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第31話 ゲナス王子視点 ゲナス、聖女にあいそをつかされる

 ~聖女がバルドの宿屋を訪れる1週間前、フリダニア王国王城にて~



「ゲナス王子殿下~~ヌケテルただいま戻りましたです~!」


 クソっ、なんてバカっぽい声出しやがる。


 ナトル王国に派遣していたヌケテル将軍の部隊が帰還した。

 俺様の興味はナトルになど無いので、ショボイ少数部隊を送り込んでやった。全滅しても痛くも痒くも無い奴らをな。


 なのに……全員帰国しやがった!

 俺様の部隊は散々な目にあったというのに!


 それとなんでこいつは白い肌着のみで玉座の間に来てるんだ? 


 ―――俺様を舐めてるのか?


「おい! ヌケテル! 貴様っ、自慢のミスリル鎧はどうした!」

「はっ! バルド殿にパッカリ斬られましたっ!」


「はあ? バルドってあの追放した無能野郎のことか?」

「はい! そうであります! バルド殿に白ティーの素晴らしさと機能美を教えて頂きましたっ! あとバルド殿は無能ではありません!」


 バルドの無能野郎がミスリルの鎧を斬るだと? 


 ―――よくそんなウソがつけるな。


「バルド殿はナトル王国を救った英雄であります! このヌケテルの曇った目を覚ましてくれました! この白ティは吾輩の誇りであります!」


 はぁ……ダメだこいつは。完全に頭がいかれたらしい。なにが白ティだ。

 脳みそ曇りまくってるじゃねぇか。


「ふぅ~しかし山岳地帯の大敗で一時はどうなるかと思いましたが、まさかナトル王国が防衛に成功するとは! ヌケテル将軍、よくぞ大任を果たしてくれた!」


 横から宰相のピエットが口を挟んできやがった。


 クソが、思い出させるんじゃねぇよ。俺様は大事な金山を失ったんだぞ! ナトルなんぞどうでもいいんだよ! がそれを口に出すわけもにもいかねぇしな……イライラするぜ。


「ゲナス王子殿下、ヌケテル将軍とその兵にはじゅうぶんな褒美を用意しておりますが、ここはなにかしらの役職を与えるが良いかと」

「役職だと?」

「はい、ここまで大役を果たして、金銭のみでは王子の沽券に関わります」

「はぁああ~~役職ってもなぁ……んん?」


「おい! ヌケテル! 貴様をアダマン砦の城主にしてやる!」

「おお! 吾輩が城のあるじに! ありがたき幸せ~~」

「そうだ! 泣いて喜ぶがいいぞ~~」


 ケッ……バカが。

 アダマン砦がどこにあるのか知ってるのかこいつ?


 王国南部の最果てにあるんだ。たしか50年前に極大魔物大量発生メガスタンピードの際に使ったきりとか。


 グフフ~これでこのアホ顔も見納めだぜぇ。


「では吾輩は、我が城アダマン砦に向かうであります!」


 ヌケテルが退出すると、俺様は玉座で足を組んだ。


「ふぅ~しょーもない時間がやっと終わったか」

「いえ、ゲナス王子。このあと教会に向かいますよ」

「ああ? 教会だと? そんなとこ行ってなにするってんだ?」


「お忘れですか? 聖女様とお会いする予定ですよ」


 あ~~~あの女か……


「―――ピエット、おまえは来なくていい」

「な? 聖女様はわたしも来るようにと……」


「ふん、別の奴を連れて行く。―――お前よりも教会にふさわしいやつだ」




 ◇◇◇




 白で塗り固められた建物。


 ちっ、教会は嫌いだ。


 ボンクラ親父が無理やり俺様を教会に通わせた日々が蘇る。あいつらは何かあればウダウダと説教を垂れやがる。

 俺様が最も優れているのだから、説教などされるべきではないのにだ。


 だから教会は嫌いなんだよ。


 礼拝堂に入ると、中央に聖女ミレーネが立っていた。

 相変わらず外見だけはいい女だな。


「おい聖女、来てやったぞ」

「ゲナス王子、お越しいただきありがとうございます。あら? ピエット宰相さまはいらっしゃらないようですが?」

「ああ、ピエットは急用ができてな。そんなことより何の用だ? 俺様を呼び出すなど、よほどのことなんだろうな?」


「急用ですか……はい、わざわざ来て頂き恐れ入ります」


 ちっ、この目だ。


 俺様を見るこの冷たい目はなんだ。見た目はいいくせに、この目が嫌いだ。


「さっさと要件を言え。俺様は忙しいんだ」

「はい、以前より申し上げていた南部地帯への食糧配給はどうなっていますか? 不作続きで早く援助してあげないといけません」


「ああ、あれはもう少し待て!」

「待て? もう随分と待っていますが?」


「資金が足りんのだっ! 聖女ごときがいちいち国政に口を挟むなっ!」 

「……そうですか、出すぎた真似をしました」


 俺様は大事な金山を失ったんだぞ! 予定も変わるんだよ! 南部の農村どもごときに資金を割いてたら俺様の贅沢品が買えないだろうが!


