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第10話 ゲナス王子視点 俺様の金山は誰にも渡さねぇ

「クソがぁあああ!!」


 俺様は自室にて1人、荒れていた。


「この俺様の栄えある初戦が敗北だとぉおお!」


 なぜだ! なぜ敗れた! ノースマネアごときに!

 剣聖不在のまま突撃させたから? 剣聖の昇給をケチったから? 


 違う! もっと原因は別にあるんだ!


「そうだ! あの無能バルドのせいだ! あいつが剣聖アレシアをたぶらかしたんだ! そうに違いない!」


 でなければ、優秀な俺様の元から離れるはずがないんだ。


『ハハハ~随分と荒れておるじゃないか』


 俺しかいない部屋に別の声が響いてくる。

 俺様は部屋に飾られている「鏡」をギロリと睨みつけた。


「おい、「鏡」言葉に気をつけろよ。俺様は気が立っているんだ。はらわた煮えくり返るぐらいにな」


『ハハハ~けっこうけっこう~邪心はわしの糧じゃてな~~お主のは絶品じゃわい』


「チッ、減らず口を……お前ごとき、俺様の気分次第でいつでも叩き割られるってことを忘れんなよ」


 この減らず口を叩いているのは「鏡」だ。

 まんま鏡が話している。


 俺様がその昔、王城の宝物庫から引きずり出したら急にしゃべり出した。むしゃくしゃしてたので割ろうとしたら、親父をうまく失脚させる方法があるとか言ってきたので、話に乗ってやったのだ。


 それ以来、こいつは俺様の横でグチグチと話しかけてくるのだ。


 ちなみにこいつは人の邪心なるものを栄養源としているらしい。俺様の邪心は最高級などと世迷言をたれているが、俺様のどこに邪心があるのか皆目見当もつかん。

 俺様は至極真っ当な考えしかもっていないからな。


「にしてもブーブー文句を垂れるクソ貴族どもを黙らせるために、俺様の貴重な金を使うはめになるとは」

『ハハハ~あんなもの、はした金じゃろうが~お主には無限の金山があるのだからのう』


「ざけんな! あの金は全部俺様のものなんだ! 大陸を征服したら金の御殿を建てるんだよ!」

『ハハ~金の御殿とはのぅ。良いぞ~そんなこと考えるのはお主ぐらいじゃのう。じゃがその大事な隠し金山が危ないんじゃろう』


「鏡」のいう金山とは、俺様が保有する大事な大事な隠し金山のことである。

 以前廃坑になった金山で、新たな鉱脈が発見されたのだ。当時の関係者を全て買収して、弱みを握りまくって俺様だけの金山にしたのだ。これは親父ですら知らない。金山がノースマネアと国境線付近の山脈にあるため、そこまで目立たなかったのも幸いした。


 ―――凄まじく大変だった。


 ある時は金を大量に使い。ある時はスパイを大量に使い。またある時は暗殺者を大量に動員して。

 ちなみに当時使い込んだ国庫の一部は、バルドの野郎に使い込み経費として濡れ衣を着せてやったが。


 当時の親父に知れたら、即刻取り上げられていただろう。そして、王国内の貧困層への政策費だの、学校教育がどうだのと、くだらないことに使われてしまうことは目に見えていた。


 バカがぁ! 金とは強者のためにあるんだよぉ! そう、俺様のような! 貧困うんたらの役立たずどもはどうでもいいんだよぉ!


『ハッハ~じゃがお主の大事な金山が狙われておるぞ』


 そうなのだ―――


「―――ノースマネアのクソどもが侵攻してきやがる!」


『アッハ~そりゃそうじゃろう。こちらから先に攻めたんじゃからなぁ』


 そう、スパイより先日俺様が侵攻したノースマネアが、反撃準備中との情報が入ったのだ。


『優秀なゲナス王子が、このまま黙っているわけがなかろう?』

「ふん、やつらの侵攻予定ルートは2つだ。1つは俺様の大事な隠し金山からのルート。もうひとつはナトル王国を突破するルートだ」


 ナトル王国はわがフリダニア王国の同盟国だ。俺様が盟主であり、実質俺様の子分みたいな小国である。なので、名目上は盟主として援軍を出さないわけにはいかない。

 だが、先の戦争で消耗した俺様の軍は再編成中なのだ。よって余分な兵力はない。


『ならば、賢いお主が取るべき選択肢はわかっておるよな?』


「たりめぇだ! 俺様の金山が最優先事項に決まってんだろ! 金山に精鋭を配備する! ナトルのような小国にはどうでもいい部隊を派遣しといてやる」


 ノースマネアはおそらく金山の存在を知っている。そうでなければ、戦略的にはあまり価値の無い山岳地帯への侵攻などしない。

 金山周辺には、前回の戦争には参加しなかった守備兵を中心に防御ラインをひいてある。幾度となく敵の侵攻を防いだ来た屈強な兵士たちだ。



 ―――俺様の大事な金山を渡すかってんだ。



『アッハッハッハ~さすがゲナス王子じゃ! 100点満点の回答じゃぞ~』


「へっ、当たり前のことを言うんじゃねぇ。俺様の決断は常に正しいんだ」


『もちろんじゃ! お主は常に正しいわい』

(ハッハハ~やはりこの王子は最高じゃのう~動けば動くほど無限の邪心が湧き出よるわい~なんと煽りがいのあるやつじゃ~ヒヒヒ)



 この時、ゲナス王子はあることに気づいていなかった。歴戦のフリダニア王国精鋭守備兵の大部分が、元剣聖アレシア直属の精鋭部隊であることに。


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