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12・残念皇女再び!

 皇帝の地獄が終わりを迎える頃、ファフニールはアレクシアの部屋の前に転移していた。

 

(皇帝が死んだとなると大騒ぎになるからなぁ。めんどくさいけど、後始末は俺がやらなきゃだよな)


 そう思って、自分に異常なまでの信仰心を抱いているアレクシアに協力を仰ごうとしたのだが、どうやら部屋に結界が貼られているようだった。


(なるほど、皇帝も死人が出ることは想定済みか••••••)


 恐らく、残酷な光景を愛しの娘に見せたくはなかったのだろう。


 だからこそファフニールは皇帝が気に食わなかった。

 邪神である自分が言えたことではないが、死人が出ることが分かった上で行動に移した事が愚かに思えて仕方がないのだ。


「ん?あーなるほど。魔道具か」


 ドアの隅に設置されている魔道具を見て呟いた。


 この結界、ファフニールでも壊すのに少し手間取ってしまうほどに完成度が高いのだ。

 しかし、それ程の腕前を持つ者は確認できなかった。

 それに、できる可能性がある者も今は不在のようだ。


 だから初見では、一体どうやって、と思ったが、魔道具なら納得がいく。

 過去の偉人が作り上げた傑作なのだろうと予想がつくからだ。


 そして、この結界が魔道具によって作り出されたものなら対処は簡単だ。

 結界を作り出している本体、魔道具自体を破壊してしまえばいいのだ。

 そうすれば、発電所が破壊された街が停電するように結界は消えていく。


 本来、この魔道具は中々の強度を誇るものだが、そこはファフニール。

 邪竜と呼ばれる破壊のスペシャリストだ。

 唯一結界を壊すのだけが苦手なのだが••••••


 そしてバキッ、と音を立てて魔道具を握り潰し、ドアノブに手をかける。

 そして、


「入らせてもらうよ」


 ガチャ、という音を立てて部屋に入った。


 そこはいかにも皇族といった感じの豪華な部屋だった。

 まずはなんと言ってもその広さだ。

 普通に日本の家のリビングくらいの大きさがある。


 その光景に思わず「広っ••••••」と声を漏らしてしまうファフニール。


 そして次に至る所で光り輝く装飾品の数々。

 それだけで皇族がどれだけ金持ちなのかが分かる。

 

 そして本当に1人で寝ているのかと疑問に思ってしまうほどに大きいベッド。

 見ただけでふかふかだと分かるベッド。

 誰しも一度は憧れるベッドだ。


 そしてそこでティータイムを1人で楽しんでいたアレクシア。

 そんなお洒落で優雅なな空間はファフニールによって見事に粉砕された。


「え!?ちょっと誰ですか!?ってユウト様!?」

「うん、勝手に入ったのは謝るけど一回落ち着こうか!」

「で、でもどうしていきなり?はっ!ま、まさか夜這いに?」

「違うわ!」


 上目遣いで顔を赤らめながらとんでもない事を言うアレクシアの言葉を瞬時に否定するファフニール。


(これが優里に聞かれたら••••••)


 考えてゾッとするファフニール。

 ファフニールが頑丈だということを利用してとんでもない拷問が始まるに決まっている、と考えた。


 くしゃみをしているであろう優里はファフニールに一体何をしたのだろうか。


「で、ではどうしてこちらに?」

「あ、ああ。実は1つ頼みがあってね」 

「頼み、ですか?」

「うん。だけどその前に1つだけーー」

「やっぱり夜這いですか!?」

「違う!!!」


 ファフニールの言葉は遮って何故か嬉しそうな表情で言うアレクシアの言葉を即座に否定するファフニール。


 ファフニールは咳払いをして話を戻す。


「では聞こう」

「っ!」


 いつも砕けた口調で接しやすい態度をしていたファフニールが口調を強者のそれに変え、雰囲気を真面目で高圧的な雰囲気に変えた。

 その雰囲気に息を呑むアレクシア。


「そなたはなぜ邪竜を嫌う?」

「そ、それは、人類の、世界を滅ぼしうる害悪だからです」

「ふむ。ではなぜ邪竜が破壊の限りを尽くすのか、分かるか?」

「気まぐれではないのですか?」

「では、邪竜が滅ぼした国々の特徴は?」

「わ、分かりかねます••••••」

「それは、文明が発展しすぎた国なのだよ」

「そ、それの何が悪いのですか!?」


 声を荒げ、怒りを露わにするアレクシアを手で制す。


「文明、化学や魔道具、そして技術だ。それが発展しすぎると人類は、知性ある生物達は自滅の道を辿ってしまうのだよ」

「なぜです?文明や技術が発展すると人々の生活は豊かになるはずです」

「確かにそうだ。途中まではな。発展しすぎた技術は何に使われると思う?」

「建築、医療などでしょうか?」

「それもあるが、答えではない。正解は戦争だよ」

「戦争••••••」

「そうだ。人々は国家間での争いを止めることができないのだよ」

「それは••••••」


 アレクシアは何か解決案を出そうとするが、思いつかなくて言い淀んでしまう。


「だから邪竜は文明が発展しすぎた国々滅ぼす。それが真相だ」

「で、では!人々は殺さず、その技術力だけを滅ぼせばいいのでは?」

「技術の知識。それだけで充分すぎるほどに文明は発展してしまうのだよ」

「••••••」

「その事を忘れないことだね」


 ここまで来てファフニールは緊張感のある雰囲気を解き、砕けた口調に戻した。


「さてと。俺がこの話をした理由が分かるかい?」

「まさか!?」

「そう。そのまさかだよ」


 ファフニールは笑みを浮かべながら言う。


「改めて自己紹介させてもらおう。俺の名前はファフニール。最恐の邪竜だよ。今回は君に頼みがあって来た」


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