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9・アランの実力

 ある日の正午を過ぎたくらいの時間、Cランク冒険者アランはいつも通りソロで魔物退治をこなしていた。

 ソロである彼は、パーティーを組む他の同ランク冒険者よりも戦闘力が高い。

 だから、より手取りが多くなる様ソロでクエストに挑んでいるのだ。

 実際、冒険者はCランクになれば一人前、Bランクでギルドから贔屓される様になり、Aランクからは英雄の領域、Sランク以上に至っては伝説の存在になっている。

 よって、ずっとソロでCランクまで昇り詰めたアランは充分な程に稼げているのだ。

 しかもアランの場合は魔剣という強力な武器がある。


 魔剣は切れ味が良いだけではなく、その刀身に魔法を纏わせる事が出来るのだ。

 アランの場合は高火球(ハイファイア)という魔法で炎を纏われせるのが得意技だ。


 しかし、ソロには当然欠点がある。

 それは、どんなに個人が強くても、圧倒的な数の暴力の前では無力になってしまうという事だ。

 例えば今回の様に••••••


「いたぞ!アランだ!」

「囲め!相手は手練れだ!油断するなよ!」


 あらかじめアランが来るであろう場所に潜伏していた帝国兵達がアランを囲う様にして陣形を取った。


「な、なんなんだあんたら!?」

「悪いがお前には生捕りになってもらう」


 アランが叫び、その問いにリーダー格の兵が答えた。


「お、俺が何をしたって言うんだ!?」

「知らん。だがこれは皇帝様からの勅命なのだ」

「何でこんな事に••••••」

「抵抗しなければ痛みは無いぞ?」

「••••••」


 アランはこんな状況下でも頭を冷静にし考える。


(なんだ?最近になって皇帝に目をつけられる事••••••)


 そこでアランはハッとする。

 これは恐らくユウトと優里の事だと。

 アランは、2人が、特に優里が皇帝の事を嫌っている事を良く知っている。

 優里は皇帝と知り合いなのだろうと予想がつく。

 そして最近の変化と言えば2人と仲が良くなった事。


 ここでアランは察する。

 自分を人質に取り、優里かユウト、またはその両方を国に降らせるのだろうと。


 アランは意外にも常に熱いタイプの冒険者だ。

 友を裏切る等もってのほか。


「事情はだいたい把握した。来るなら来い!相手してやる!」

「••••••そうか」


 自慢の魔剣を構え啖呵を切るが、アランは勝算は薄いと考えていた。

 あまりにも数が違いすぎるからだ。

 だが、何もせずに大人しく捕まるなど、アランには考えられなかったのだ。


「正直、素性も知らない者を痛ぶるのは趣味では無いが••••••仕方ない。やれ!」

「「「「は!!!」」」」


 リーダー格の男が部下達に指示を出した。

 そしてその部下達が全方向からアランに向かって槍で攻撃をした。


 しかし、それだけでやられるアランではない。


「ハァアアァ!!!」


 アランは魔剣に高火球(ハイファイア)を纏わせ、正面からくる兵達に豪快に振り抜く。

 そして、魔剣に纏っている高火球(ハイファイア)を解除し、怯んだ兵達を的確に気絶させる。


「ほう、やるではないか」

「ま、伊達にソロでCランク冒険者やってないんでね」

「だが、まだまだ数はこちらが優勢!お前達、怯むな!行け!」

「そう簡単に退いちゃくれないよな」


 軽口をたたきつつ、お前達じゃ相手にならないとでも言いたげに軽々と兵達を気絶させていくアラン。

 しかし、一方で兵達は突撃を止める気配はない。


(なんだ?なぜ退かない?)


 兵達の数は残りわずか十数人になっていた。

 だと言うのに退く気配は一切ない。


 この状況にアランは違和感を感じつつも残りの兵達を片付けていく。


 そして残るはリーダー格の男のみとなった。


「見事だアランとやら」

「ここまで追い込まれて何故退かない?」

「さて、何でだろうな?」


 リーダー格の男はそう言いつつ剣を構える。


(この男、強いな)


 アランは素直にそう思った。

 

 一見隙だらけに見えるが、どこから攻撃してもカウンターで倒される未来が見えたのだ。

 そう思われせる程の何かがこの男にはある。

 アランはそれを長年の直感で感じ取っていた。


「では、参る!」

「くっ、」


 男がそう言い放った途端、目で追うのがやっとな程の速さで間合いを詰めた。

 その攻撃にアランは咄嗟に防御を取るしかなかった。


(こいつ、やっぱり強いな。なら!)


濃霧(ミスト)!」


 アランはこの魔法で霧を生成し、男から距離を取った。

 そしてーー


高火球(ハイファイア)!!!」


 アランはそう叫んで魔法を男がいる方向に10発ほど連発した。


 そして霧が晴れ、そこには傷だらけで倒れた男の姿があった。


「うっ、流石に魔力を使い過ぎたな」


 アランが戦いが終わったと思い油断した瞬間、


「グハッ!」


 何者かに後ろからナイフを刺され吐血した。


(な、誰だ!?)


 そしてアランがリーダー格の男を見ると、そこには倒れながら笑みを浮かべる姿があった。


「さ、最初から、これが、狙い、か!?」

「ああ、その通りだ」


 アランを刺した男がそう答える。


 そして刺されただけではあり得ないほどの眠気がアランを襲う。


(っ!何だ!?毒か!?)


「ど、毒、か?」

「ふむ。普通なら即気絶するんだが、流石だな。だがもう遅い」

「くっ、す、すまない。2人、とも••••••」


 アランはそう呟いて地面に倒れ伏した。

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