11・容赦はしない
「さっさと行くとしよう」
優里はそうとだけ呟いて城の入り口へ足を進め、城内に侵入した。
当然、唐突な侵入者を見て見ぬふりをするほど城内の兵は甘くない。
「っ!貴様!何者だ!」
「重力増加」
「グハッ!」
しかし、誰一人として優里に敵う者はおらず、時間にして僅か10分足らずで皇帝がいる玉座の間にたどり着いた。
もちろん、玉座の間の扉を守護する兵も存在する。
しかし、
「重力増加」
呻き声を発する事すら許されず事切れた。
そして、
「身体強化」
身体強化で脚力を増大させ、横幅縦幅共に7m程ある巨大な扉を軽々と蹴飛ばし破壊した。
「っ!何事だ!?」
あまりの轟音に、皇帝が玉座から立ち上がりながら声を荒げた。
皇帝を守護する近衛兵達も動揺していた。
対する優里は冷静に、
「落ち着きなさいよ」
いつもよりも数段低いトーンで話しかけた。
「ほ、星野優里か。ここまで何の音沙汰も無しに辿り着くとは。しかし、こちらには人質がいる。そこで大人しくしていろ」
皇帝がそう言い、1人の兵が気絶し、手足を縛られ、身体中にあざやたんこぶができたアランに剣を突き立てた。
そのアランの様子から、相当な拷問を受けていた事が予想できる。
「外道が」
優里は凄まじい怒気を孕んだドスが効いた声を出した。
皇帝達はそれに思わず鳥肌を立ててしまう。
「まあ、お前達の茶番に付き合ってあげる義理は無い。アランは返してもらうわ」
「お、おい!へたに動けばこの男を切るぞ!」
優里がそう言った途端にアランに剣を向けている兵が叫んだ。
しかし優里がそんな事を気にすることはない。
「転移」
優里はそう呟き、器用に手足を結んでいた縄を対象から外しアランだけを自分の元へ転移させた。
転移は、普段は自分を転移させることが主だが、他人を転移させることもできる。
この場合は目に見える範囲のものに限られるが。
「な、何が起きた!?」
唐突な事態に皇帝や近衛兵達が動揺を露わにする。
「アランだけを私の元へ転移させただけの簡単なお話よ」
優里は何事もなかったかのように説明する。
「それから、私は言ったはずよね。『関わるな』と」
「••••••」
皇帝たちは唾を飲む。
「それなのに関わるどころかお前たちは私の友に手を出した!当然、許されるなんて思ってないわよね?」
優里は、見た者の恐怖を煽るような笑みを浮かべる。
「まあでも、皇帝以外には直接的な恨みはない」
「な、ならばーー」
優里の言葉に反応し、1人の兵が声を上げるが、その言葉を言い切る途中に割って入って優里が言う。
「だから何の苦しみもなく一瞬で殺してあげる」
その言葉に、期待に満ちていた兵達の表情は絶望の表情へと変化する。
そして、
「心臓破壊」
優里はそう言うと同時に開いた手を前にかざし、拳を握った。
その瞬間、皇帝以外の全ての近衛兵達が例外なく死に倒れた。
優里の魔法によって心臓を握り潰されたのだ。
「な、何だその魔法は!?」
皇帝が声を震わせながら優里に問う。
「この魔法、便利なように見えて実は不便なのよ。確かに格下相手には便利だけど、同レベルもしくは格上に対して発動させても、心臓を強化されて対策されてしまうのよ。ま、この雑魚どもは問題なかったみたいだけど」
と優里は語る。
「さてと、ねえ皇帝さん?溺死、焼死、凍死、餓死、壊死。どれがいい?選ばせてあげる」
「あ、あぁぁああ!あぁぅうあぁ!」
皇帝はあまりの恐怖のせいで心が壊れてしまった。
しかし、それを許すほど優里は甘くない。
「勝手に狂っちゃダメ」
そして優里は死んだ1人の近衛兵から剣を奪い、皇帝の首を刎ねる。
そして、
「死者蘇生」
その禁忌の魔法を発動した瞬間、皇帝が何事もなかったかのように万全の状態で蘇生された。
しかし、植え付けられたその恐怖は拭われない。
しかし、先程壊れてしまった心は再生されていた。
「い、一体何が!?」
「お前が知る必要はない!」
優里はそう言って皇帝の腹を蹴り飛ばす。
「さっき、死に方を選ばせてあげるって言ったわよね?やっぱりあれ、全部やる事にするわ」
「え?」
「だから壊れてる暇なんてないわよ」
それからは残酷としか言い表せれなかった。
皇帝はあらゆる方法で殺されては蘇生され、殺されては蘇生され、殺されては蘇生されを幾度も幾度も繰り返された。
皇帝は幾度となく、玉座の間の外の人間に助けを求めたが、優里があらかじめ張っておいた結界によってそれは無意味になった。
皇帝を30回程殺した頃、優里はようやく蘇生する手を止めた。
皇帝ドルドティスの地獄は終わりを迎えた。
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