第66話 その属性、堅固につき
ルード
マナ7→1
手札5→4
『怒龍土ガングイル』
コスト6/土属性/アタック4/ライフ4
(コスト6のユニット……!)
岩に包まれた体がゴツゴツとしててすごく強そうだ。
隙間から見える黒い目はジッと真っ直ぐに僕のことを見ている。
ゴクン、と。
僕は静かに息を飲む。
そこにルード君の声が聞こえてきた。
「バトルゾーンに出た『怒龍土ガングイル』の効果を発動! 自分の最大マナを2増やす!」
「……えっ?」
マナを……増やす?
なんだかすごく耳を疑いたくなるような言葉が聞こえてきた気がする。
けど。
そうやって戸惑う僕を他所に、雄叫びを上げる岩のドラゴン『怒龍土ガングイル』。
その体から出た灰色の光がルード君へと吸い込まれるように飛んでいった。
ルード
最大マナ7→9
「うわわ、マナが一気にっ!?」
「残った1マナで俺はスペル『スタンホール』を発動!」
「っ!」
ルード
マナ1→0
手札4→3
「『スタンホール』の効果で俺は相手フィールドのユニット1体を選び横向きにする。まずは『炎の導師マーズ』を横向きだ」
「げっ!」
カードから浮かび上がったのはどこまでも真っ黒な穴。
そこから飛び出した重苦しそうな暗い空気が僕のユニットに襲いかかる。
その空気には耐えられなかったみたいで。
『炎の導師マーズ』はどこか苦しそうな表情で膝をついていた。
「マーズっ!」
「さらに俺の最大マナが6以上あることで『スタンホール』の更なる効果を発動! 相手フィールドのユニットをもう1体選んで横向きにする!」
「も、もう1体!?」
うぅ、すごく大変だ。
消えずに残っていた真っ黒な穴からまた暗い空気が飛び出す。
その先にいったのは、
「俺が選ぶのは――『火炎少女エリナ』だ」
「うぐぐっ……!」
『火炎少女エリナ』が暗い空気に包まれ、力なく膝をつく。
そうしてやっと、真っ黒な穴はその姿を消した。
「そして、この効果で横向きになったユニットは次のスタートフェイズに向きを変えることができない」
「えぇっ!?」
それって、まさか。
「これで俺はターンエンドだ」
「ぼ、僕のターン、ドロー!」
アルス
マナ1→5
手札5→6
自分のターンになってデッキからカードを引く。
それから僕はフィールドに目を向けた。
(……そんなっ!)
普通なら横向きになったユニットはスタートフェイズの時に縦向きに戻すことができる。
けれども、『スタンホール』せいで横向きになった『炎の導師マーズ』と『火炎少女エリナ』は苦しそうに膝を付いたままだ。
横向きになったユニットは攻撃することもガードすることもできない。
それでも。
とにかく攻撃するしかない!
「僕は3マナを使ってスペル『炎の鉄拳』を発動!このスペルの効果で相手のバトルゾーンにいるアタック5以下のユニット1体を選んで破壊する!」
「ほお?」
攻撃できるユニットも、使えるマナも少ない。
だったら、違う方法で相手のユニットをドンドン退かしていけばいいんだ!
「アタック5以下のユニット――『怒龍土ガングイル』を破壊す……あれ?」
ペチペチ、とカードを何回か叩きつけてみる。
けれども全く反応がない。
「なんで?」
「もしかしてだが『怒龍土ガングイル』にスペルを使おうとしてるのか?」
「うん。そうなんだけど……」
なんでかカードが使えない。
どうしてだろう。
そうやって僕がずっとカードをペチペチと叩きつけてるうちに合点がいったのか。
ルードくんは不敵な笑みを浮かべた。
「残念だがアルス。『怒龍土ガングイル』はコイツ自身の効果によってスペルの効果で選ぶことはできないぞ」
「えっ? それって」
「俺の『怒龍土ガングイル』にお前のスペルは効かんぞ」
「ええっ!?」
ズ、ズルい!
そんなのズルじゃん!
