付近の全兵を撤退させろっ! 計画は中止だ!」


「しかし……」


「しかしもクソもないっ! 早く各部隊へ伝達してこいっ!」


 副官は、大慌てで会議室から出て行った。


「おい……まさか」

「ああ、あいつだ。間違いない。主力まで、壊滅させるわけにはいかん」



 ―――悪魔の「せいっ」オッサン……生きていたのか。


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