表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/69

第48話 ゲナス王子視点 ゲナス、魔物の雨をあびまくる

「クソ~~なんでこの俺様がこんな辺境のクソ砦なんかに、逃げなきゃならねぇんだ!」


 王国最南端の岬にある古臭い砦。


「あたいこんな汚いとこやだよ~もっと都会がいい~~」


 悪態をつく女。

 たく、これが聖女だってんだから笑わせるぜ。


「おい、エセ聖女! ちゃんと【結界】をはれるんだろうな!」


「ふん! この砦程度ならいくらでもやれるわよ! 聖女なめないで!」


 なにが聖女なめないでだ。

 王都では【結界】が5分と持たなかったくせに! 


 まあ、しかし利用できるうちはしねぇとな。いくらこの砦が大森林から最も遠い場所にあるといっても、魔物たちがフリダニアを蹂躙して押し寄せてくるかもしれねぇ。


 エセ聖女もこの砦だけなら【結界】を維持できると言っているしな。というかあれだけ金を払ったんだ、しっかり仕事をしてもらう。



 ―――こんなところで終わってたまるかよ。



「なんだ砦の外が騒がしいな? なにやってんだ?」

「ハッ! ゲナス王子殿下! あれは砦周辺の民が集まっているのであります!」


 ああ……このアホっぽいセリフ。

 ヌケテルだったか、そういやこいつをここへ左遷したんだった。


「なんで下民どもが、俺様の砦に来やがるんだ?」

「ムフフ~王子殿下~それは下に行けばわかりますです!」


 はあ? 


 俺様は仕方なく砦の正門へ行ってやった。


「おお! あれはゲナス王子殿下だ!」

「来てくださった~~!」


「ご覧ください! みな王子殿下の庇護を求めているのであります! 周辺で魔物から民を守れる建物は、この砦だけでありますから!」


 ああ? 何言ってんだこいつ?


「さあ! いまこそゲナス王子の懐の広さを見せる時であります! 可能な限りの民を受け入れましょう! というか全員入れましょう!」


 だめだ……やはりこいつはイカレてる。


 ポイッ


 おれはヌケテルの首根っこを捕まえて、正門の外へ放り出した。


「―――!? ゲナス王子?」


「バカが! 貴様ら下民どもが俺様の砦に入れるはずがなかろう! 厚かましいにもほどがあるわ!」


「げ、ゲナス王子殿下! これはあまりの仕打ちであります! こんな時の砦はないのですか? 我々に死ねとおっしゃるのでありますか!」


 ―――ガシャン!


 俺様は正門を閉めさせると、サッサと砦の奥へと去った。


 なんだこのくだらん茶番は……


 まだ、下民どもの騒がしい声が聞こえている。

 あいつらはアホなのか? 王族と下民が対等な訳が無かろうが。


「俺様は正しいんだ……」


 1人自室でベッドにゴロリとなると、そばに置いてある手鏡から、鬱陶しい笑い声が聞こえてきた。


『ハハハ~そうだ。お主は正しいぞぅ』


 鏡だ。


 こいつは俺が城を出る際に、どうしても連れて行けと言うから持ってきてやったのだ。


「おい、鏡。あんまり調子にのってると叩き割るぞ、俺様のやり方に文句があるのか」

『ハハハ~お主はまったくブレんのう~負のオーラがムンムンしとる。たまらんのぅ』


「ちっ……」


 にしてもなぜ俺様が王代理になったとたんに、こんな事ばかり起こるんだ?

 戦争は負けるし、金山も失った。おまけに極大魔物大量発生メガスタンピードだと……


 クソぉ~~


 俺様がイライラしていると、ノックもなしに扉が勢いよくあいた。


「てめぇ! なに許可なしに入ってきてんだ! ぶっ殺すぞ!」


 勝手に入って来たクソ部下を怒鳴りつける。


「げ、ゲナス王子! な、何かが王国の方から……接近してきます!」


「はあ? 何かってなんだ! ハッキリ言え!」

「いや、その……何かです!」


 俺様は部屋を出て砦の屋上へと行くと、見張りの兵士がこれまたアホな事をほざく。


「王子! なんか王国の方から壁がきます~!」

「はあ? 壁が来る? アホか? 何言ってんだ!」



「おお! これは聖女さまの【結界】だ!」

「わ~い、お父さんあたしたちの村のほうまで壁が来てるよ~」

「うむ、こんな砦のしょぼい【結界】よりも向こうの方がいいぞ! 村に戻るぞ、みんな」


 砦の外に張り付いていた下民どもが、ギャーギャー騒ぎながら去りやがる。


 ……聖女だと! 

 あの女はもうフリダニアにはいないはずだ!


 なんなんだ……わけがわからねぇ。


「げ、ゲナス王子! 大変です! 魔物が空から降ってきます~~!」


「アホかぁああ! わかりやすいウソつくんじゃねぇええ……って……」



 ――――――なんだありゃぁああ!!



「とんでもない量の魔物です! 壁に押されてここまで飛ばされて来た模様!」


 ぐっ……だがこちらにも聖女がいる! 【結界】がある! 砦を囲う聖女の壁が……


 ―――おい! 


 壁あんのかよ! これ! どう見てもなんもねぇええぞ!


「ゲナス王子! 聖女殿は「こんなん無理~~」とか言って逃げました~!」



 ――――――クソがぁああああ!!



「うわ~~魔物の雨だ~~」

「応戦不能~~! 数が多すぎる~~」


 空から雨のように落ちてくる大量の魔物たち。

 全てが高速の弾丸となって、次々に砦に激突していく。


 クソぉおお、こうなったら、俺様の恐ろしさを見せてやる……って、なんだありゃああ!!


「ゲナス王子、上空から8つ首のドランゴンタートルが超高速で落下してきます!」

「あれはヤマタノシンリュウではないのか!? うわ~~とんでもない速度だ~逃げろ~~」



「てめらぁ! 俺様を置いて勝手に逃げるんじゃねぇえぇ―――ぎゃぁあああああああ!!」



 8つ首ドラゴンの落下とともに、砦は跡形もなく崩壊した。




 ◇◇◇




「グハァ……ハァ……ハァ……」


 大量の魔物の死骸を延々とかき分け続けること数時間。


「ハァ……ハァ……ようやく出られたぜぇ……」


 幸か不幸かデカい8つ首ドラゴンの甲羅が、後から降って来た魔物どもの雨避けになったようだ。


「ハァ……ハァ……」


『ハハハ~お主もしぶとい奴じゃなぁ~あれで死なんとはのぅ』


 俺様の前には粉々に砕けた鏡の破片が転がっていた。


 チッ……しぶいといのはてめぇも同じだ……ハァハァ。



 何とか生き延びたゲナス王子だったが、これから過酷な逃亡生活が待っているのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