 にしても―――またこの冷たい目。クソっ。


「要件は終わりか? では俺からも……」

「お待ちください。ワタクシにとって、最も重要なお話をしておりません」


 んだよぉ~~


「なぜバルド先生を追放したのですか? 理由をワタクシが納得できるように説明してください」

「はあ? バルドってあの能無し野郎の事か? 何かと思えばそんなくだらないことかよ。あいつは国の金を使い込んだんだよ! あろうことか王国の血税をな! 追放されて当然だろうが!」


「くだらないですって……意味が解りません。バルド先生はそのようなことは絶対にしません。しっかりと調査はされたのですか?」

「調査? 証言があったんだよ! 複数人からな」


「その証言者たちに会わせてください。ワタクシの【ホーリーグラフ】で無罪を証明してみせます」


 聖女の言う【ホーリーグラフ】とは、ウソ発見魔法のことだ。

 もちろん人の心を読むなんてことはできないが、ある程度の虚偽についてはわかるらしい。まあ使い手によりけりで精度も変わるらしいし、ぶっちゃけ眉唾もんだがな。


「その必要はない! 会う必要もないんだよ!」

「何故会わせられないのですか?」


「ホーリーグラフなら、あたいがかけたからだよ」


 俺様の後ろに控えていた女が法衣を揺らして前に出る。


「その方は?」


「ああ、こいつは聖女だ。クヒヒヒいい女だろ?」

「聖女……ですか?」


「そうだ、他国から大金をはたいて我がフリダニアに呼び寄せたんだよ。優秀だぞ~【結界】もとんでもないのをはれるぞ~~」


 さぁ~どうする聖女ミレーネ。

 おまえの変わりが来てしまったぞぉ。


 さあさあさあ~~土下座でも何でもして俺様への態度を改めるしかねぇええぞぉおお。

 そうすれば妾ぐらいにはしてやるぜぇ、おまえの身体は最高クラスだからなぁ~~グヒヒヒ。


「でしたらワタクシは不要ですね。この国からお暇させて頂きます」


「ああ? なに言ってんだおまえ? この国の聖女を辞めるってのか?」

「ええ、その方が聖女を引き継ぐのでしょう?」


「い、いや……まあそうだが……」


 なんだこいつ。辞めるなんて想定外だぞ。


「ならば、これは事実上の解雇としか思えませんが?」


 ぐっ……なにが思えませんが。だ!

 もっと焦れよ! 俺様に許しを懇願しろよ! 悲痛に満ちた顔を見せろよ!


「では、失礼します」


 聖女ミレーネは顔色一つ変えずに去って行った。


 ―――クソがぁ! マジで辞めやがった!


 もういい! 無能バルドの息がかかった聖女などいらんわ!




 ◇聖女ミレーネ視点◇



 ふぅ~~これでやっとワタクシも自由に動けます。


 王子の後ろにいたあの聖女、たしかにある程度の魔法は使えるようですね。恐らく【結界】もはれるでしょう。

 ですが……バルド先生に関してはウソをついていますね。



 だってこっそり【ホーリーグラフ(ウソ発見魔法)】を使いましたから、ワタクシ。



 ワタクシの【ホーリーグラフ】の的中率は通常60%~80%です。ですが、バルド先生の事に関しては的中率80~90%です。この魔法は想いが強い事ほど精度が上がりますからね。

 ちなみに、あの聖女は使用されたことに気づいていないようでしたが。


 本来この魔法は多用するものではないんですけどね。ウソをついてるかがなんとなくわかる程度とはいえ、勝手に人の心に入るんですから。


 ―――でも


 相手がゲスなら話は別です。

 こちらも欲しい情報は遠慮なくもらいますよ。


 バルド先生が使い込みなんて出来るわけないんです。あの人、アンパン買うのだってウンウン悩む人ですよ。


 ついでに、ゲナス王子にも【ホーリーグラフ】をかけようとしましたが、弾かれてしまいました。

 なにか邪悪な気配を感じましたが、正体は良く分かりません。


 まあいいです。あんなクソ王子はこちらから願い下げです。

 やっと国の重責から解放されました!



 さあ~~久しぶりにバルド先生の顔を見に行きましょう!


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