15・帰還
「よし、これで一件落着かなぁ」
ファフニールはいつもの宿に転移し、ベッドにどさっと体を任せながら呟いた。
「それにしてもアレクシアの奴、頭の中ピンクすぎるだろ」
真昼間なのにも関わらず夜這いと勘違いされた事を思い出していた。
そんな時ーー
「ただいま」
「おかえり」
気絶したアランを抱えた優里が同じように転移していた。
アランの状態は、気絶しているだけで、傷はもうすでに優里の治癒魔法で完全回復している。
そして大事に抱えられているアランの様を見てファフニールは、
「転移」
「!」
アランと場所を入れ替えて自分が優里に抱えられている状態になった。
「こういうポジョンは俺専用だよ」
「もう、やきもち妬いてるの?」
「そりゃあ妬くさ。いくら親友とはいえ自分の恋人と密着してるんだよ」
「ふふっ、それもそうね」
2人が超絶甘々な空気を作り出そうとしたそのとき、
「ん、あれ?ここは?」
「チッ。お、アラン!目を覚ましたか?」
「チッ。もう大丈夫よ。ばっちり助け出したから!」
「うん。助けてもらった事には感謝するけど、何で舌打ちされたの?ねえ、なんで?」
「「舌打ちなんてしてないよ」」
「いや、絶対したよね?よね?」
「「そんなわけないじゃないか」」
「いや•••••••ああ、わかった。俺は舌打ちなんてされていない」
声を合わせて息ぴったりに舌打ちを否定してくる2人対して、諦めたように言うアラン。
「まあ、そうだな。改めて、助けてくれてありがとう」
アランは2人に対して深々と頭を下げた。
「アランが無事でよかったよ」
「そうね」
それに対して2人は当然のことをしたまでだと言わんばかりの回答をした。
「そしてすまなかった。俺が不甲斐ないばかりにーー」
「いいよ別に。謝らなくても。俺達がしたくてやったことだ」
「それに、迷惑だなんて思ってないわよ」
「そういうことだ。まあ、今日のところはゆっくり休むといいよ。傷は治ったとはいえ、心の傷は癒えないだろうからな」
「2人とも••••••わかった。今日のところはゆっくり休むとするよ」
「どうせなら宿まで送っていくよ」
「悪いな」
「いいってことよ」
申し訳なさそうな顔をするアランに対してあっけらかんと答えるファフニール。
アランは思わず拍子抜けしてしまう。
「じゃあ、頭の中でお前の泊まってる宿の場所を思い描いてくれ」
「?どういうーー」
「いいからいいから」
「わ、わかった」
言われた通り頭の中に自分の泊まっている宿を思い描いたアランの頭にファフニールは手を置いた。
そして呟く。
魔法の名を。
「感覚共有」
ファフニールはアランと感覚を共有し、思い描かれた宿の見た目を記憶する。
そして竜眼で辺りを見回しその宿を探す。
「見つけた。よし、もういいよ」
「ああ。しかし、一体何を」
「行くぞ!転移」
そしてファフニールとアランはその宿の前に転移した。
「て、転移魔法!?」
「この魔法、結構便利なんだよ」
「便利って••••••まあ、お前の規格外っぷりは今に始まったことじゃないか」
アランはファフニールのことをジト目で見てはいるが、この1ヶ月でファフニールが規格外だということはよーく思い知らされたのではしゃいだりはしなかった。
「さ、今日はもう休め」
「ああ、そうさせてもらう」
「じゃ、俺は帰るよ」
「じゃあな」
「じゃあね。転移」
そうしてファフニールは優里のいる宿へ転移し戻っていった。
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