閑話 邪竜生誕①
すみません!忙しくて全然投稿できませんでした!(言い訳)
時系列がだいぶ戻り、ファフニールが異世界に産み落とされたばかりの話になります。
閑話となっておりますが、読み飛ばすのはおすすめしません。
所々に大事な内容があるかもしれません!
ピキッ、ピキッ、と、標高10000mを超える神山の頂上より、何かの卵が割れて何かが産まれようとしている音がする。
そして割れ切った卵の中から声が聞こえた。
『ん••••••、ここは••••••』
その少しノイズのかかった声の主は、ゼウスの権限によってこの異世界、レイオットに生み出された、創り出された邪竜ファフニールであった。
その姿は、生まれたてにも関わらず5mを優に超えていた。
『そうか。俺は本当に転生したんだな••••••』
ラノベ好きのファフニールからしたら信じられないほど感動的な光景だった。
標高10000mを超える神山から見る景色はまさに絶景。
その日はファフニールを歓迎しているかのように天気が良く、雲より高い頂上からでもその美しい光景を目にする事ができた。
寧ろ、多少の雲がかかる事で美しさが倍増していた。
ファフニールが感極まるには十分過ぎた。
そしてファフニールは決意する。
ーーこの世界を守り抜く。
と。
そのためならどんな非道も躊躇わない。
例えその種を絶滅させてでも。
例え普段の生活が駄竜に見えたとしても、その内に秘める覚悟だけは本物なのだ。
しかし生まれたてのファフニールは力が無い。
どんなにポテンシャルが高くても、鍛えなければ図体がデカいだけのただのカカシだ。
よってファフニールはまず魔力操作の訓練をする事にした。
魔力操作は魔法を使う大前提、この世界に来る時、ゼウスから貰った知識のうちの1つだ。
しかし、これが中々うまくいかない。
当然だ。
ファフニールは元々、魔力など縁のない地球に住んでいたのだ。
だがここで折れるファフニールではない。
『集中しろ!俺!』
そう自分を奮い立たせ、魔力操作の訓練に三日三晩明け暮れた。
三日三晩という文字通り、訓練を始めてから三日後、遂に魔力を感知し操作する事ができた。
しかしこれでは精度が甘すぎる。
人間が使うような簡単な魔法ならこの精度で扱えるが、重力魔法や竜撃魔法などの高等魔法は更に精密な魔力操作を要する。
ファフニールは数時間の睡眠をとった後、再び魔力操作の訓練に明け暮れた。
実を言うと、ファフニールが目的としているのは重力魔法や竜撃魔法などの高等魔法ではない。
彼が目指しているのはその遥か上の高み、魔術の習得だ。
どんな高等魔法でも、それは所詮、決まった型に魔力を注ぎ込んでいるだけに過ぎない。
ではその型の原点となっているのは何か。
それが魔術だ。
魔術とは、どこにも決まった型など存在せず、想像を絶する程の緻密な魔力操作を利用し、自分のイメージを具現化する術の事だ。
例えば炎を魔術で創り出したいなら、まず頭の中で限界まで具体的に炎を想像する。
どこに、どんな形で、何を媒体にできているのかを。
そしてそのイメージを緻密に魔力を操作して具現化させる。
それが魔術だ。
この魔術に限界など存在せず、時には竜撃魔法さえも凌駕する威力となることもある。
とはいえ、こんな行動技術をいきなり手に入れることは不可能だとファフニールは理解している。
だから先に魔法の習得に明け暮れるのだ。
その日、ファフニールは竜撃魔法とまではいかないものの、重力魔法程度までなら使えるようになっていた。
が、ここ最近、集中が続かなくなってきた。
魔力操作の訓練に最も重要なのはいかに集中できるかだ。
だから、集中できていない状態でやってもほぼ無意味だ。
よってファフニールは気分転換に運動を兼ねて、山を降り、その辺の魔物と戦ってみる事にした。
『はぁ、はぁ、はぁ』
標高10000mの神山を降り切ったファフニールは酷く息を切らしていた。
この馬鹿でかい山を降り切るために丸1日動き続けたのだ。
ある意味魔力操作の訓練よりも疲れるだろう。
神山を降り切ると、そこには鬱蒼とした森が広がっていた。
ここなら魔物の類もいるだろうとファフニールは推測した。
ドス、ドス、ドスン!
『!』
そこそこ大きな足音にファフニールは警戒する。
そして森の木々を薙ぎ倒しながら進んできた足音の主がファフニールに姿を現した。
そこに現れたのは恐竜のような見た目をした魔物だった。
『これじゃ魔物っていうより恐竜だなぁ』
ファフニールはそう呟いた。
その魔物はまるで、かの有名なティラノサウルスの様な見た目をしていた。
しかし、地球のそれとは決定的に違うところがあった。
そう、この魔物には尻尾がないのだ。
あれは本来、体重のバランスを保つための重要な部分の筈なのだが。
そんな少し間抜けな魔物を見てファフニールは何だか拍子抜けしてしまう。
しかし、どうやら油断してはいけないタイプだったらしい。
その間抜けな見た目からは想像できない速さでファフニールに迫った。
『っ!』
しかしファフニールは持ち前の反射神経で間一髪攻撃を躱す。
『油断大敵だぞ!』
ファフニールそう自分に言い聞かせる。
しかし、頭では分かっていてもその絶妙に面白いフォルムを見るとどうしても笑いが溢れ出そうになる。
そしてその隙に魔物は攻撃を仕掛けてくる。
『くっ』
そんな攻防が何度か続いた後、ファフニールは思った。
『えーい!こうなったらやけだ!』
このままでは埒が開かないと判断したファフニールは魔物が攻撃してくるよりも前に自分から攻撃を仕掛けることにした。
『は!』
ファフニールの渾身の右ストレートがあっさりと魔物の腹を貫いた。
••••••竜の姿だが右ストレートだといったら右ストレートなのだ。
戦闘後、ファフニールはふと思う。
ーーこれ、遠距離から魔法使えば良かったんじゃ。
と。
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