「な、なら! 僕は2マナを使って『気炎万燃』を発動!手札を1枚捨ててから2枚ドローするよ!」
アルス
マナ5→3
手札6→6
「あとは……1マナで『レッドスライム』と『火犬ブルム』を召喚!」
アルス
マナ3→1
手札6→4
『レッドスライム』
コスト1/火属性/アタック1/ライフ1
『火犬ブルム』
コスト1/火属性/アタック1/ライフ1
【効果】
①このユニットは相手のターン中、アタックを+2する。
「さらに『火炎少女エリナ』の効果でパワーアップ!」
『レッドスライム』
アタック1→アタック3
『火犬ブルム』
アタック1→アタック3
「僕はこれでターンエンド」
「なるほど……なら俺のターン。ドロー!」
ルード
マナ9→10
手札3→4
「俺は3マナを使い手札から『地術師ダンテ』を召喚」
ルード
マナ10→7
手札4→3
『地術師ダンテ』
コスト3/地属性/アタック2/ライフ2
【効果】
『ガード』
①このユニットがバトルゾーンに出た時に発動できる。カードを1枚ドローする。
②自分の最大マナが8以上であれば、1ターンに1度だけ発動できる。自分のドロップゾーンから地属性スペル1枚を選んでスペルゾーンにセットする。
「召喚した『地術師ダンテ』の効果を発動! カードを1枚ドローする」
つ、強い。
「まだだぞ。俺の最大マナは8以上! よって『地術師ダンテ』の更なる効果を発動! 1ターンに1度、自分のドロップゾーンから地属性スペルを1枚選び、セットする!」
「なにそれ!? 強い!!」
ルード君のフィールドに現れた黄色い装束を着た男が持っていた大きな杖をグンッと地面に突き刺した。
すると、その場所からさっき使ったスペル――『スタンホール』が生え出るように現れた。
「俺はドロップゾーンから『スタンホール』を選んでセット。そして、そのまま1マナを使い発動する! 選ぶのは当然、『火炎少女エリナ』と『炎の導師マーズ』だ!」
「うぎぎぎぎ」
ルード
マナ7→6
ど、どうしよう。
このままだと何もできなくなっちゃう!
「更に! 俺は2マナを使いスペル『大地の恵み』を発動! カードを1枚ドローする。その後、自分の最大マナが6以上であればもう1枚ドローすることができる!」
ルード
マナ6→4
手札3→4
「そうだな……あとは、4マナを使い手札から『ゴーレム』を召喚する!」
ルード
マナ4→0
手札4→3
『ゴーレム』
コスト4/土属性/アタック3/ライフ5
【効果】
『ガード』
①このユニットは自分の最大マナが8以上であればライフに受けるダメージを−3し、カードの効果で破壊されない。
「うわっ! デッカい!」
「そして、強い! アタックフェイズ! 俺は『怒龍土ガングイル』で相手に攻撃! ランド・スクランブル!」
ルード君の声に合わせて『怒龍土ガングイル』が大きく振り上げた前足を地面に叩きつけ、何個もの岩を突き立てる。
すると、それに向かって硬い頭を勢いよく一振り。
その衝撃で砕けた岩は迷うことなく僕に向かって全部飛んできた。
そう、全部。
「うわあああ!!」
アルス
ライフ20→16
「痛ててて」
「これで俺はターンエンドだ」
「ぐぐっ。ぼ、僕のターン! ドロー!」
アルス
マナ1→6
手札4→5
ボロボロになった体を起こして、デッキから飛んできたカードを手札に加える。
(ルード君のフィールドは……)
『怒龍土ガングイル』
アタック4/ライフ4
『ガード』
『地術師ダンテ』
アタック2/ライフ2
『ガード』
『ゴーレム』
アタック3/ライフ5
『ガード』
うーん。
どれもみんな『ガード』できるし、アタックもライフも大きい。
(僕のは……)
『火炎少女エリナ』(行動不可)
アタック2/ライフ2
『炎の導師マーズ』(行動不可)
アタック7/ライフ1
『レッドスライム』
アタック3/ライフ1
『火犬ブルム』
アタック3/ライフ1
手札
『アタック・チャンス!』『ファイヤーボーイ・ゲキ』『バーニング・チェンジ』『炎の鉄拳』『マグマグスライム』
ジーッとカードたちを見つめる。
何回も見たことあるからカードの絵とか、カードの効果までちゃんと覚えてるものばっかり。
静かに目を閉じた僕は、ゆっくりと息を吐き出した。
……これ、どうすれば良いんだろう。
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