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第54話 オッサン、アンパン屋でお貴族さまにビビられる

 うぉおおおお!


 す、凄い!


 俺は、いま感動している。ナトル王都の有名アンパン店に来ているのだ。

 あ、もちろん心の声だ。お店で本当に雄たけびをあげたら迷惑だからな。


 以前に王様から貰ったアンパン割引券(永久)。


 ―――やっと使う時がきた。


 色々あって使う暇がなかったが、ようやくだ。


 もう昨日は寝れなかったぞ。興奮しすぎて。

 みんなも後からお店に合流予定だ。ちなみに宿屋の店番はセラにしてもらう。


 オッサンもう我慢できなくて、フライングしてしまった。


 さて……みんなが来るまでに全商品を確認するぞ~~


 店内は宝の山だ。


 通常のアンパン、といってもお店により特色は違う。

 パンの生地から形状、中に使用するアンや香りなど。そのお店の特徴が必ずある。


 まず、通常アンパンは確保したいところ。


 それから―――


 むっ! この黄色いのはなんだ!?


 レモンアンパンだと……


 いかん、これは食べたことがない!


 レモンの酸味とアンでどういう美味になるんだ!

 などとウキウキしていると、お店のドアが開いた。


「あら~~ここがそのお店ですの~」


 新たなお客が来たらしい。が……俺の興味はアンパン一点集中だ。


「ちょっと、ナルキン伯爵夫人が来店してあげたのよ。わたくしに一礼もないのかしら!」

「こ、これは伯爵夫人。ようこそおいでくださいました」


 なんか店員さんがおばさんに絡まれてるな。会話の内容は良く聞こえんが、色々アンパンの説明をしているようだが。

 しかし……接客業ならばこの程度のことは日常茶飯事だろう。俺がしゃしゃり出ることでもない。


 というかアンパンの方が気になる!


「アンパンねぇ……やはり平民の底辺食ですわね。わたくしのような高貴な者には釣り合いそうにもないわ。もっと高い品はないのかしら?」

「いえ、商品はここに出ているものが全てです……当店はより多くのお客様に、アンパンを楽しんで頂きたいので……」


 おばさん……絡みすぎだよ。


 ―――しょうがないか……


「おばさん! アンパンは黙って選ぶもんだ!」


 あ~しゃしゃり出てしまった。

 しかしこのままだと俺のウキウキタイムが、雑音で邪魔されてしまう。


「お、おばさん!? なんて無礼な! このような小汚いオッサンをお店に入れるなんて! どうなってますの!」

「ああ……もしかして金が足りないから絡んでるのか? しょうがないおばさんだなぁ~」


 なるほど、どうしてもアンパンが食べたいんだな。それでいちゃもんつけてるのか……

 その食べたくて我慢できない気持ちは俺も良く分かるが、人に迷惑をかけてはダメだ。


 引き続き、何やらわめいているおばさん。


 ―――しょうがない。


 俺はポケットから一枚のカードを取り出して、店員さんに渡す。


「これを使って、おばさんの分も割引してあげられるか?」

「こ……これは! 王家の紋章!? あなたはもしや……」


 ん? なんか店員さんが慌てだしたぞ。


 まあ、割引券を他人にまで使うのはマナー違反ではある。そこはお店のジャッジに委ねるよ。

 ダメだとしたらおばさん……すまんが諦めてくれ。


「なんですって! ちょっと見せなさい! っ……!? 紛れもない王家の紋章ですわ! それに国王陛下の直々のサインまで!? あなたなに者ですの!」


 ただのオッサンだよ。


 そこへお店のドアが開く。


「先生~~あ、いた~~」

「バルド先生、先に行ってしまうんですから、アンパンの事になると見境ないのは以前と変わりませんね、フフ」


 アレシアとミレーネだ。


「なあぁああ! あちらの方は剣聖さまと聖女さまではなくて! 王城の祝賀パーティーで見ましたわ!」


 そして……


「バルドさま~~お待たせしました~」


 リエナもやって来た。


「ななななぁあああああ!! ひ、ひ、姫さま!!」


「あら? ナルキン伯爵夫人ですね? ご無沙汰しております、ご機嫌よう。バルドさまに何かご用ですか? 随分とまくしたてる声が店外に響いていたようですけど」


「ひぃいいいいい! ご、ご、ご機嫌よう~~。こ、こちらのオッサ……じゃなくて紳士とはちょっと世間話を……わ、わたくし、急用を思い出しましたぁ、失礼いたしますわぁああああ!」


 おばさんはとんでもない勢いで、店外へ飛び出して行った。


 なんだったんだ? あの人?


 まあいいか、そんなことより―――アンパンだ!


「いや~~どれにするかな~~迷う……」


 俺のアンパンを入れるトレーは何も置かれていない。

 だって、決めきれないんだもん。


 チラッと彼女たちの方に視線を向けると。


「あたしはこれにする!」

「ワタクシはこの紅茶のアンパンにします」


 ポンポンと2つのアンパンが俺の持つトレーに置かれた。


 ―――決めるの早くない?


 ちゃんと考えたの?


 この子達大丈夫かと心配している最中に、リエナもアンパンを置いてきた。


「バルドさま、悩みすぎですよ」

「いや、ここは悩みどころなんだ……あと少し時間をくれ……」

「ドラゴンにわき目もふらずに突っ込んじゃうのに……本当にアンパンが好きなんですね」


「ああ、リエナ。先生がこうなったら待つしかないぞ」

「そうですね、ワタクシの見立てだと、あと一時間はかかりますね」


「アレシア、ミレーネ……ウソでしょ。しょうがないですね……バルドさま」


「んん? なんだリエナ」


「好きなものを好きなだけ選んでください」



「な―――なんだとぉおお!!」



 おっと、店内で思わず叫んでしまった。ゴメンなさい。


「し、しかしリエナ。予算は1人2個までって言ってたじゃないか。予算オーバーは宿屋的に大丈夫なのか!」


「もう、アンパンで潰れませんようちの宿屋は。経理を受け持つ私が大丈夫と言うんだから、いいんですよ」


 黄金色の髪の毛をなびかせながら、俺の天使はそう呟いた。


 マジですか!!


 ヤバイヤバイヤバイ


 ってことは―――


「えと、まずレモンアンパンだな」


 それから―――


「キャルはこの塩アンパンにするの」


「よしよし、キャルは塩アンパンだな……」


 んん? 


 めちゃくちゃ聞き覚えのある声……


 次の瞬間―――


 何かが俺に飛びついてきた。小さいなにかが。

 俺はこの小さい何かに覚えがある……


「バル~~久しぶりなの~~~」


 そう、三神の1人、大魔導士キャルット・マージである。


 俺の元弟子だ。


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