13・押し付けます
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これからもたのしんでいただけたら幸いです!
「改めて自己紹介させてもらおう。俺の名前はファフニール。最恐の邪竜だよ。今回は君に頼みがあって来た」
「••••••」
アレクシアはあまりの驚きに思考をフリーズしてしまった。
ファフニールが「おーい!おーい!」と声をかけても全く反応がない始末だ。
「完全にフリーズしちゃったよ。これじゃ話が進まない••••••」
ーーそれから数分後
「え!?ゆ、ゆゆゆ、ユウト様が邪竜ファフニール!?」
「おわっ!?びっくりしたぁ。うん、まあそうだよ。ってうわっ!?」
唐突に超絶遅れたリアクションを披露されてファフニールは隣の壁に頭をぶつけて大穴を開けてしまった。
「あ、アレクシア。これどうしよう?」
「へ?あ、ああはい。これくらいならこちらで直しておきますよ」
「助かるよ」
なんだかより一層解放感のある部屋になったところで話を戻す。
「まず、俺が邪竜だということが理解できた?」
「いや、その。いまいち実感が湧かないと言うか••••••」
「うーん、まあ仕方ないか。なら、竜人化!」
そういうとファフニールの腕や脚、目の周りに竜の漆黒の鱗が生え始め、爪が鋭く伸び、頭からは竜特有のツノが生えて来た。
竜人化。
ファフニールがこの1ヶ月間で生み出した、人の姿のまま竜の力を得ることができる究極の魔法だ。
竜の姿では機動力が失われて、人の姿では大幅にパワーが落ちてしまう。
しかし、この竜人の姿は違う。
人の姿のときの機動力を保ったまま、完全ではないが大半の竜の姿でのパワーを兼ね備えることができるのだ。
「こ、これは信じるしかないですね••••••」
この世界の竜でこれ程までに漆黒の鱗を持つ者は存在しない。
ファフニールを除いては。
そして竜人化の魔法は伝承で伝わっている。
この事からアレクシアは納得せざるを得なかったと言う訳だ。
「それで、頼みを聞いてくれるかな?」
「••••••そうですね。例え邪竜であってもユウト様はユウト様です!何でもお申し付けください!」
「そ、そっか。でもその前に1つ。4人の召喚された異世界人達が帝都の外にいるのはなぜ?」
「!」
「心当たりがあるみたいだね」
「お見通しですか••••••実は、私が騎士団長に頼み、帝都から逃したのです」
「理由は?」
「確かに彼らは強力な力を持っています。でもそれ以前に彼らにこの世界との関係は一切ありません。それなのにこちらの勝手で召喚するなど誘拐と同じです。だから、せめて軍事利用されないために帝都の外へ逃したのです。恐らく、もう時期帝国からも出ていくでしょう」
「どうやら、君が1番状況を理解しているようだね。次期皇帝の座に相応しい。君に頼もうとして正解だったよ」
「それは何よりです!」
ファフニールは心の中で「その狂信的な眼差しが無ければね!」と悪態をつく。
「さて。まず、君の父、皇帝ドルドティスが死んだ」
「っ!な、なぜです!?」
「皇帝は俺以上に優里。俺の恋人の怒りを買った。尋常じゃないほどの怒りだ」
「い、一体父は何をしたのですか?」
「まず、優里は召喚された異世界人の1人だ。そしてその異世界人の中でも最強の人だ。その優里を帝国の物にするために、皇帝は俺たちの友、アランを人質に取った」
「!」
アレクシアは場の空気が異常なほどに歪むのを感じ取った。
そして2人の怒りが尋常ではない事を理解した。
「そして優里は皇帝を殺すと俺に宣言した。だから皇帝が死んだ」
アレクシアは内心「それだけの理由で父上が」と思ったが、ファフニールと優里の怒りも理解できるし、何よりそれを口にすれば間違いなく死ぬということを本能で察知し、口にすることはなかった。
「それでだ。君には後始末を頼みたい。俺は面倒事が嫌いなんだ」
「で、ですが後始末と言われても、私にそれ程の権力はありませんよ」
「そこは心配いらない。君が、皇帝になればいい」
「わ、私がですか!?」
「そうだよ」
「わ、分かりました!必ずや完璧に任務を遂行致しましょう」
アレクシアはファフニールに跪き宣言した。
「お、おう。頑張ってくれたまえ?」
アレクシアの大袈裟な素振りに思わず疑問系で返してしまうファフニール。
しかし、そんなことは気にせず別れの言葉を告げる。
「それじゃあ、後は頼んだよ」
「はい!」
「転移」
こうしてファフニールはアレクシアに面倒事を全て押し付けて宿に戻っていった。
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