1話 辺境の村にやってきました!
今日も1日がんばるぞ~
「アリスおねーちゃん! 行っくよーーー!!!」
「風刃!」
少女はそう叫ぶと手のひらから風の刃を私に放ち、突っ込んでくる。
「甘いよっ!!」
攻撃を紙一重で躱して、突っ込んでくる少女の足をすくい、無力化する。
しかし、安心してはいられない。
「はぁぁっ!」
隙ができた私の背後から、少年が木刀を振り下ろす。
だがその攻撃も私には見えている。
『能力』【万能感知】のおかげだ。
彼の攻撃を半回転しながら避け、手元に手刀を打ち込んで彼がうずくまったところで戦いは終了。
「2人ともまだまだだね〜!」
『ちくしょ~~!!』
地面に転がり悔しがる2人を、アリスはにんまりとした笑みを浮かべ上から眺める。
「”チセ”は敵に攻撃する時に、そのことを口に出しちゃだめだよ! 相手に対処するまでの時間を与えてしまうからね」
「次に”ユージ”! 『隙』に飛び込むのはいいけど無防備すぎだよ。 敵がどんな『スキル』や『能力』を持っているか分からない限り、油断しないこと!」
そう言って彼らにアドバイスを伝える。
おっと、こうなった経緯を言ってなかったね
私の名前はアリス・ミラ。
世界中を旅している白髪のショートボブで深紅色の瞳を持つ、めちゃくちゃカワイイお姉さんだ。
もちろんスタイルも抜群である!
「胸」以外は……
おい!そんな目を向けるんじゃない!
まあこんなことは置いといて、なぜ子供2人と戯れているのか説明しよう。
時は3日前に遡る。
***
「えっと…… ここが目的の村ね」
私はこの付近の森に存在するとされる、『何でも治り草』を採りに大陸の端の辺境の村へ来ていた。
噂によると、『何でも治り草』を焼いて食べると見た目がが10年若返るり、生で食べれば万病に効く薬となるそうだ。
見た目が10年若返る。
乙女には必須アイテムだ。
ちなみにだが、私はまだまだ若いぞ!
そんな事を考え、村のをくぐろうとしたその瞬間。
「やぁーー!!!!!!」
「えいっ!!!」
2つの陰が私に襲いかかる。
そう、”チセ”と”ユージ”だ。
「うわっ! 君たち大丈夫!?」
アリスは驚きはしたものの、反射的に返り討ちにしてしまい、逆に心配する。
どうやら彼らは村の『守り人』らしい。
不審な来訪者や森から降りてくるモンスターをこうやって退治しているのだとか……
アリスは、彼らに事情を話し、警戒を解く。
『アリスおねーちゃんはなんでそんなに強いの〜!』
起き上がった少年と少女は声を揃えて悔しそうに叫ぶ。
「私は『Sランク』冒険者だからね!!」
アリスは控えめな胸をいっぱいに張って
どやぁ!
と言わんばかりに満足気に頷いた。
「『冒険者』ってなぁに?」
チセはキョトンとしてアリスに聞き返す。
そうか、ここは大陸でも端の方の辺境の村だから冒険者って言っても伝わらないのね……
アリスは1人でそう納得する。
「とにかく、私はとても強いの。 貴方たちも『冒険者』になればもっと強くなれるわ!」
そう言うとチセとユージは目を輝かせる。
「ほんと!? でも、僕達は『あくま』から村を守らなきゃいけないから、冒険者にはなれないんだ……」
後に村長から聞いた話だが、この村では『モンスター』のことを『あくま』と言うらしい。
残念そうにする彼らを見て、アリスは1つ『提案』をした。
「それじゃあ、私がこの村にいる間、君たちを鍛えてあげる! その代わり『何でも治り草』を探すのを手伝ってくれないかな?」
***
これが今に至る経緯だ。
「よし! それじゃあ『何でも治り草』を探しに行こっか!!」
チセとユージに回復魔法をかけながらアリスは元気よく立ち上がった。
「おっけー!」
「任せてよ!」
2人もそれに続いて立ち上がる。
探索を初めて2日。
未だに大きな進展は無い。
「そういえばさ、なんで2人は『守り人』をやってるの?」
10歳を少し超える子供が、モンスターや不審者を追い払う役目を担っていることに疑問を持つ。
「前はね、僕たちのお父さんがやってたんだけど2週間前に行方不明になっちゃって僕たちが代わりにやることにしたんだ!」
ユージによると彼らの父親はこの村で1番強く、その子供であるチセとユージは父によく稽古をつけてもらっており、今では村で2番目に強いようだ。
村長達はチセとユージが『守り人』をする事に反対したらしいが、2人の意思で父の跡を継ぐことを決めたと言う。
「そっか、お父さん……無事だどいいね! もし良かったら、私も探すのを手伝うよ?」
「ほんと!? アリスおねーちゃん大好き!!」
そう言ってチセが私の胸に飛び込んできた。
とても可愛い。
妹が出来たらこんな感じなのかなぁ、とアリスは想像しながらチセのサラサラの髪を撫でる。
チセとユージは幼いものの、その実力はCランク冒険者にも引けを取らない。
『Sランク』である私が保証しよう。
と、言うことは彼らの父親はBランク相当の腕を持つはずだ。
この森のモンスターのレートは低い、集団で襲われればBランク冒険者でも危険だが、2週間ならまだどこかで生きているかもしれない。
そう考え、アリスは『何でも治り草』と『父親の痕跡』の2つを探すことにしたのだ。
そうこうしているうちに日が落ちてきたらしい、木々の合間から西日が差し込んできた。
「そろそろ日が暮れるから、帰ろっか!」
『わかった!! 今日は勝つぞー!!』
少年たちは元気に返事をすると意気込みを宣言する。
私とかけっこをしてどちらが先に村に着くことが出来るかの勝負に対する意気込みだ。
「それはどうかなぁ? キミたち~」
私は『風魔法』を使い彼らを煽るように先に進む。
『それずるいから禁止ー!!!』
必死に走るチセとユージを暖かい目で見ながらアリスは言う
「明日やり方教えてあげるから! ほら頑張れ!!」
「ほんと!? 絶対だよ!!!」
そう言ってチセとユージははしゃぎ始める。
まったく。 子供とはちょろいのぅ
先にゴールしたアリスは村の伝統料理『絹草のほうとう』を食べて床に就いた。
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